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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

中村俊三ギター・リサイタル 6月9日 ひたちなか市文化会館 3



<曲目紹介>

ジュリアーニ : ヘンデルの主題による変奏曲




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ヘンデルの主題による変奏曲
ジュリアーニの「ヘンデルの主題による変奏曲」 主題と6つの変奏からなる。 見た目やさしそうで、ジュリアーニの曲としては取っ付きやすそう




ヘンデルのハープシコード組曲第5番の「エアと5つの変奏」 から主題をとった

 プログラム前半のスカルラッティの二つのソナタの次は、マウロ・ジュリアーニの 「ヘンデルの主題による変奏曲」 です。ジュリアーニについては皆さんもよくご存じと思いますので、紹介は省きますが、この曲はヘンデルのハープシコード組曲第5番の 「アリアと5つの変奏」、いや英語的には 「エアと5つの変奏」 と言うべきでしょうか。その曲から主題をとったものです。

 この第5番ホ長調は、8曲からなる 「ハープシコード組曲第一集」 に含まれていますが、第二集以降については番号の付け方がよく分からないということは、前回のリサイタルの時の「サラバンド」のところで書きました。ヘンデルのハープシコード組曲は全部で十数曲ほどあるようですが、それは数え方で異なるようです。




「調子の良い鍛冶屋」としてよく知られた曲

 この「エアと5つの変奏」は「調子の良い鍛冶屋」として知られていて、ピアノでもよく演奏されています。 ジュリアーニがテーマとして用いていることからしても、この曲は当時から人気があったようです。因みに、「調子が良い」 というのはリズム的という意味ではなく、「響きが良い」といった意味のようです。



編曲ではない

 題名の通り原曲も変奏曲ですが、ヘンデルの作品はその主題を用いたということで、変奏自体はジュリアーニが独自に作曲したものとなり、編曲ではありません。つまりテーマ以外はヘンデルのきょくとは違うということです。下の譜面は、そのヘンデルの原曲です。




ヘンデル アリア

ヘンデル : ハープシコード組曲第5番の「アリア」。 ジュリアーニの譜面と音符の種類が違うが、それよりも小節線が意味不明! 1小節目も不完全小節ということだろうか?



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ヘンデルの肖像画は、なんかバッハよりも偉そう! というか金持ちぽい!




8分音符を4分音符に書き換えている

 ホ長調ということで調が違いますが、ジュリアーニは8分音符を4分音符に書き換え、さらに4分の2拍子に変えています。単なる楽器の移し替えではなく、”編曲” といった感じですね、当時としてはこうしたことが常識のようです。



小節線が変!

 それにしてもこの譜面、小節線がちょっと変ですよね、しっかりと4分の4拍子の表記があるにもかかわらず、1小節目が3拍しかない! 1小節目も不完全小節ということだろうか。それにリズム的に言っても、この小節線は納得が行かない!

 そこで、編集者が短い線で ”本当の” 小節線を書き入れています。これなら意味がわかりますね、ジュリアーニもこのように解釈しているようです。おそらく当時の音楽家もそうしていたのではないかと思います。

 おそらく繰返しの関係などで、このように書いたのかも知れませんが、それでもなぜヘンデルがこのような書き方をしたのか、私にはよくわかりません。とりあえず、この件についてはこれ以上触れないでおきますが、聴いた感じではそんなに複雑な曲ではありません。




ジュリアーニの譜面はわかりやすい

 ともかく、ジュリアーニはシンプルに書き換えてくれていますね、これでも聴いた感じはほぼ同じものに聴こえます。ジュリアーニの作品は、譜面を見た感じでは弾きやすそうに見えますね、少なくとも取っ付き難いとか、どう弾いていいか分からないと言って点はありません。



簡単そうに見えるけど

 確かに、ローポジションが中心なので、初見でも結構弾けそうですが、しかし実際に弾いてみると見た目ほど簡単ではありません。私も結構苦労しています。こういう曲ほど、指の”さばき”がよくないと快適に聴こえませんね、弾きやすそうだから、とりあえず今度弾いてみようかなんて、軽い気持ちで行くと、後半などグダグダになって、”どつぼ”にはまることもあります。ただし、元々完璧な技術を持っていれば、その心配はありませんが。 
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中村俊三ギター・リサイタル 6月9日 ひたちなか市文化会館 2



