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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

令和時代のギター上達法3 ~ギター演奏の新常識



押弦(おうげん)



国語辞典には載っていない言葉だけど

 ギターや他の弦楽器で指盤上で弦を押さえることを押弦(おうげん)と言います、いや言うようですね。 それほど一般的な言葉ではなく国語辞典(学研新国語辞典)には載っていませんし、またWardなどの変換でも出てきません。

 私もレッスン中に 「ここを押弦して下さい」 とか 「その押弦の仕方が・・・・・」 とかはあまり言いませんね、「押さえる場所が」 とか 「押さえ方が」 と言ってように言っています。

 しかしギターのテキストや楽譜の解説などでは、この言葉はよく使われるようですので、今回はこの言葉を使っておきましょう。



逆持ちの方は

 さて、ギターは左手で押さえて、右手で弾く楽器ですが、前回の記事のとおり、左利き用の楽器を使用している方は左右の文字を逆に変換して読んでください。

 おそらく読者の皆さんは弦を押さえるとき、あまり強く押さえすぎてはいけないことはよくご存じと思います。 強く押さえ過ぎるといろいろな問題が発生してしまいますね、とりあえずその問題点を挙げておきましょう。




CIMG2633.jpg
適度な力で(軽く)押さえた場合




CIMG2634.jpg
ややわかりにくいが、強く押さえ過ぎた場合~押さえた弦が曲がって、指先が若干食い込んでいるのがわかるかな?




CIMG2638.jpg
押さえる場所がずれている場合。この場合は強く押さえないと音が出ない。




   ~左指で弦を強く押さえ過ぎると~


1. 腕が疲れる、指が痛くなる

2. 左指の動きが悪くなる

3. 左指のコントロールが悪くなる

4. ポジション移動が滑らかに出来ない

5, スラー奏法、特に下行のスラー(プリング)が出来ない。

6. 音程が狂う

7. ヴィヴラートがかからなくなる

8. キーキーといったノイズが発生しやすくなる

9. 弦の寿命が短くなる





あまりいいことはない

 だいぶありますね、でも他にもまだまだあるでしょう(今は思いつかないが)。 やはり弦を強く押さえ過ぎるとあまりよいことはありませんね。

 ある程度ギターをやっている人でしたら、こうしたことはだいたいご存じと思いますが、一応それぞれ説明を添えておきましょう。





1.腕が疲れる、指が痛くなる 

 これは説明の必要はないですね、当然と言えば当然です。 しかしある程度強く押さえなければちゃんと音は出ないのでやむを得ないこと、 むしろ 「疲れる」 とか 「痛くなる」 などというこは我慢して(根性で?)乗り越えない限り、ギターは上達しないと考える人も多いのではと思います。

 でもやはり出きるだけ疲れないように、指が痛くならないように練習するのはとても大事なことです。

 私も若い頃は練習するとすぐに指や、肩や腕などが痛くなってあまり長い時間練習できませんでした。 むしろ今のほうが長い時間練習できます。 もちろん体力がついたのではなく、省エネ的にギターが弾けるようになったからですね。

 また、当然ながら疲れたり、痛くなるのを我慢して練習すると、指などの故障の原因にもなります。

 

2.指の動きが悪くなる

 これももなんとなくわかると思います。 あまりいい例ではありませんが、サスペンス・ドラマなどで、思い余って人を刃物で刺してしまった場合、その刃物を放そうと思っても、手がこわばってなかなか手から離せない、なんてシーンがありますね。

 こんな場合は興奮しきって異常な力で刃物を握っているからで、その手の緊張を取るのもたいへんになるわけですね。

 そこまで強く弦を押さえる人はいないと思いますが、でも指を動かすには少しでも軽く押さえた方が良いことは間違いありません。 強く押さえると、指を弦から離すのも手間取ってしまいます。




3. 左指のコントロールが悪くなる

 これはちょっと説明の必要がありますね。 弦を押さる場合なるべくフレットの近くを押さえるということは皆さんもご存じと思います。 例えば2フレットを押さえるときには2フレット(金属の棒)のすぐ左側を押さえるわけです。

 これがフレットから離れたところ、つまりフレット間の中央付近とか、さらに左の方を押さえると ”ビービー” といったノイズ (ギョウカイ用語では ”ビリつき” などと言う) が発生したり、音がちゃんと出なかったりします。




位置がずれているのに音が出てしまうのはかえってよくない

 しかしフレット間の中央付近でも強く力を入れるとちゃんと音が出ます。 それじゃやはり強く押さえた方がいいんじゃないかと思われがちですが、これが ”落とし穴” なんです。

