中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

 前回の「左手」の話だいぶ長くなってしまい、読むのもたいへんだったかも知れません。読むのが面倒な方は見出しだけ見ておけばよいでしょう。さて今回は「ヴィヴラート」の話です。


より美しい音のため

 ギターの音色はたいていの場合、右手の方で決まりますが、唯一左手が関与するのがこの「ヴィヴラート」いうことになります。ヴィヴラートはギターに限らず、どの楽器でもとても重要なもので、その音色をより美しく聴かせるため、場合によってはその音楽の微妙なニュアンスを表現するためにも用いられます。またその演奏家の個性や特徴に大きく関係するものだと思います。ギターのヴィヴラートについてはこれまであまり語られることも少なかったと思いますので、ここで私の実行している方法や考えなどをお話したいと思います。


ギターの場合は

右に動かす=弦をゆるめる=音程が下がる
左に動かす=弦を引っ張る=音程が上がる             

 ヴィヴラートは音程を小刻みに振動させることですが、ギターの場合は押さえている指を、左右に動かすことによって生じます(上下方向にかける場合もありますが、私は実行していません)。
 もっとも押さえている指をどう動かしてもギターの弦はフレットで押さえる訳ですから、ヴァイオリンなどのように直接押さえる場所が変わる訳ではありません。ギターの場合は指を動かすことにより弦のテンションが変わるので、そのことによって音程が変化します。
 つまりヴァイオリンの場合は指を右に動かすと音程が上がり、左に動かすと音程が下がりますが、ギターの場合は逆に「右」に動かすと弦を「ゆるめる」ことになり音程は「下がり」、「左」に動かすと弦を「引っ張る」ことになっで音程は「上がり」ます。これは感覚的なものとは逆になりますので、意識しておいた方がよいと思います。


手首でかける

 ヴィヴラートを正しくかけるには、まず左手のフォームなどが正しくなければなりません(フォームに関しては前回の「左手」を参考にして下さい)。特に左手に不要な力が入っていてはヴィヴラートはかかりません。その正しいフォームを意識しながら、中指で②弦の10フレットを押さえて下さい(この辺りが一番ヴィヴラートがかけすい)。この時親指の位置は中指のちょうど裏側かやや右、ネックの中央よりはやや上になります。
 右指でその音を弾いて、「左手首」全体を左右に動かして見て下さい。さきほどわかりやすく表現するために「押さえている指を、左右に動かすことによって生じます」と書きましたが、正確には指ではなく手首です。指は弦から離れない程度に押さえておいて下さい、強く押さえると手首が動かなくなってしまいます。


音色の変化のため

 手首を左右に動かすことが出来たら、よく聴くと音程が変化するのがわかると思います。あまりはっきりしない場合もありますが、はっきりわかるほどかからなくてももよいと思います。音程はほんの少しだけ上下すればよく、あまり高低の差があるとかえって不快な感じになってしまいます。多少なりとも手首を動かすと、弦にかかるテンションが変化し、かならず少しは音程も変わるはずです。ヴィヴラートの本来の目的は音程を揺らすことではなく、音色に変化を与えるためですから(少なくとも私はそう思います)、多少なりとも音色が変わればそれでいいと思います。
 左右に動かすスピードもそれほど速くなくてもよいと思います、あまり遅いのも変かも知れませんが、だいたいトリルくらいの感じといったらいいでしょうか。
 一応ヴィヴラートがかかったら他のポジションや他の指でもやってみて下さい、5フレットから12フレットくらいだとだいたいかかると思います。日常的にも、本格的に曲を練習始める前に時々やってみるのもよいでしょう、これは左手全体の脱力の練習にもなりますし、常に音色を意識する習慣にもつながります。


和音やセーハの場合でも

 ヴィヴラートの正しいかけ方が出来れば、和音などでも、あるいはセーハをしている時にでもヴィヴラートがかけられます、もちろん不要な力や手首の柔軟性がなければ出来ませんが。 和音にヴィヴラートをかけるとたいへん効果的です、またスラーや、グリサンドの時などにかけるのもたいへん美しく響きます。単音で出来た人はぜひこのような場合もやってみて下さい。
 

私の場合は

 ヴィヴラートはその基音より「高め」にかけると言う人と「低め」にかけるという人がいますが、私の場合、基本的にはその基音を中心にかけますが、①弦や、ロー・ポジションなどのヴィヴラートがかかりにくい場合は、左のほうに動かしやや高めにかけます。こうするとヴィヴラートがわかりやすくなります。逆②弦や③弦のハイポジションのなどのヴィヴラートのかかりやすいポジションでは、あまり高くなり過ぎないように、左右平均的にかけます。
 また短い音の場合は1回左の方に動かすだけですが、これだけでも結構音色のアクセントになります。速いパッセージなどでは最初の音だけにかけたりもします。


グリサンドの時にも、音程の調節にも

 私の場合、上行のグリサンドの場合は一度左の方に手首を動かして、音程をやや上げ、それからグリサンドします、下行の場合は逆に一度右に動かしてからグリサンドします。これはポジション移動の時にお話したとおり、腕全体を滑らかに移動させる意味もありますが、こうするとグリサンドが効果的に聴こえます。よければ試してみて下さい。
 また低音弦で上行のグリサンドをした場合、目的のポジションまで指を移動した時、どうしても右よりに力が入ってしまい、音程を下げ気味になってしまいますから、目的のポジションまで行ったら、左よりにヴィヴラートをかけます。これは音程を正しくとることが一番の目的ですが、そのついでにヴィヴラートをかけてしまうわけです。グリサンドの入った曲というのはたいていギターぽさを出す曲になっているので、たいていグリサンドとヴィヴラートをセットにしています。また正しい音程をとるためのヴィヴラートというのもあります。


ヴィヴラートがない方がよい場合も

 ギターでメロディを歌わせる場合はヴィヴラートはたいへん重要で、聴き手の気持ちを掴んだり、自分の気持ちを表現したりするためにもたいへん重要な手段であると思います。しかし曲によってはヴィヴラートをかけない方がよい場合もあります。一般にルネサンスやバロック時代の作品にはあまり用いません、現代の作品でもヴィヴラートを用いないほうが美しい作品もありますので、その作品の時代様式や、性格などを考えた上でヴィヴラートを用いる必要もあるでしょう。

 次回からは「右手」の話です。
スポンサーサイト
コメント
コメントする
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
この記事のトラックバックURL
http://mitoguitar.blog85.fc2.com/tb.php/16-3011134e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック