バッハ:無伴奏チェロ組曲 2
ケーテン時代の作品
バッハの 「6つの無伴奏チェロ組曲」 がいつ作曲されたかは、あまりはっきりしないそうですが、1720年、バッハ35歳の時には、すでに完成されていたのは確かなようです。
この年にバッハは 「3つの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ、およびパルティータ」 とこの「6つの無伴奏チェロ組曲」 を清書しています。
このうちヴァイオリンのほうはバッハの実筆譜が残され、チェロのほうは妻のアンナ・マグダレーナの写譜が残されています。

アンナ・マグダレーナの写譜(無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード) バッハの直筆にたいへんよく似ていると言われている
バッハは1717年~1723年ケーテン(中部ドイツ)のレオポルド候のもとで楽長をしていいました。
正味5年という決して長い期間ではありませんでしたが、この時期にレオポルド候の庇護もあって、特に器楽曲において数々の傑作を生みだしています。
この無伴奏のヴァイオリンとチェロのための曲他、平均律クラヴィア曲集第1巻をはじめとする数々の鍵盤曲や協奏曲など、私たちが親しんでいる多くのバッハの器楽曲がこの時期に作曲されています。

バッハが5年間のど過したケーテン城 この時代に多くの重要な器楽曲が生まれた。
ソナタ パルティータ スイーテ
この無伴奏チェロ組曲は無伴奏のヴァイオリン曲とセットで作曲されたと考えられますが、曲の出来には若干の違いがあります。
チェロの方はすべて ”Suite” 、つまり組曲で、 ヴァイオリンのほうはソナタとパルティータが交互に3曲ずつ作曲されています。
3曲のヴァイオリン・ソナタは、バロック時代の用語では ”教会ソナタ” という形で作曲されています。
教会ソナタというのは、主に緩、急、緩、急 の4つの楽章からなり、舞曲ではなく「アンダンテ」や「アレグロ」などの曲で構成されます。
パルテータもスイーテも ”組曲” と訳されるが
パルティータは日本語で「組曲」とも訳されたりしますが、元々は変奏曲の意味もあり、バッハの作品には実際に、変奏曲的なパルティータもあります。
しかし次第に変奏曲的な意味あいは薄れ、”何となく” 似たような感じの曲の組み合わせとなり、さらに自由な形の組み合わせの組曲的なものになってゆきます。
シャコンヌが含まれる「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調」などは、この”何となく似た感じの” ものといえるでしょう(どの曲も最初の低音の動きが同じ)。
また自由な組み合わせということで、バッハの場合ソナタ(教会ソナタ)に含まれるフーガと、通常組曲(あるいは室内ソナタ)に含まれるサラバンドやジグといった舞曲の両方を含むパルティータもあります (リュートのためのパルティータハ短調BWV997など)。
それに対してバッハの ”Suite” は、プレリュードを除いてすべて舞曲で構成され、さらに 「アルマンド」 「クーラント」 「サラバンド」 「ジグ」 の4曲を必ず含むものとなっています。
「6つの無伴奏チェロ組曲」 のそれぞれの構成は次のようになっています。
<第1番ト長調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.メヌエットⅠ、Ⅱ
6.ジグ
<第2番ニ短調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.メヌエットⅠ、Ⅱ
6.ジグ
<第3番トハ長調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.ブレーⅠ、Ⅱ
6.ジグ
<第4番変ホ長調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.ブレーⅠ、Ⅱ
6.ジグ
<第5番ハ短調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.ガヴォットⅠ、Ⅱ
6.ジグ
<第6番ニ長調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.ガヴォットⅠ、Ⅱ
6.ジグ
5曲目が違うだけ
5曲目が違いうだけで、6つの組曲はほぼ同じ構成になっています。 すべてプレリュードで始まり、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジグ+1曲 となっています。
その ”+1曲” は 1番、2番が「メヌエット」、 3番、4番がブレー、 5番、6番がガヴォットと、2曲ずつセットになっています。
イギリス組曲、フランス組曲も基本は変わらない
バッハの他の組曲といえば、鍵盤のための 「フランス組曲」 や 「イギリス組曲」 がありますが、 「フランス組曲」はプレリュードがない代わりに、基本の4曲以外に挿入される舞曲が1曲と限らず、第6番などは、ガヴォット、ポロネーズ、メヌエット、ブレーとたいへん豪華になっています。
「イギリス組曲」 はすべてにプレリュードが付き、挿入される舞曲も1曲で、チェロ組曲と近いものになっています。
類似したバッハの作品で 「6つのパルティータ」 というのもありますが、こちらは ”Suite” ではなく「パルティータ」 なので、組み合わせはもっと自由なものになっています。
バッハは ”Suite" として作曲する場合は、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジグの4曲を必ず含むものと、厳密に決めていたようです。
有名な管弦楽組曲は?
バッハには4つの「管弦楽組曲」と言うものがあります。 英訳では 「Orchestral Suite」となります。
この中で、有名な第2番の曲目構成を書くと次のようになります。
1.序曲
2.ロンド
3.サラバンド
4.ブレー
5.ポロネーズ
6.メヌエット
7.バディネリ
予選通過が決まった後のサッカーの試合?
Suiteなのに、必ず含まれるべき4曲のうちサランバンドしか入っていないじゃないか、ということになりますね。
それに 「バディネリ」 や、 「ロンド」 などバッハの曲としてはあまり聴かない曲も多いし。
レギュラー陣は今日はお休みかな? 予選トーナメント通過が決まった後のサッカーの試合みたいに。
管弦楽組曲は Suite ではない
バッハでも例外はあるのかといったところですが、ご安心下さい、バッハ自身ではこの管弦楽組曲を ”Suite" とは呼んでおらず、”Overture” と表記しています。