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今回は19世紀の作品を中心に

 今回のリサイタルは前回お話した人気トップ2のバッハとバリオスの作品はちょっとお休みにして、ソル、ジュリアーニ、レゴンディ、メルツ、タレガといった、19世紀の作品を中心にプログラムを組みました。振り返ってみると、私のリサイタルの曲目はバッハやアルベニスなど、編曲ものが多く、ギターのためのオリジナル作品、特に19世紀のギタリストの作品は少なかった傾向もあります。

 そう言った点で、今回このような内容となったのですが、特にメルツやレゴンディの作品を、このひたちなか市文化会館で演奏するのは初めてとなります。タレガの作品も、ほぼ19世紀と言ってよいと思いますが、「椿姫幻想曲」は、タレガ作とはなっていますが、実際はタレガの先輩、あるいは師であるフリアン・アルカスの作品で、間違いなく19世紀の作品です。



最初の曲はドメニコ・スカルラッティ

 今度のリサイタルは前述の通り、19世紀の作品が主ですが、最初に演奏する曲としては、このイタリアの作曲家で、後にスペインで活動したドメニコ・スカルラッティの作品が相応しいと思いました。スカルラッティの作品は、18世紀のバロック時代の作品とはいえ、19世紀の音楽に近い感じもします。




ドメニコ・スカルラッティ
ドメニコ・スカルラッティ 1685~1757年 バッハ、ヘンデルと同年の生まれ。 イタリア出身で後にスペインで活動したことはボッケリーニと重なる。
 



バッハと同年の生まれ

 ドメニコ・スカルラッティは1685年にイタリアで生まれ、1757年マドリッドでその生涯を閉じています。つまりバッハと同じ年に生まれ(ヘンデルも同じ年)、バッハよりも7年長生きしたことになりますね。 イタリア出身の音楽家で、後にスペイン宮廷で活動したと言えば、ボッケリーニと同じ道をたどっていますが、ボッケリーニがマドリッドに来る12年前に没しているので、特に繋がりはないようです。



オペラ全盛期ではあったが

 ドメニコ・スカルラッティは数百曲(560曲とも言われるが)のチェンバロのためのソナタを作曲しています。ソナタと言ってもベートーヴェンやモーツァルトのソナタように多楽章の規模の大きいもではなく、単一楽章の、時間も数分程度のものです。

 父親のアレッサンドロ・スカラッティはオペラの作曲家として知られていて、オペラが盛んな時期ではありましたが、ドメニコ自身はオペラはあまり作曲していないようですね。どちらかと言えば、チェンバロ曲に特化した作曲家と言えるようです。




セゴヴィア以来ギターでも演奏されている

 スカルラッティの「ソナタ」は、ギターとの相性も良く、アンドレス・セゴヴィア以来、古くからギターでも演奏されてきました。当初はホ短調(原曲ハ短調K.11)をはじめ、ほんの数曲程度がギターで弾かれていただけでしたが、最近ではそれぞれのギタリストが独自にギターにアレンジして、かなり多くの曲がギターでも演奏されるようになりました。




2曲とも比較的ギターでもよく演奏される

 今回演奏するニ短調(原曲もニ短調K.213)とホ長調(原曲ホ長調K.380)は、ジョン・ウィリアムスなど、比較的ギターでもよく演奏されているものです。

 ギターへの編曲は私自身のものですが、若干の省略やオクターブの移動があるだけで、ほぼ原曲に近いものです。どちらも移調せず原調通りですが、チェンバロとの音域の違いにより、特に上声部は1オクターブ下げられています。私など、この音域に慣れてしまっているせいか、原曲の音域より、このギターの音域のほうがかえってしっくりくる感じもします。



シンプルな出だしだが

 ニ短調のソナタの冒頭の4つの4分音符はシンプルなものですが、印象深いですね。美しく響かせたいと思っていますが、ここは曲の始まりというより、リサイタルの始まりなので、絶対に失敗は許されませんね、 ・・・・そんなこと考えると、余計にミスする?




