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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

ジーガ・メランコリカ

    ~セゴヴィアの作曲かも知れない、なんて書いたけど



ブログ 054



スペイン・ギターコンクールや重奏コンクールで優勝したギタリストの下田純義さん

 ちょっと前にギタリストの下田純義さんからメールがあって、ジーガ・メランコリカに関する私のブログの記事の一部を下田さんのブログに使用してよいかといった内容でした。

 下田さんはスペイン・ギターコンクール、および重奏コンクールで1位となったギタリストで、ちょうど創がクラシカル・ギターコンクールで1位になった年にスペイン・ギターコンクールで1位になっています。

 そうした関係でその時期、イヴェント会場などでお会いしたことがあります。 お会いしたと言っても直接会話をした記憶はなく、創と話をしているのを側で聴いていただけだったような気もします。

 私の記事は本当にとるに足りないようなもので、あえて確認をしていただくよなものではありませんが、丁寧にメールをいただいたという訳です。 




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セゴヴィアは少なくとも3回この曲を録音しているといった記事


 私はこのブログでジーガ・メランコリカに関して3回ほど書いています。 ブルグ内検索をしたところ、2012年9月29日、2012年10月28日、2017年3月6日となっています。

 特に2012年にはこの曲を演奏したこともあり、近い時期に2回書いています。 その内容というのは、
 、
 「アンドレス・セゴヴィアは少なくとも3回この曲を録音しているが、そのつど曲名、作曲者名が変わっている。

 最初の録音は1939年で、フローベルガー作曲 「ジーグ」として、 2回目は1944年で、ロベルト・ド・ヴィゼー作曲で「ジーグ」、 3回目は1961年で作者不詳の「ジーガ・メランコリカ」 として録音している。

 こうしたことは、おそらくヴァイス作曲として発表された「組曲イ短調(真の作曲者はマヌエル・ポンセ)」 などのように、真の作曲者はポンセ、またはセゴヴィアなのでは。

 作風などからすればセゴヴィアの可能性が高いようだが」

と言ったようなものです。




この曲はセゴヴィアの作曲かも知れない、などと書いたが

 しかし、下田さんの話によれば、この曲の真の作曲家はフローベルガーで、その根拠としてそのジーグを含むフローベルガーの組曲ニ短調のチェンバロによる演奏の動画のURLを送っていただきました。



確かにあのジーガ・メランコリアだ!

 確かにそのチェンバロから聴こえてくる曲はかつてよく聴いた、あのジーガ・メランコリカです! セゴヴィアの演奏に比べるとかなり速いテンポで演奏していますが、音的にはほとんど変わらず、間違いなくあのジーガ・メランコリカです。



真の作曲者が、最初の録音の時のフローベルガーだった、なんて誰も信じなかった?

 セゴヴィアの曲名表記が二転三転していることと、例のヴァイスの組曲の件などから、多くのギター関係者が、「またセゴヴィアやったな」 とフローベルガー作曲などということは信じなかったわけです。

 他人事のようですが、恥ずかしながらその”ギター関係者”の中に私も含まれ、 まさに ”オオカミ少年” 的発想になってしまったといえるでしょう。

 同じバロック時代の作曲家でもフローベルガーとなると、一般に知られるようになったのは比較的最近で、1939年の段階では、ほとんど知る人もいなかったとも考えられ、その時期にフローベルガーの作品をギターにアレンジして演奏するなどということはあまり考えられない、といった先入観もあったと思います。



オリジナル譜と8つの編曲譜

 下田さんには、自らが集めたジーガ・メランコリカの楽譜も送っていただきました。 チェンバロのためのオリジナルの譜面以外に、8種類のギターへの編曲譜も送っていただきました。

 それらの多くはセゴヴィアの演奏のコピー譜と思われますが、1995年の現代ギター誌版は原曲(チェンバロ組曲の)からアレンジしたものようです。

  セゴヴィアのコピー譜と思われるもの多くは「作者不明」と書かれていますが、セゴヴィア作曲とされているもの(Belwin-Mills社)、 ポンセ昨(コロンビア・ミュージック社)となっているものもあります。

 2001年のBerben社の譜面では、フローベルガー作、セゴヴィア編曲となってます。



オリジナル譜では前半リピートがない

 オリジナルの譜面も送っていただきましたが、それとは別個にネットでピアノ譜も取り寄せました。 この両者でも若干異なり、特に下田さんからの譜面には前半の繰り返しがなく、取り寄せたピアノ譜では繰り返しが付いています。

 これは単純にリピート記号が抜けているだけでなく、後者ではリピートするために1小節付け足されています。

 ギターの編曲譜はすべてこの前半リピートの形となっています。 




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2段譜の上下の割り当ても異なる

 あまり鍵盤音楽のことはわからないのですが、この両者では、2段譜の音の割り当てが若干異なっています。

 リピートのない版では音がやや上段に偏っていて、リピートのある版のほうではそれらの一部を下段に移しています。

 おそらくリピート版では、弾き易さのための変更と考えられます(バッハの作品でもよくある)。

 そう言った点からすると、下田さんからいただいた譜面はよりオリジナルに近いもので、私がネットで取り寄せたものは若干改編した実用譜ということになるのでしょう。

  因みに、チェンバロのアスぺレン(平均律のところでも書いた)はリピートのない版で弾いています。



ジーグが最後ではない

 チェロ組曲のところでも書きましたが、フローベルガーの組曲は、「アルマンド、クーラント、サラバンド、ジグの4曲からなり、バロック時代の組曲の原型となった」とされていますが、もともとフローベルガーの組曲は2曲目がジグで、4曲目がクーラントとなっていたそうです。

 それをある時期、バッハなどの組曲と同じように前述の順の変更されて演奏、出版されるようになったようです。

 ジーガ・メランコリアだけでなく、オリジナルのフローベルガーの作品にも、まだ不確実性が残されているようです。

 バッハのような大作曲家の場合だと、今現在では原典に忠実ということが浸透していますが、他の作曲家の場合だと、まだまだそういった姿勢が不足していることもあるようです。 

  







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コメント

中村先生、このように丁寧に取り上げて下さいましてありがとうございます。
今後も先生のブログ更新を楽しみにしています。

http://daitocoach.blog66.fc2.com/blog-entry-412.html?sp

2019/07/14(日) 23:09:24 | URL | 下田です #-[ 編集]
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