カール・リヒターの管弦楽組曲のCD。 このCDには英語で ”Orchestral Suites” と書かれているが、バッハ自身では ”Suite" とは書いていない。
バッハは言葉についてもたいへん厳格なんですね。
ですから ”管弦楽組曲” というのならまだしも、 ” Orchestral Suite!” と呼んではいけないということですね。
ケーテン時代の作品
バッハの 「6つの無伴奏チェロ組曲」 がいつ作曲されたかは、あまりはっきりしないそうですが、1720年、バッハ35歳の時には、すでに完成されていたのは確かなようです。
この年にバッハは 「3つの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ、およびパルティータ」 とこの「6つの無伴奏チェロ組曲」 を清書しています。
このうちヴァイオリンのほうはバッハの実筆譜が残され、チェロのほうは妻のアンナ・マグダレーナの写譜が残されています。

アンナ・マグダレーナの写譜(無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード) バッハの直筆にたいへんよく似ていると言われている
バッハは1717年~1723年ケーテン(中部ドイツ)のレオポルド候のもとで楽長をしていいました。
正味5年という決して長い期間ではありませんでしたが、この時期にレオポルド候の庇護もあって、特に器楽曲において数々の傑作を生みだしています。
この無伴奏のヴァイオリンとチェロのための曲他、平均律クラヴィア曲集第1巻をはじめとする数々の鍵盤曲や協奏曲など、私たちが親しんでいる多くのバッハの器楽曲がこの時期に作曲されています。

