中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

タルレガ作品全集 3

2集に分けて出版されたAntich y tena社のものの次にこの「全集」に載っているのは1907年~1909年にかけて、Vidal,Llimonay Boceta in Barcelona、 Sociedad Editorial de Musica および Orfeo Tracio in Madorid の3社から出版された29曲です。この3社により別々に出版されたのではなく、版権がこの3社に引き継がれていったようで、最後の Orfeo Tracio in Madorid社のカタログにはAntich y tena社で出版されたものも、すべて含まれています。


ルール?

 最初の曲はバッハの無伴奏チェロ組曲第3番のブーレですが、なぜか曲名が「ルール」となっています。バッハのリュート組曲第4番にルールという曲がありますが、もちろんその曲とは全く違う曲で、「ブーレ」と「ルール」は全く違う舞曲だと思うので、この曲名が付けられた理由は全くわかりません。セゴビアのLP (シャコンヌなどが入っているLP)に、この曲を「ルール」として録音したものありますが、この譜面を用いていたようです。ただしタルレガ編と明記はされていません。オリジナルはハ長調ですが、これを1オクターブと2度あげてニ長調としています。音域が高い分確かに華麗に響き、セゴビアの演奏もとても魅力的ですが、技術的にはかなり難しそうです。普通この無伴奏チェロ組曲第3番をギターで弾く場合はイ長調にすることが多く、セゴビアも後にこの組曲を全曲録音した時には、デュアート編のイ長調版を使っています。また、この曲は特に長い曲でなく、2ページあれば十分収まる曲なのですが、ここではあえてリピート記号などを使わず4ページとなっています。


レクエルドス デランブラ

 この30曲中の13番目にタルレガの作品中最も有名な「アルハンブラの思い出」があります。原題は Recuerdos de la Alhambra で、「レクエルドス デランブラ」と発音するのだと思います。チリからの留学生に聴いたことがあります(チリの公用語はスペイン語)。内容は普通私達が見慣れているものとほとんど同じですが、中には少数ですが、運指などを変更している譜面も出ているようです。やはり現代ギター社のものは細部に至るまで忠実に再現していると思います(コーダで、リピート記号ではなく「bis」と表記されているのも同じです)。

 最初の4小節、つまり2段だけクレシェンド、デクレシェンド、アクセント記号が付けられていますが、もちろんここだけ強弱を付けるという意味ではなく、「以下同様に」という意味だと思います。2拍目と3拍目の伴奏の音に付けられたアクセント記号は、3拍子のリズムを明確にするようにといった指示だと考えられますが、最初の小節から交互に付けられたデクレシェンドとクレシェンド記号の意味は少しわかりにくいと思います。「メロディの起伏に応じて強弱を付ける」といった意味に、私はとっています。そう解釈すると、前半の9小節目(セーハ8になるところ)や、イ長調になってからの6小節目(メロディが10フレットになるところ)は当然音量を上げるということになります。
 

オリジナルより編曲の方に

 この29曲中、タルレガのオリジナル作品は10曲しかなく、残りは編曲となっています。オリジナル曲としては「アルハンブラの思い出」の他、「夢(トレモロ)」、「マリーア(ガボット」、「前奏曲第6~9番」、「マズルカト長調」、「メヌエット」などで、編曲はハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、シューマンなどの作品となっています。タルレガの場合、オリジナルよりも編曲のほうが多く、その比はだいたい1対2になっています。編曲作品はかなり難しいものになっている場合が多く、どちらかといえばオリジナル作品のほうが弾きやすいと思います。またギター曲としてもオリジナル作品のほうに一分の利があるように思いますが、タルレガ自身は自らの作品を書くよりも、他の音楽家の作品を編曲して演奏することの方に力を注いだようです。また後でも述べますが、他のギタリストの作品もよく演奏していたようです。私達の立場からすれば、タルレガにはもっとオリジナル作品を書く事の方に執着して欲しかったかなと思います。
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