中村俊三 ブログ

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譜例 001


タレガ : エンデチャ

 前回は強弱を中心とした、古典的、あるいは穏やかな曲の場合の歌わせ方について話をしました。今回はもっと強い表現、つまりテンポの変化を主とした表現法の話をしましょう。譜例はタルレガの2曲セットの小品「エンデチャ、オレムス」の「エンデチャ」の方です。曲の説明は省略しますが、エンデチャとは「エレジー」、つまり悲しい歌です。美しく弾くことも大事でしょうが、やはり悲しさが伝わってこないとならないでしょう、今回はそのための方法についての話です。


クレシェンドとデクレシェンドで

 上記の譜面を、前回お話したように、まず2小節ごとにクレシェンド、デクレシェンドを繰り返し、そのフレーズ(正確には動機)の終わりでほんのちょっとテンポを落とすといった方法で弾いてみてください(五線譜の下に書いてあるように)。もちろんこの時、美しい音でレガートに弾けると言った事が前提となります、もしそうできない時は主旋律だけ単音で弾いてみて下さい。なおフレーズの終わり、つまり2小節目や4小節目の冒頭のところは和音の繋がり的にもデクレシェンドとなります。また6小節目からは和音が2つずつ「解決」となるので、それぞれデクレシェンドとなります(括弧の付いたデクレシェンド)。ということは7小節目などは小さなデクレシェンドをしながら、全体にはクレシェンドするような形になります。


テンポの変化も加える

 以上のことが出来れば、この曲の感じはだいぶ出てきます。またさっぱり感もあり、好みによってはこうした演奏のほうがよいかも知れません。しかし「エレジー」として、聴いている人を「泣かせ」ようと思う場合は、ちょっともの足りないのではないかと思います。そこで五線譜の上に書いたように強弱の変化にアチュレランドとリタルダンドを加えます。記号だけではわかりにくいと思いますので、直線のグラフを添えました。線が上にある時は速度が速く、下にある場合は速度が遅いと考えてください。大雑把に言えば、クレシェンド=アチュレランド、 デクレシェンド=リタルダンドと考えてよいですが、9小節目からはデクレシェンドしながらテンポを上げた方がよいでしょう。また最初の「ラ」の音は長めにするとよいでしょう、アウフタクト(裏打ち)で始まる場合はその方がよいとされています。


今はとても楽しい気分でも

 以上のようにすると、より強い表現、つまりとても悲しい感じになったのではと思います。人間本当に悲しい時には冷静にはしていられませんから揺れ動く感じがあったほうが、よりリアルなのではと思います。時に9小節目あたりから悲しみが込み上げてくる感じが出れば最高だと思います。この時前に話した俳優さんたちのように「なりきる」ことも大事なのではと思います。特に皆さんが今日、悲しいことなんて何にもないとしても、このような曲を弾く時、あくまでもバーチャルな世界でですが、とても悲しい気持ちになりきるのも必要なことでしょう。そういった自分の気持ちや気分をいろいろ変えて遊ぶのも音楽の楽しみ方の一つかなと思います。


テンポはしっかりとコントロール

 ただし前にも言ったとおり、テンポを変えるといのは強い薬とと同じで、その使い方を間違えるとその曲を台無しにしてしまうことがあります。それを避けるには、テンポを変える時しっかり「テンポをとる事」が大事です。矛盾する言い方かも知れませんがテンポを速くしたり、遅くしたりする時、しっかりと、場合によっては体でテンポをとるわけです。むしろ一定のテンポで弾く時よりテンポを変える時の方がしっかりとテンポを刻む必要があります。結果的には速くする時も、遅くする時も「だんだん」に、つまり一定の割合で速くなったり、遅くなったりしなくてはなりません。確かにこれは言葉で言うほど簡単ではなく、かなり練習しなければなりませんが、ここで前に言った「正確なテンポでメロディが弾ける」と言うことが必要になってきます。正確なテンポで弾けなければ、「だんだん速く」とか「だんだん遅く」とかも出来ないからです。


あまり台所事情は知られたくない

 これらのテンポの変化をどの程度させれば良いのかという事ですが、結局のところは弾く人の感性ということでしょう。しかし聴いている人にはあまりそのテンポの変化をわからせたくない、ぼうっと聴いていれば一定の速さで弾いているように弾けたらよいと思います。聴いている人には速さを変えていることではなく、悲しい気持ちの方を聴きとってもらいたいと思います。おそらく一流の料理人たちは、お客さんにどういった食材をどの様にさばいたか、とか隠し味に何を使っているか、など厨房の事情などを知ってもらうより、その料理をおいしく食べてもらうことを一番に考えているのではと思います。


オレムスの方は

 「オレムス」のほうについても若干触れておきましょう。「エンデチャ」と「オレムス」もともとは別な曲ですが、タレガとしてはセットで演奏することを念頭に置いているのではないかと思います。「オレムス」は8小節しかない短い曲で、無窮動的に16分音符が続きますが、やはり「歌」と考えてよいのではと思います。4小節のフレーズ2つで出来ていますので、基本的な方法としては「エンデチャ」と同じでよいと思いますが、演奏する時の気持ちとしては物理的に強弱や、テンポを変化させるというより、前に言った「力をいれて、抜く」といったような気持ちで弾くとよい思います。また無窮動的な曲であるが上に、4小節目や8小節目の「ブレス感」はちゃんとあった方がよいでしょう。

 
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コメント
Re: オレムスについて
MASA様

 私のブログを読んでいただいているそうで、ありがとうございます。

 1年ほど前でしょうか、シューマンのピアノ曲全集が安く出ていたので(イェルク・デムスの)、取り寄せ、この曲の原曲を聴きました、だいぶ難しそうな曲ですね。それにしてもタレガはいろいろなところから編曲しますね、ギターに限らず音楽的な知識はたいへん広く、深いものがあったのでしょう。

 エンデチャの方はオリジナル曲なのでしょうか?
2009/07/31(金) 00:33:47 | URL | 中村俊三 #-[ 編集]
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