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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

中村俊三ギター・リサイタル 6月9日 ひたちなか市文化会館 5



「魔笛」の主題による変奏曲 2  第1変奏




テーマが上手く弾けても

今回の記事では曲の紹介というより、弾き方の話しをしています。この「魔笛の主題による変奏曲」は、クラシック・ギター曲としてはたいへん人気のあるもので、取り組んでいる愛好者の方々も多いと思いますが、思ったように弾くのはなかなか難しい曲ですね。

 前回の話しで、テーマを清楚に、美しく弾くのはたいへんですが、それが比較的上手く弾けても、この第1変奏でコケてしまうことがよくありますね。




スラー奏法

 まずはスラー奏法ですが、16分音符の1個目と2個目のスラーはたいていの人は出ていますが、3個目と4個目のスラーが出ない人が 多いです。小指がらみなので、確かに出しにくいですが、出ているか、出ていないか、よく聞いていない人も多いです。



指を傷める原因にもなる

 まずはよく音を聴くことですが、左手の正しいフォームや、効率的な動かし方が大事ですね。 言葉では言いにくいので、写真を載せておきましょう。下のように人差し指と小指が左右対称になっているのが理想です。




CIMG3300.jpg
左右対称に押さえ、小指の第1関節(先端の)を少し曲げるだけでスラーを行う。大きく動かしてはいけない。




 特に左小指を左斜め方向にはじくと、音がよく出ません。小指は指先を曲げ、ネックに対して直角方向にはじかないといけません。因みにく指のスラー奏法(プリング・オフ)は、正しいフォームでやらないと音が出ないだけでなく、指の関節などを傷める原因にもなります。




CIMG3301.jpg
斜めに押さえるとスラーの音がよく出ない




CIMG3302.jpg
このようなはじき方は指の関節を傷める。私もかつてはこのようなスラー奏法を行っていたが、40代の頃小指の関節が 痛くなって、数年間小指のスラー奏法が出来なくなった。その後フォームを直してからは特にトラブルはなくなり、スラーの音もよく出るようになった。 ・・・・・まさに怪我の功名!




ステージでエアー・ギター?

 でもやはり問題になるのがスケールですね、学生の頃、このスケールをステージ上で完全に空振りしてしまったことがあります。ちょっと音が抜けるのではなく、スケールの音すべてを空振りしたように記憶しています。指だけ動いて、まさにエアー・ギター状態!

 確かに緊張によるものではありますが、多少緊張したくらいで弾けなくなってもいけませんね。ステージで緊張するなと言っても無理な相談で、やはり緊張しても弾ける方法を考えないといけません。

 


いろいろ試した結果

 結局は、それぞれ自分に合った方法を探すしかないと思いますが、私は下のような運指で弾いています。最初にスラー奏法を用い(譜面に書かれているとおりに)、最後の3個の音を ima にしているのがポイントです。いろいろな方法を試しましたが、この方法が最も確実です。この方法にしてからステージでのミスの記憶はありません(今のところ)。アルアイレ奏法を用いています。




第1変奏前半

第1変奏前半。スケールの右指の運指は、最後がimaになっているところが特徴。私にはこれが一番弾きやすい




本来は

 さらに問題になるのが最後のところですね、譜面からすれば3弦の「ラ」を押さえたまま1弦のスラー奏法を行わなければなりませんが、私にはどうしてもこれが出来ません。もっとも、指が長くて柔軟な息子のほうは難なく弾いていましたが、私の場合はやむを得ず中指を外して弾いています。 




カンパネラ的な運指だが

 スラー奏法と言えば、2段目のところはカンパネラ奏法的に弦の関係を逆転して「ソ」から「シ」の開放弦にスラー奏法をするように書かれています。左手の運指を簡単にするためかも知れませんが、かえってバランスも悪くなり、ノイズも発生するので、通常の押え方(1弦の4フレットと2弦の5フレット)で押さえ、「ソ」からではなく「ミ」からのスラーに変えています。多くのギタリストもそう弾いていると思います。




親指も使う

 後半にもスケールが出てきますね、最後がimaにするのは同じですが、ここでは親指も使っています。まさに使えるものは何でも使えということですね。 ・・・・・ちょっと誤魔化して、スラーの位置も変えています。



第1変奏後半
第1変奏後半。スラーの位置を変えている(その程度は許容範囲?)。親指も使用。
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中村俊三ギター・リサイタル 6月9日 ひたちなか市文化会館 4