 確かに常に力入れと押さえると、多少押さえる場所がずれても狂っても普通に音が出ます。 これがかえって上達の妨げになります。 これをやっていると、いつも不正確な位置を押さえることになり、なかなか正確な場所を押さえられるようになりません。

 逆に、常に軽く押さえる人は、ちょっと押さえる場所がずれただけで、音が出なくなったり、ノイズが発生したりします。 つまり押さえる場所がずれたということがわかるわけです。

 そうすると当然押さえる場所を調節することになり、練習しているうちにだんだん正しい位置が押さえられるようになります。

 つまりノイズは ”押さえる位置が正確でない” といったことへの警告音なんですね、強く押さえるということはセンサーの電源を切ってしまうようなものです。




4.ポジション移動が滑らかに出来ない 

 これは、2.の「左指の動きが悪くなる」 の中に含まれることかも知れませんが、一応別に扱いました。 ポジション移動の場合、通常左人差し指を弦に触れた状態で、親指をネックから一時離して移動します。 

 このとき、当然ですが弦を強く押さえた状態、あるいはネックを強く握った状態では左手は動きません。  この状態で強引にポジション移動すると、音が切れるなど、レガートな演奏が出来なくなります。 また押さえる位置もずれやすでしょう。



5.下行のスラー奏法ができない 

 下行のスラー奏法はプリングとも言い、左指で弦を弾く奏法です。 下行のスラー奏法は通常二本の指、たとえば薬指と人差し指を押さえておいて、その薬指で押さえている弦を弾きます。

 この時、弦を強く押さえ過ぎるとなかなか指が動かず、無理やり弾こうとすると薬指だけでなく人差し指、あるいは手全体が動いてしまい、その結果音が出なくなります。

 スラー奏法では特定の指のみ動かさなければならないのですが、人間の指というものは強く力を入れると別個には動かず、一緒に動いてしまう傾向があります。 

 因みに、上行スラー(ハンマリング)は多少力が入っても出ますが、ただし強く押さえるのと、強く叩くのは別のことなので、力を入れたからと言って出るわけではありません。 




6.音程が狂う


音程は長さと密度、張力で決まる

 弦の振動数、つまり音程は弦の長さと密度(比重)、および張力によって決まります。 フレットを強く押さえるということは弦の張力が増してしまうわけですから、音程が上がってしまいます。

 さらに上下方向、左方向に引っ張ったり、押したりすると音程は上がり、右方向に押したときのみ音程が下がります(弦を緩めるようなことになるため)。 場合によってはこれらのことを利用して音程の調節を行うこともあります。 ヴィヴラートやチョーキングなどもこの原理によります。

 


7.ヴィヴラートがかかりにくくなる

 ヴィヴラートは力を入れた方がいいんじゃないかと思う人もいるかもしれませんが、きれいにヴィヴラートをかけるには、むしろ力の入れすぎは障害となります。

 というのも、ヴィヴラートは指先で書けるのではなく、手首全体でかけます。その際弦を強く押さえ過ぎると手首が動かなくなる、あるいは硬直した動きになるからなのです。

 美しいヴィヴラートを得るには柔軟な左手の動きが必要です。 逆にヴィヴラートの練習することにより、左手の脱力や、柔軟性を付ける練習になります。 

 

8.キーキーというノイズが発生しやすい

 クラシック・ギターの低音弦(4,5,6弦)は、細い金属の線が巻いてありますね(芯はナイロンだが)。  この巻き線になっている低音弦を押さえたり、離したり、あるいはポジション移動する時、よくキーキーといったノイズが発生してしまいます。

 これは軽く押さえてもやはり出てしまいますが、強く押さえると一層ノイズが大きくなります。  昔はこういったノイズはあまり気にしないで弾いていたのですが、最近ではこういったノイズをほとんど、あるいは全く出さないギタリストも多くなりました。
 



9.弦の寿命が短くなる

 これは説明不要ですね、弦を強く押さえるとフレットとの摩擦も大きくなり痛みが早くなってしまいます。 弦のみではなく、フレットの方も削れてしまい、頻繁にフレット交換をしなければならなくなります。

 私の子供の頃(60年くらい前)の弦は音もよく出ないが、耐久性もなく、一か月もすると4弦の2フレットあたりがすり減って切れてしまいました。

 最近の弦は多少弾いても切れることはほとんどありませんが、それでも左手に力を入れて練習していると、4弦がすり減って巻がほぐれたりします。 そんな人は完全に押さえ過ぎです。 

 


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