スカルラッティニ短調
ドメニコ・スカルラッティ ソナタニ短調K.213 中村俊三編曲  


 

 因みにK.の番号はカークパトリックというチェンバロ奏者兼、音楽学者が付けた整理番号で、作曲された順番ではなく、調性などによって付けられた番号です。 かつてはロンゴ番号が使用されていましたが、今現在ではこのカークパトリック番号で呼ばれることが一般的のようです。

 

スカルラッティホ長調
ホ長調K.380(中村編) ホロヴィッツもよく弾いていた曲。トリルがよく出てくるが、私は右指(主にpi)で弾いている。



 ソナタホ長調K.380はピアノでもよく演奏される曲で、スカルラッティのソナタの中でもよく知られた曲と言えます。トリルが頻繁に出てきますが、私の場合、右指で弾いています。かなり速く弾かないといけないので、ちょっと難しいですが、左手のスラー奏法よりは音が出ると思います。動画で見ると、アンナ・ヴィドヴィッチは左手のスラー奏法でもちゃんと音が出ていますね。





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絶対間違えたくない! なんて思うとかえってミスする?


中村俊三ギター・リサイタル


 6月9日(日) 14:00  ひたちなか市文化会館小ホール





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今年の6月に行うリサイタルのシラシが出来ました

 今年の6月に私のリサイタルを行いますが、そのチラシが出来たので、載せておきます。 私のリサイタルには、いつも100人前後の方に来ていただいています。ひたちなか市文化会館小ホールの収容人数は400人ほどですから、あまり多いと言うわけではありませんが、でもほぼ毎回のように聴きに来ていだいている方もたくさんいらっしゃっていまして、本当に感謝の限りです。





前回のリサイタル ~2021年6月20日 ひたちなか市文化会館

 今回のリサイタルの曲目などに触れる前に、前回、あるいは前々回のリサイタルのおさらいをしておきます。 このひたちなか市文化会館では、2021年6月20日にリサイタルを行っています。



コロナ蔓延による厳戒態勢の中で行った

 この時のリサイタルは、その前の年、2020年の4月に予定していたリサイタルがコロナが蔓延で延期となり、この年になったものです。この時期は比較的新規感染者数も少なくて、どうにか開催出来たのですが、手の消毒や体温測定、また椅子の間隔をあけて座るなど、厳戒態勢で行いました。そうした中でも約80名の方々に来ていただきまして、本当にありがとうございました。



ヘンデル、バッハ、グラナドス、バリオスの作品を演奏

 曲目としてはヘンデルの小品4曲(オンブラ・マイフ、サラバンド、ソナタ、メヌエット)とバッハの「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番全曲(シャコンヌを含む)」 が前半で、グラナドスの 「スペイン舞曲第5番」、「誌的ワルツ集」、 バリオスの「クエカ」、「ワルツ第4番」、「大聖堂」 といったものでした。

 ヘンデル、バッハ、グラナドス、バリオスの4人の作品に絞ったプログラムでしたが、バッハのパルティータ全曲とか、グラナドスの誌的ワルツ集とか、とても難しい曲でしたね。若い頃だったら、こんな曲プログラムに入れるなんて、絶対考えないことでしたが、なんだか、年齢と共に、ますます演奏曲が難しくなっている感じです。

 

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このひたちなか市文化会館では、3年前の2021年6月20日にリサイタルを行っている



アンケートの結果を考慮したプログラム

 何年か前のコンサートの折にアンケートを取ったことがあるのですが、その時、聴きたい曲として一番多かったのがバッハの作品、曲としては「シャコンヌ」で、2番目がバリオスの作品、および「大聖堂」でした。 「アランブラの想い出」とか、「禁じられた遊び」 など、一般的に知られた曲が上位になるのかなと思っていたのですが、この結果は意外でした。

