中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

ハイドン交響曲全集  (全107曲~33枚組)
オーストリア-ハンガリー・ハイドン管弦楽団  指揮アダム・フィッシャー



タレガ、アルベニス

今年2009年は、クラシック・ギター愛好者であればタレガの没後100年ということはよくご存知のことと思います。おそらく世界各地で記念のコンサートなどが行われたり、CDが発売されたりしているのではないかと思います。没後100年といえばもう一人、我々ギターを弾くものにとっては馴染みの深い作曲家、イサーク・アルベニスもいます。同じ年に亡くなったこの二人は生前に親交もあり、タレガがアルベニスの作品をギターに編曲して弾いていたのも皆さんご存知かも知れません。アルベニスは、晩年にタレガのためにギターの作品を書く約束をしたそうですが、残念ながらその約束を果たす前に世を去ってしまいました。アルベニスの作品はギターではたいへんよく演奏されますが、結局のところオリジナルのギター作品としては1曲も残しませんでした。実現されていればどんな作品となっていたのでしょうか、本当に残念なことです。


忘れてはならないヨーゼフ・ハイドン

 没後記念といえば今年はもう一人忘れてはならないのが、交響曲の父と言われ、音楽史上ではたいへん重要な作曲家のヨーゼフ・ハイドンがいます。ギター・ファンとっては多少縁の薄い作曲家かもしれませんが、やはり大作曲家には違いありません。ハイドンは1809年に没しているので、今年は没後200年ということになります。一般の音楽ファンにとっても、モーツアルトが1791年に亡くなったとか、ベートーヴェンが1827年に没したとかはよく知られているでしょうが、ハイドンが1809年に亡くなったというのはあまりピンと来ないかも知れません。没年だけで見ればハイドンはモーツアルトとベートーヴェンのちょうど間くらいになります。

 
 実は今年がハイドンの没後200年にあたるというのはこのCDを買ってから気が付いたのですが、前からハイドンの交響曲全集が欲しいと思っていて、たまたま最近手ごろな価格(約1万円)でよさそうなものがあったので取り寄せたと言う訳です。このCDは現存するハイドンの交響曲全107曲が33枚のCDに収められています。演奏者については詳しくはわかりませんが、なかなかよい演奏で、演奏者の技術は高いように思います。オリジナル楽器系の演奏ではなく、いわゆるモダン・オーケストラで、録音もたいへんよいと思います(1987~2001年のデジタル録音)。


初期の曲といえども

 なんと言ってもかなりの量なのでまだ全部は聴いていませんが、とりあえず82番以降の「パリ交響曲」、「ザロモン・セット」を除いて、つまり1番~81番まではプレーヤーにかけてみました(もちろんすべての曲をちゃんと聴いたわけではありません)。さすがに100曲以上もあるとどれを聴いても同じようなもの、特に初期の曲などはそうなのではないかと思ったのですが、実際に聴いてみると、意外と1曲、1曲個性的で、初期の曲でも、というよりむしろ初期の曲の方がいろいろ変化があって面白いように思いました。

 初期の曲といっても「第1番」とされている曲が作曲されたのが1757年、つまりハイドンが24歳の頃ということになり(1733年生まれ)、8~9才頃作曲されたモーツアルトの「第1番」ように幼少期のものではありません。ハイドンはこの頃にはすでに1人前、あるいはそれ以上の音楽家としての技術や経験はもっていたでしょうし、現存されていなくともおそらくそれ以前にも交響曲、あるいはそれに類する曲はすでに作曲していたと考えられます。そう言った意味でハイドンの初期の交響曲は決して習作的なものとは言えないでしょう。


ハイドンにとってソナタ形式とは

 ハイドンの研究者、ホーボーケンによって「第1番」とされたこのニ長調の交響曲がハイドンの最初の交響曲かどうかははっきりしたものではないでしょうが、現存するハイドンの交響曲の中では最初期にあたるのは間違いないのでしょう。弦楽にホルンとオーボエが加わった編成で、3楽章構成となっています。おそらく10数名程度の小規模のオーケストラを想定したもので、ほとんど室内楽に近いものと考えられます。曲全体の印象ははつらつとしていて好感度は高く、モーツアルトの初期の交響曲に比べても親しみが湧く感じです。譜面がないのであまり詳しいことはわかりませんが、第1楽章はソナタ形式で書かれ(多分)、第2主題は第1主題となんとなく近い関係にあるようです。つまり一つの素材をもとにこの楽章全体が出来ている感じです。またこのCDでは後半、つまり展開部以降のほうも反復がなされています。


 古典派時代、つまりこの時代の交響曲などの第1楽章はソナタ形式で書かれているということは音楽の教科書にも書かれ、確かにその通りなのですが、ただこの当時はまだ「ソナタ形式」という言葉はなく、その定義なども19世紀になってから出来上がったようです。普通ソナタ形式では第1主題と第2主題は対立する関係にあるとされていますが、ハイドンの場合はそれほど意識していなかったように思われます。ハイドンにとって第2主題は「属調で書かれた部分」といったものではなかったかと思います。モーツアルトの場合には第1主題と第2主題は比較的対照的に書かれ、譜面などを見なくても「ここが第2主題」とわかることが多く、第2主題の方が第2主題より印象的な曲も結構あります。「変化」や「多様性」を重んじたモーツアルトに比べ、ハイドンの場合は「統一性」といったことが重んじられたのかも知れません。そういった意味でもベートーヴェンはハイドンに近いのでしょう。
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