バッハが5年間のど過したケーテン城 この時代に多くの重要な器楽曲が生まれた。
ソナタ パルティータ スイーテ
この無伴奏チェロ組曲は無伴奏のヴァイオリン曲とセットで作曲されたと考えられますが、曲の出来には若干の違いがあります。
チェロの方はすべて ”Suite” 、つまり組曲で、 ヴァイオリンのほうはソナタとパルティータが交互に3曲ずつ作曲されています。
3曲のヴァイオリン・ソナタは、バロック時代の用語では ”教会ソナタ” という形で作曲されています。
教会ソナタというのは、主に緩、急、緩、急 の4つの楽章からなり、舞曲ではなく「アンダンテ」や「アレグロ」などの曲で構成されます。
パルテータもスイーテも ”組曲” と訳されるが
パルティータは日本語で「組曲」とも訳されたりしますが、元々は変奏曲の意味もあり、バッハの作品には実際に、変奏曲的なパルティータもあります。
しかし次第に変奏曲的な意味あいは薄れ、”何となく” 似たような感じの曲の組み合わせとなり、さらに自由な形の組み合わせの組曲的なものになってゆきます。
シャコンヌが含まれる「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調」などは、この”何となく似た感じの” ものといえるでしょう(どの曲も最初の低音の動きが同じ)。
また自由な組み合わせということで、バッハの場合ソナタ(教会ソナタ)に含まれるフーガと、通常組曲(あるいは室内ソナタ)に含まれるサラバンドやジグといった舞曲の両方を含むパルティータもあります (リュートのためのパルティータハ短調BWV997など)。
それに対してバッハの ”Suite” は、プレリュードを除いてすべて舞曲で構成され、さらに 「アルマンド」 「クーラント」 「サラバンド」 「ジグ」 の4曲を必ず含むものとなっています。
「6つの無伴奏チェロ組曲」 のそれぞれの構成は次のようになっています。
<第1番ト長調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.メヌエットⅠ、Ⅱ
6.ジグ
<第2番ニ短調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.メヌエットⅠ、Ⅱ
6.ジグ
<第3番トハ長調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.ブレーⅠ、Ⅱ
6.ジグ
<第4番変ホ長調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.ブレーⅠ、Ⅱ
6.ジグ
<第5番ハ短調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.ガヴォットⅠ、Ⅱ
6.ジグ
<第6番ニ長調>
1.プレリュード
2.アルマンド
3.クーラント
4.サラバンド
5.ガヴォットⅠ、Ⅱ
6.ジグ
5曲目が違うだけ
5曲目が違いうだけで、6つの組曲はほぼ同じ構成になっています。 すべてプレリュードで始まり、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジグ+1曲 となっています。
その ”+1曲” は 1番、2番が「メヌエット」、 3番、4番がブレー、 5番、6番がガヴォットと、2曲ずつセットになっています。
イギリス組曲、フランス組曲も基本は変わらない
バッハの他の組曲といえば、鍵盤のための 「フランス組曲」 や 「イギリス組曲」 がありますが、 「フランス組曲」はプレリュードがない代わりに、基本の4曲以外に挿入される舞曲が1曲と限らず、第6番などは、ガヴォット、ポロネーズ、メヌエット、ブレーとたいへん豪華になっています。
「イギリス組曲」 はすべてにプレリュードが付き、挿入される舞曲も1曲で、チェロ組曲と近いものになっています。
類似したバッハの作品で 「6つのパルティータ」 というのもありますが、こちらは ”Suite” ではなく「パルティータ」 なので、組み合わせはもっと自由なものになっています。
バッハは ”Suite" として作曲する場合は、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジグの4曲を必ず含むものと、厳密に決めていたようです。
有名な管弦楽組曲は?
バッハには4つの「管弦楽組曲」と言うものがあります。 英訳では 「Orchestral Suite」となります。
この中で、有名な第2番の曲目構成を書くと次のようになります。
1.序曲
2.ロンド
3.サラバンド
4.ブレー
5.ポロネーズ
6.メヌエット
7.バディネリ
予選通過が決まった後のサッカーの試合?
Suiteなのに、必ず含まれるべき4曲のうちサランバンドしか入っていないじゃないか、ということになりますね。
それに 「バディネリ」 や、 「ロンド」 などバッハの曲としてはあまり聴かない曲も多いし。
レギュラー陣は今日はお休みかな? 予選トーナメント通過が決まった後のサッカーの試合みたいに。
管弦楽組曲は Suite ではない
バッハでも例外はあるのかといったところですが、ご安心下さい、バッハ自身ではこの管弦楽組曲を ”Suite" とは呼んでおらず、”Overture” と表記しています。

カール・リヒターの管弦楽組曲のCD。 このCDには英語で ”Orchestral Suites” と書かれているが、バッハ自身では ”Suite" とは書いていない。
バッハは言葉についてもたいへん厳格なんですね。
ですから ”管弦楽組曲” というのならまだしも、 ” Orchestral Suite!” と呼んではいけないということですね。
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