 もっとも、不特定の人からアンケートを取れば、そうした曲、あるいはポピュラー系の曲などが上位となるのでしょうけど、少なくとも、私のリサイタルを聴きに来ていただいている方々については、バッハとバリオスが最も人気が高いようです。特に、私のリサイタルに来ていただいている人はバッハが好きな人が多いんですね。 つまり、この時のプログラムは、そうしたアンケートの結果に従って構成したと言うことになります。







2022年9月 ギター文化館支援リサイタル

 一昨年の9月にはギター文化館を応援しようといことで、ギター文化館支援リサイタルを行いました。新聞などでも取り上げていただいたこともあって、70数名の方に来ていただき、チケットの売り上げ、13万円とちょっとをギター文化館に寄付することが出来ました。この時も寄付していただいた方々、本当にありがとうございました。

 我が国にとっても、わが県にとっても、またギター界にとってもたいへん貴重な施設であるギター文化館が、今後も正常に運営ができることを願い、また少しでも多くの方に来ていただき、関心を持っていただければと思います。




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ギター文化館支援リサイタル 2022年9月16日




ギター史上の両巨匠と、フランス➡スペインの音楽

 この時のプログラムは前半はクラシックギター史上の二大巨匠のソル(グランソロ、「私が羊歯」だったならによる変奏曲)と、タレガの作品(グランホタとタレガ編のメンデルゾーン)。 後半はドビュッシーなどフランス印象派の作品からモンポウ、トロバ、アルベニスなどのスペインの作品となっていました。




”グラン”で揃えた?

 「グラン・ソロ(大独奏曲)」 と 「グラン・ホタ(大ホタ)」 で、”グラン”を2曲揃えたと言う感じですね。準備期間が半年未満だったので、その前のひたちなか市文化会館でのリサイタルよりは内容が軽めでしたが、その「グラン・ホタ」 とか、メンデルゾーンの「カンツォネッタ」、サティの「ジュ・トゥ。ヴ」などは初めての演奏でした。




カンツォネッタは前から弾きたいと思っていたが

 トロバの「マドロニョス」は若い頃よく弾いた曲です、なんとなく懐かしいですね。タレガ編の「カンツォネッタ」は昔から好きな曲だったのですが、これまでちゃんと弾く機会がなかったので、この時プログラムに入れてみました。

 でも、なかなか難しかったですね、グランホタより難しかったくらいです、やはり原曲が弦楽四重奏だからなのでしょう。「グラン・ホタ」は難曲といえば難曲ですが、しかしやはりギターのために作曲されているので、なんとなく弾きやすい部分もあるのでしょう。

 



今回のリサイタル

 さて、今回のリサイタルの曲目は次の通りです。


D.スカルラッティ : ソナタニ短調K.213、 ソナタホ長調K.380
M..ジュリアーニ : ヘンデルの主題による変奏曲Op.107
F.ソル : モーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲Op.9
J.レゴンディ : 序奏とカプリッチョOp.23

J.G.メルツ : エレジー
F.タレガ(原曲フリアン・アルカス) : 椿姫幻想曲
F.タレガ : グラン・ワルツ
F.タレガ :グラン・ホタ
I.アルベニス(中村編) : グラナダ、 朱色の塔




グランホタのみ前回と重複するが

 内容についてはまたあらためて書くことにしますが、前述のとおり、私のリサイタルには毎回のように来ていただいてる方が多いので、同じ曲目を連続して弾くことは、なるべく避けています。今回のリサイタルではタレガの「グラン・ホタ」のみ、ギター文化館のリサイタルと被りますが、この曲はタレガの愛奏曲中の愛奏曲と言え、また、ギター文化館でのコンサートとひたちなか市文化会館に来ていただいている方とは、若干異なるので、今回のプログラムにも入れました。
グレーな音符たちのその後 8



タレガの反復記号




ト長調? のマズルカ

 下はタレガのマズルカト長調で、これもなかなかいい曲ですね。しかし”ト長調”とはなっていますが、この曲の冒頭を聴いたり、弾いただけではト長調の曲だなんて、そんな感じ全然しませんね。だいたい、イ短調という感じですが、でもちゃんと主和音にはなっていませんね。

