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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

F.シューベルト 歌曲集「冬の旅」


  メゾ・ソプラノ 駒ヶ嶺ゆかり
  19世紀ギター 宮下祥子


  5月23日(木) 東京オペラシティ近江楽堂




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京王線ではなく京王新線

 私の場合あまり東京に出ない。そもそもあまり外出しないので、東京でコンサートがある度に会場探しに手間取ってしまいます。

 今回も会場となっている東京オペラシティは、ネットの地図では 「京王線」 と書いてあったので、新宿駅の京王線のホームに行くと、東京オペラシティのある初台方面の4番線が見あたりません。

 駅員さんに聞くと、「4番線は京王新線なので、この3番線のホームをまっすぐゆくと4番線への連絡通路があります」 ということでした。

 この日は京王線で事故があったらしく、3番線のホームはたいへん混んでいて、とてもではないが先に進める状態ではありません。

 慣れている人は人を搔き分けて進めるのかも知れませんが、私にはちょっと無理なようでした。 一旦改札口を出て、あらためて京王新線の乗り場に行きました。

 その前にトイレ探しにも時間がかかってしまいました。 新宿駅にはあまりトイレがないのか、トイレの案内が出ていません。

 上野駅や東京駅だとすぐに見つかるのですが、新宿駅では皆忙しくてトイレなんて入る人は少ないのかも知れません。



ギターとの相性のよいホール

 そんな訳で時間には余裕を持って家を出たのですが、会場には開演の少し前に着きました。結果的に待ち時間が少なく済んだとも言えます。

 東京オペラシティの3階にある近江楽堂というのは教会風の100人くらいのホールで、 東京オペラシティの中のホールということからすると意外なほど小さなホールです。

 関係者の案内で席に着くと、しばらくしてコンサートは開演となりました。 「冬の旅」 の1曲目 「おやすみ」 のギターによる前奏が始まりました。

 ピアノではなく、ギターで有名なイントロが鳴り出すのは、ちょっと新鮮な感じでした。

 宮下さんの演奏は19世紀ギターによるものですが、低音がしっかりと鳴っています。 また通常のギターに比べるとスラー奏法がしっかりと聴こえ、スラーの入ったパッセージはとても自然に聴こえます。

 ギターの音はちょうどよい大きさで、美しく聴こえます。 このホールギターとはたいへん相性がいいなと思いました。



声楽家の声量

 歌が始まりました、よく知っているメロディです。 声楽家の方の声量は、私たちの声とは比べ物にならないほど大きいということは十分にわかってはいるのですが、 それでもはやり生で聴くとそのボリュームに驚きます。

  20代の頃有名なバリトン歌手のディトリッヒ・フィッシャー・デスカウを聴いた時も(この時も冬の旅)、2000人近く入るホールの後ろの方でも圧倒的に聴こえる声量に驚かされました。

 おそらくメゾ・ソプラノの駒ヶ峰さんは、今回は比較的小さなホールで、なお且つ伴奏がピアノではなく、ギターということでいつもよりは控えめに歌っているのではないかと思いますが、ギターの音に慣れた私の耳には、この3分の1くらいの音量で十分のように感じました。



私たちギター族は

 音量が大きいということは、弱音と強音の差が非常に大きいということになります。 こうしたことはなかなかCDではわからないことですが、生で聴くと美しい弱音と力強い強音との圧倒的な差に驚かされます。

 これは声楽だけでなく、ピアノの演奏や、オーケストラの演奏でも同じことで、クラシック音楽においてはこの程度のダイナミックスの変化は当然のことなのでしょう。

 むしろ私たち”ギター族” のほうが、ほとんど音量の差のない世界に住んでいて、クラシック音楽としては特殊なケースと言えるのかも知れません。

 ギター以外のクラシック音楽をやってる人がギターの演奏を聴いたら、その音量の小ささと、また強弱がほとんど変化しないことに驚くのかも知れません。

 

前半と後半が異なる

 この 「冬の旅」 は24曲からなる歌曲集ですが、前半の12曲と後半の12曲では作曲の時期がやや違い、内容も異なるようです。

 前半の12曲の中には、第1曲の「おやすみ」 や、「菩提樹」、 「あふれる涙」、 「春の夢」 などよく知っていてたいへんメロディの美しい曲が多いのですが、後半の12曲の方は、13曲目の「郵便馬車」 など一部の曲を除くと、メロディらしくないメロディ、歌らしくない歌が多くなります。

 後半では自分が死に近づくことを喜ぶと言ったような歌となってきて、最後の「辻音楽師」ではカラカラと心の中を冷たい風が通り抜けてゆくような歌となってゆきます。

 若い頃など、4畳半の一人きりの部屋で炬燵にもぐりながらこの曲を聴き、どうしようもないほどの孤独感に浸ったりしたものです。

  しかしこの日は気温もだいぶ上がり、小さ目のホールとは言え、大勢の人の中で聴くと、やはり絶望感のようなものは若い頃ほどには感じられませんでした。 

 ・・・・歳のせいで感受性が鈍くなったかな?



女声の「冬の旅」

 この「冬の旅」 は、もちろん本来は男声のために書かれたもので、バリトンとテノールの間くらいの音域なのだそうです。 

 駒ヶ嶺さんはメゾ・ソプラノと言うことでしたが、それにしてはかなり低い音域まで歌っていたようです。
 
 最近ではこうして「冬の旅」は女性でも歌うようになってきているようです。 通常はコントラルト(低いアルト)などの歌手が歌っていることが多いようで、メゾ・ソプラノとなると、比較的稀なケースではないかと思います。

 さらにギター伴奏となれば、いっそうレアな形の演奏と言えるでしょう。



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並ならぬ意欲がなければ

 声楽のことはあまりわかりませんが、おそらく 「冬の旅」 のような男声の曲をメゾ・ソプラノで歌うのはたいへん難しいことと思います。

 さらにピアノのために書かれた伴奏をギターで弾くということも決して簡単なことではないでしょう。

 こうしたコンサートは、お二人の並みならぬ意欲がなければ実現しなかったものと言えるでしょう。

 会場は満員で、おそらく入場出来なかった人も少なくなかったのではと思います。

 最後にアンコールとして「春の夢」を再演しました。 
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