フェルナンド・ソル : モーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲作品9




弾き方の話を中心に


 この曲については、当ブログでも何度か書いてきました。ちょっと前の記事の「グレーな音符たちのその後」でも書いています。今回は譜面の問題は置いておいて、弾き方についてを中心に書いてゆきましょう。

 この曲は一般的に、パリで出版されたメソニエ~ユージェル版を基にしていて、現代ギター社版(下の譜面)もその一つですが、パリで出版される前に、スペインで出版された初版も存在するようですね(ネット情報では)。

 私自身では50年以上前(18歳頃)に始めた曲で、その間何度も演奏していますから、もう練習などしなくても、いつでも楽に弾けるはずなのですが、なかなかそうは行きませんね。ちゃんと練習しないとなかなか弾けない曲です。





序奏




魔笛序奏
現代ギター社版 冒頭の和音は親指でアルペジオ気味に弾いても構わないが   



アルペジオ記号がないが

 では、まず序奏の冒頭ですが、6個の音の和音となっています。このようにギターの場合、6個の音の和音は親指でアルぺジオ的に弾くのが一般的で、そうした場合、アルペジオ記号(縦の波線)が付けられるのですが、それは省略されているのでしょう。はっきりとした意図でアルペジオ記号を付けなかったのかどうか、つまり必ず6個の音を同時に弾くようにという意図なのかどうかはよくわかりません。



軽快なテーマとのコントラストを考えて同時に発音している

 私自身では同時に弾く方法を取っていますが、そのほうが緊張感が出て、軽快なテーマとのコントラストが生きるように思うからです。また この序奏とオペラ「魔笛」の序曲との関連はないようですが、この序奏がオーケストラ曲をイメージしているのは確かなように思うので、そう考えても冒頭の和音を同時に発音する方が良いのではと思います。




親指の関節を使って

 しかし6個の音を同時に弾く場合は(下からpppima)、バランスを取るのが少し難しくなります。特に④弦の「ミ」は出しにくいですが、①と⑥弦にも「ミ」があるので、それほど問題にはならないでしょう。でも④⑤⑥弦の音をバランスよく発音するには、親指の関節の動きを使って弾くとよいと思います。




音価は正確な方が良い


 2段目の最後の小節からは3連符となりますが、そこまでの部分とテンポが変わらないように気を付けないといけませんね。また、3連符の二重付点音符が重なる部分も出てきます。ここを正確な音価で弾くのはなかなか難しいところですが、出来る限り正しく弾いた方が良いと思います(厳密でなくてもよいと言う人もいるが)。



魔笛序奏3連符
正確には、16分音符の「ソ」の前は12分の1拍、後ろは12分の3拍となる。確かに正確にこのようには弾けないが、決して3連符の中央ではない。



 譜面の方にはあまり立ち入らないということですが、一番下の段のところの赤矢印は明かに「シ」の間違いでしょう。




主題




魔笛主題1
主題の前半 この装飾音を書かれた通りに演奏するのはなかなか難しい。




かつての巨匠たちは

 序奏に続くく主題では、2小節目の装飾音が難しいですね。確かに譜面に書かれた通りの音価で弾くのは 難しいところです。セゴヴィアやイエペスは、この箇所というより、曲全体をルバート気味に弾いていて、楽譜に書かれた音価とはあまり関係なく弾いています。かつてはそれが当たり前のように思われていました。




曲柄からすればイン・テンポのほうがよい

 しかし曲全体としては軽快で、シンプルな曲なので、若干のリタルダンドなどはあったとしても、全体的にはインテンポを基調とした演奏の方が耳に馴染みやすいでしょう。




前倒しして

 この装飾音の個所については、多くのギタリストはこのようにその前の16分音符を、下の譜面のように切り詰め気味に弾いているようです。意識的にそう弾いている人も、また無意識にそう弾いている人もいるでしょう。 確かにこのように弾けば、後続の装飾音の付いた付点音符を長くすることが出来て、比較的楽に弾けます。



魔笛主題2
多くのギタリストはこのように、前の音符を切り詰めて弾いている。確かに付点音符ぽくは聴こえるが




でも、私は

 しかし一つの区切り(モチーフ)の終わりを短く切り詰めてしまっては、やはり窮屈感が出ますので、避けたいところです。そこで私は次ように、ここは5連符風に弾いています。確かに付点音符らしくはなくなりますが、かなり記譜に近い音価になります。




魔笛主題3
    私はこのように、5連符的に弾いている