 2小節目は一応ト長調の主和音となるのですが、Am➡D7と、いわゆるトゥー・ファイブ(Ⅱ➡Ⅴ7)の和声進行で始めている訳です。結構凝った出だしですね。確か、ショパンにマズルカにも同じような曲があったように思います。

 今回の”グレー” はそれほど問題のあるものではないのですが、こうしたケースはよくあるので、取り上げてみました。ちょっと長いですが、全曲3ページ分載せておきます、出所はいつものアリエール社の初版です。



マズルカ1
タレガ作曲 マズルカト長調(計3ページ) アリエール社の初版  冒頭だけを見ると、ト長調の曲には、まず見えない



マズルカ2
2段目のところにリピート記号(前向き)があるが、





マズルカ3
最後にはリピート記号(後ろ向き)がない。




よくあることだが

 現在、この曲の国内版などは、ほぼこの譜面を基にしていますが、後半部には2ページ目のところにしかリピート記号(後ろ向きの)が付いていません。おそらく最後に付くべきリピート記号(前向きの)が脱落したものと思われますが、逆に2ページ目の2段目に不必要なリピート記号が付いてしまったとも考えられます。

 演奏上、それほど困る事ではないか知れませんが、実際の演奏で、後半部分をリピートすべきなのか、しない方がいいのか、ちょっと迷うところですね。前回にも書きました通り、タレガは繰返しなどは状況に応じて行っていて、あまりこだわらなかったので、こうしたことがよく起こるのだと思います。出版の際のミスかも知れませんが、タレガの残した譜面(タレガの死後の出版)自体がこのようになっていた可能性もあるでしょう。



4通り考えられる

 後半は繰り返しても、繰り返さなくてもよいと考えられますが(結局そうするしかないが)、前半部分の方も拡大して考えれば、繰返しの方法としては以下の4通りが考えられるでしょう。

①前半、後半とも繰り返しを行う
②前半繰返し、後半繰返しなし
③前、後半とも繰り返しなし
④前半繰返し梨、後半繰返し


 ①は前、後半共に繰返しということで、最もオーソドックスな方法ですね、時間的な制約がなければこれでよいと思います。時間が短い方が良いのであれば、②の前半のみ繰返しでもいいでしょう。

 さらにもっと身近方が良ければ、③のようにどちらも繰返しなしもあると思います。④は楽譜の指示からは若干遠くなりますが、魅力的な中間部が2回出てくることになるので、私個人的にはこの方法が最もよいと思っています。





ロシータ


 次はロシータ(ポルカ)のダ・カーポの件で、ちょっと問題になる箇所ですね。これも初版では下のようになっています。


ロシータ
ロシータ(ポルカ) アリエール社の初版  初版譜ではダ・カーポなので、最初のグリサンド付きの「ラ」に戻ることになる




余計な1拍が

 譜面の最後にD.C.が付いていますから、この譜面に忠実に演奏するなら、冒頭の不完全小節にある「ファ」からのグリッサンドの付いた「ラ」に戻ることになります。しかしそうすると2拍子の曲の中に余計な1拍が挿入されることになり、リズム的にはちょっと変な感じになってしまいます。

 そこで、D.C.記号はD.S.(ダル・セーニョ)記号の誤りと考え、さらに1小節目(不完全小節の後の)にセーニョ記号を付け加え、冒頭の不完全小節ではなく、1小節目に戻れば、すっきりと2拍子の曲となります。ポルカは基本的に軽快な2拍子の曲ですから、理にも適うわけですね。実際にそのように書き直している譜面もあります。

 



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ドレミ楽譜出版のギター名曲170選より。2拍子のリズムを守るため、ダ・カーポをダル・セーニョ記号に書き換えられるなどしている。




あえて余計な1拍を入れた?

