中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

譜例


フェルナンド・カルリ : アンダンテ イ短調

   *上がってゆく場合はクレシェンド、下がってゆく場合はデクレシェンド

 今回から具体的な例を用いて話を進めます。まずシンプルな例からですが、譜例の上の曲は前にも出てきたカルリのイ短調の「アンダンテ」の後半の8小節です。このメロディは4小節ごとに「上がって、下がる」というようにたいへんシンプルに出来ていて、歌わせ方(フレージングと言った方がよいかも知れませが)を練習するには都合が良いものです。このような場合は楽譜にも書いたとおり(強弱記号などは私が付けたものです)、メロディが上がってゆく場合は「クレシェンド」、下がってゆく場合は「デクレシェンド」と単純に考えてよいでしょう。


   *人生のピークは後にある方が

 もうすこし細かく言うと、クレシェンドの方がデクレシェンドよりも長くなり、譜面で一番高い「ソ」はフレーズ(4小節)の中央ではなく、やや後ろ目になっています。何事においても「これからどんどん盛り上がってゆく」のは楽しいのですが、「下り坂」はあまり楽しくありません。したがって「上り」が長く、「下り」が短いほうがよいのです。人生のピークも後のほうにあるほうがよい人生と言えると思います。またこのフレーズ中最も高い音の「ソ」だけを大きくするより、その前後の「ファ」も同じくらい大きくして、槍ヶ岳のような「尖った」山にするのではなく「高原」状にするほうが穏やかなフレーズとなります。


   *基本はイン・テンポ

 このようなシンプルな曲の場合、歌わせるといっても、基本的には音量の変化だけで表現し、テンポは変えない方がよいでしょう。確かに8小節目のところ、つまりこの譜面の最後のところで本当にわずか、聴いている人にはわからないくらいテンポを落としてもよいでしょうが、テンポを落とすという意識で弾くと、どうしても不自然になりがちですから、テンポを落とすという気持ちではなく、最後で力を抜くといった気持ちの方がよいでしょう。そのことで音量が落ちるとともにテンポがほんの少し落ちるでしょう。もっとも本来、フレーズの最後で音量やテンポを落とすのも、結局最後で力が抜けた感じを出すためです。


   *実際は2声になっている

 蛇足かも知れませんが、メロディである上声部の「ド、ド、レ、レ、」という音が切れたりしては強弱どころではありませんから、それらをレガートに弾けるようにしなければなりません。またこの曲の場合は単旋律ではなく、低音部にも「ド、ド、シ、シ」といったメロディもあるので、それもメロディとして聴こえるように弾いてください。また4小節目の8分休符は右手で消音をしているとテンポが乱れるので、左指を離すだけでよいでしょう。もちろん8小節目の4分休符は消音しないと「一区切り」になりません。またその休符が短くなると落ち着きません、気持ち長めくらいの方がよいと思います。ただしあくまで「イン・テンポ」の範囲内です。




カタルーニャ民謡~リョベット編 : 聖母の御子

   *2+2+4

 下の譜例はカタルーニャ民謡の「聖母の御子」のメロディだけを書いてものです。こちらも「上がって、下がる」といった点は上のカルリの曲と同じですので、基本的には同様な考え方でよいと思いますが、フレーズの出来方としては4小節+4小節ではなく、2小節+2小節+4小節と考えられます。楽譜を見ると後半も2小節+2小節とも見えるのですが、そうすると全体が細切れになりすぎるので、後半は4小節のフレーズと考えた方がまとまりが付きます。強弱の付け方についてはカルリの場合と全く同じですが、この曲の場合はフレーズの最後では若干テンポを落としてもよいでしょう。でも4小節目のとところは本当に少しです。8小節目のところはある程度テンポを落としたことがわかってもよいでしょう。


   *以外と難しい曲だが、イメージだけはしっかり

 この曲はメロディはシンプルなのですが、和音が入ると結構難しくなり、レガートに弾くにはかなりの技術が必要となります、決して易しい曲とは言えないでしょう。始めから楽譜どおりに練習を始めると、和音の押さえかたばかりが気になって、全然メロディにならないこともありますから、最初にメロディだけ弾いてみて、そのイメージをしっかりと身に付けておくと良いでしょう。





テンポは効き目の強い薬、副作用に注意

 今回は二つの曲を例に取り、特に音の強弱による歌わせ方、言い換えればメロディらしく聴こえるための方法を話しました。古典的な曲やシンプルな曲では主に強弱によって表現し、テンポの変化の方は控えめにした方がよいでしょう、あくまでも不自然にならないように注意します。テンポというのは効き目の強い薬のようなもので、上手く使えばたいへん良い効果が現れますが、使い方を間違えれば思わぬ副作用が現れます。またテンポの変化はほんの少しでも効き目が十分にあらわれます。


ギターは息をしなくても死なないが

 当たり前のことですが、歌を歌う場合は息継ぎをしなければなりません。その結果、必ず「切れ目」が生じ、その息継ぎと息継ぎの間が一つのフレーズとなるわけです。ギターの場合は弾いている人は息をしなければなりませんが、ギターの音そのものは別に息をしなくても大丈夫ですから、ずっと切れ目なく弾くことも出来るわけです。しかしそれでは「歌っている」ようには聴こえず、歌っているように聴こえるようにするには、擬似的に「息継ぎ」をしなければなりません。その場合フレーズの切れ目で音を一度止めるということだけではなく、一つのフレーズの中で、「だんだん力が入ってきて、抜けてゆく」といったものが必要だと思います。つまり実際に「息を吸ったり、吐いたり」する代わりに、「力を入れて、抜く」わけです。あるいはそういったイメージでメロディを弾くと言った方がよいでしょうか。


何か言っているように聴こえる

 また「フレーズ」という言葉はもともとは文法の用語だと思いますが(フレーズ=成句)、フレーズからセンテンス(文)が出来、さらに文章が出来るというようになっています。音楽もそれとほぼ同じように、動機(モチーフ)から小楽節(フレーズ)が出来、小楽節から大楽節(センテンス)出来、さらに一つの曲となります。確かに音楽というものは基本的に抽象的なものですから、それが何を表現しているのかとかは具体的にはわかりません。しかし「よくはわからないが、この音楽は何かを語りかけているようだ」というように聴こえることが必要なのだと思います。その「何か」が聴く人によって全然ちがったものであっても。

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