 では、初版のダ・カーポ記号が誤りかというと、はっきりとそうも言えないところもあります。まず、この譜面は 「アラビア風奇想曲」 などと同じくタレガが生前したもので、しかもタレガが初めて公式に出版した譜面でもあります。そうしたことからして、おそらくタレガとしても丁寧に出版を行ったと思われるので、単純なミスとは言えないところもあるでしょう。

 つまりタレガが、意識的にダ・カーポにした、つまり冒頭に戻る時にも、あえて冒頭のグリッサンド付きの「ラ」を弾くようにしたとも、十分に考えられるわけです。

 そもそも、ポルカにはアウフタクト(冒頭の音)は不要で、1拍目から始めるほうが一般的です。そうしたことをわかった上で、タレガはあえて冒頭に1拍追加したわけですから、最初に戻る時も、やはりこの1拍は入れた方が良いと判断したとも考えられます。

 因みに、この冒頭の音(グリッサンド付きのラ)は”番外”的なものなので、この音のみテンポから外して長めに弾く方がいいように思います。




そんなこと、どっちでもいいから

 いずれにしても、真相はタレガに聴いてみるしかないのですが、私の予想では、きっとタレガは 「そんなこと、どっちでもいいよ。好きなように弾きなさい」 なんて言うのかなって思います。「そんなことよりもギターらしい音を出すこととか、聴く人に感銘を与えるように努力しなさい」 ・・・・なんて。

 そうはいっても、実際に演奏すr場合はどちらかにしなければなりませんが、私自身はかつてはダ・カーポの際は、この1拍を省略していましたが、最近はダ・カーポ時にも弾くようにしています。
 




中間部のリピートもありかな

 この曲の繰り返しで気になる事と言えば、この譜面通りだと、前半のニ長調の部分にはリピート記号がありますが、ト長調の中間部にはリピート記号がありません。つまりダ・カーポも含めれば前半部分は3回弾くのに、中間部は1回となりますね、やはりななkバランスが悪いような。中間部の方もリピートしていいんじゃないかと、私は思います。この曲はテンポも速く、あまり長い曲でもありませんし。 ・・・・・きっとこれも 「どっちでもいい」 と言われそうですね。
グレーな音符たちのその後 7



タレガの曲の反復記号




音の間違いは少ないが

 タレガの譜面は、音の間違いが非常に少ないですが、それにはタレガの音感の良さが関係しているのではと思います。比較の対象としてはいけませんが、私など、教材や合奏曲など、ほとんど自分で打ち込んでいるのですが、よく間違えて生徒さんや合奏のメンバーに迷惑かけています。そう言った点では、さすがにタレガですね(当然のことかも知れないが)。

 その反面、ダ・カーポやリピート記号などの間違いや、混乱は比較的多いです。おそらくタレガの場合、自身で演奏する場合、リピートなどはその場の状況などで行ったり、省いたり、自由に演奏していたのではないかと思われます。そうしたことが残された譜面にも反映されているのでしょう。

 確かにリピートなどはどちらでも大きな影響がないことも多いですが、ダ・カーポやダル・セーニョの場合はちょっと困りますね。今回はそうした例をいくつか挙げておきましょう。




再三だが、ワルツニ長調

 では、この「ニ長調のワルツ」については、当ブログでも複数回書いていますが、演奏上、ちょっと困った問題でもあるので、復習しておきましょう。



タレガワルツ1



タレガワルツ2
1910年~1920年にスペインで出版されたタレガの「ワルツニ長調」の初版譜。現在出版されている楽譜の基になって言うrと思われる。




問題の多い譜面

 上の譜面は1910~1920年頃に出版された初版譜です。今現在のほとんどこの譜面を基にしていて、これ以外の手書譜などは残されていないようです。

 この曲、なかなかいい曲なのですが、この譜面はいろいろ問題ありそうですね。タイトルなどはかなりカッコいい飾り文字で書いているのですが、おそらくこの譜面の版下を作った人が、あまり楽譜、あるいはギターの譜面に慣れていないのではないかと思われます。諸事情(採算面など)でそう言う人に頼まざるを得なかったのかな・・・・




音楽に詳しくなかった?

 一番わかりやすいのが2ページ目の一段目ですね、たいしたことではありませんが、小節数の計算を間違えて、ここだけ異様に小節のスペースが長くなってしまいました。演奏上は問題ないものですが、熟練した人ならこのような事はしないでしょう。

 また、これもよくあることなのですが、1ページ目の5段目では右指の記号のpが強弱のpになってしまいました。おそらくpが親指の記号だと言うことを知らなかったのでしょう。 「なんだかpが小さく書いてあるな」 くらいに思ったのかも知れません。

 2ページ目4段目の休符の書き方も、ちょっと変ですね。確かに計算上はおかしくないし、この表記に忠実に演奏しても、あまり違和感はないかも知れませんが、通常はこのように書かず、2分音符+8分休符、 または4分音符+4分休符+8分休符 と書くかどちらかでしょう。

 さらに低音のみ付点2分音符というのも、ちょっとおかしいですね、ここははっきりした区切りとなっているので、低音のほうにも休符が入るべきでしょう。通常は上声部の音価と同じにするでしょうね(実際の演奏ではたいていそうしている)。

 しかし、ここはオリジナルもこのように書いてあった可能性のほうが高く、必ずしも版下製作者の問題とも言えないかも知れません。でも音楽に精通した版下職人だったら 「ここちょっと変ですけど」 とか、依頼者に問い合わせをするかも知れませんね。




その割には音の間違いがない

 このように、かなり”ヤバイ”譜面ですが、音の間違いと思われるものはありません。かえって不思議な気もしますが、おそらく依頼したタレガの遺族などがしっかりと校正をしたのでしょうね。音の間違いが少ないのはタレガの譜面(スペインでの初版)の共通した特徴です。




下属調で終わってしまう

 さて問題の繰り返しについてですが、この曲はニ長調で始まり、後半はト長調となっています。またその特徴もかなり違うもので、正反対とも言えるでしょう。古い例えだと、男性的➡女性的、となるところですが、最近ではこういう表現はあまりよくないのかな? そう言えば 「女性終止」 などと言う言葉もあまり使われなくなったような・・・・・

 ともかく、この通りに演奏すると、やはりおかしいですよね、最初と終わりが全然違う感じになってしまう。それにクラシック音楽では通常最初と違う調で終わることはほとんどありません。




ジョプリンのラグタイムではよくあるが

 確かにポピュラー系の音楽ではよくあることで、ジョプリンのラグタイムでは、むしろこのように下属調(#が1個少ない調)で終わる曲が多いです。またJ-ポップなどでも最後は半音高い調で終わったりしますが、これなどクラシック音楽ではあり得ないことですね。




D.C.記号が脱落していると考えられる

 そこで、当然最後にD.C.(ダカーポ)記号が脱落していると考える訳ですが、でもそうすると終わるところがありません。通常であれば、2ページ目の赤の二重線のところにFine.が入るところと考えられます。しかしそうすると終わる音が4弦の7フレットのハーモニックス、つまり「ラ」になってしまいます。



コーダもないといけない

 やはり終わる音は「レ」またはニ長調の主和音(Dメジャー・コード)で終わらなければなりません。ということは、この譜面の最後にコーダを付けて、曲がちゃんと終われる形を作ってやらなければなりません。

 となると、これは版下製作者の問題というより、オリジナルの譜面が正しく書かれていなかったと考える方が妥当と思われます。結局、この譜面は基になった譜面も版下製作もどちらにも問題があったと言えるのかも知れませんね。

 タレガとしても、この曲を出版することは全く考えず、生徒さんへの教材として、サッと書いたものかも知れませんね、終わり方などは口頭で言えばいいとか。  

 


コーダとしては

 因みに、終わり方として、具体的には次の4通りなどが考えられると思います。
 


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*私は4.で弾いている。音符の種類としては、4分音符や、付点2分音符も考えられる





3拍目で終わるのもあるが

 他にも赤い二重線の前の小節、つまり2ページ目の3小節目の3拍目で終わったり、あるいはダ・カーポをしないで、そのまま譜面上の最後(ト長調の部分)で終わったりということも考えられます。しかし自然さという点では、やはり上の4通りのように1拍目に、「レ」のハーモニックス、または主和音で終わる方がいいように思います。 因みに私は4.の和音を採用しています。