中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

 今頃になってこんな話をするのも何なのですが、スタンリー・マイヤーズ作曲の「カヴァティーナ」と言えば、今や「アルハンブラの想い出」に並ぶクラシック・ギターの名曲中の名曲。かつて映画で最も有名なギター曲と言えば「禁じられた遊び」でしたが、最近ではその地位も取って代わろうかというところだと思います。もちろん私自身でも時々弾きますし、レッスンもしています。この「カヴァティーナ」は映画「ディア・ハンター」のテーマだということは皆さんもご存知だと思いますが、実は私はこの映画を最近まで見たことがなく、レッスンの時にも、 「この曲は『ディア・ハンター』というベトナム戦争を描いた映画の主題曲で・・・・・・」 などと説明しているわりには、実際はどんな映画なのか全くわかっていませんでした。前から気にはなっていたのですが、私の場合、基本的に映画もDVDもあまり見る方ではないので最近まで、ついつい見ないままになってしまいました。自分でもこの曲を演奏したり、また生徒さんにレッスンをしている以上、この映画の内容は当然知っていなければならないはずなのですが。



 先日、ちょっとした偶然でこの「ディア・ハンター」のDVDをSさんから借りることが出来ました。ただしDVDプレヤーがないのでパソコンで見るしかなかったのですが、なにぶんパソコンでDVDをあまり見たことがなく、最初は字幕が出せなかったり(英語はもっとわからない!)、画面がやたら暗かったり(モニター調節不良)など、ちゃんと見られるようになるまでちょっと手間がかかりました。なお且つ話の筋がなかなか掴めず、何度か前に戻って見直したりしました。正味で3時間というやや長めの映画ですが、全部見終わるまで結局のところ4時間以上はかかってしまったと思います。といっても続けて見たわけではなく、一週間くらいかけてやっと見終わりました。



 当ブログを読んでいる方々は、この映画を見たり、内容をよく知っている方も多いとは思いますが、私なりには結構頑張って最後まで見たので、一応内容などを紹介することにします。「カヴァティーナ」は知っている、あるいは弾いているけど、「ディア・ハンター」は見たことがないという人はぜひ読んでみて下さい。



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 この映画は1978年の映画で、ベトナム戦争の末期に、製鉄で有名なピッツバーグから徴兵される3人の青年(ニック、マイケル、スティーヴン)が主人公となっています。出兵する直前、スティーヴンはアンジェラと挙式をあげ、ニックは美しい恋人のリンダと帰国後の結婚を約束します。また他の仲間と鹿狩りに行き、ニックは見事に鹿を射止めます。その3人は戦地で捕虜になり、川の上の小屋の中で、ベトナム兵士に銃口を突きつけられながらロシアン・ルーレットを強制されますが、銃を奪い取って反撃し脱出に成功します。脱出する途中、ニックはヘリコプターに救出されますが、スティーヴンは足を負傷し、マイケルが担いで帰還します。その後マイケルは無事帰国。ステーヴンも帰国しますが、足は失われます。ニックはサイゴンに残り、サイゴンの闇社会に於いて、今度は自らの意志で大金をかけてロシアン・ルーレットをやるようになり、その金をスティーヴンに送金します。それに気付いたマイケルはニックを連れ戻しにサイゴンに向かいますが、そのマイケルの目前で自らの手から撃ちだされた銃弾がニックの頭部を貫通します。



 ディア・ハンターというタイトルからして「狩」がテーマの映画なのかとか、勝手に想像していましたが、狩の方は本題とあまり関係ないようで、おそらく「故郷での狩仲間」と言う意味でこのタイトルが付けられているようです。その代わりこの映画で最も大きな意味合いを持つのが「ロシアン・ルーレット」で、最初は見る人の心も凍らせるほどの恐怖として描かれますが、最後は自らの意志で行うというシュールなエンディングとなっています。比較的、娯楽的な要素は薄いと思われますが、かと言って単純な反戦映画でもなさそうです。確かに簡単に言い表すことの難しい映画と言えると思います。



 ベトコン(ベトナム解放民族戦線)兵士による残虐な行為を描いたことに対しては、その後ベトナム側から反発もあったようで、もちろん私にはそのような行為が行われたかどうかなどということはわかりませんが、戦争というのはそういったこともあり得る状況にさせてしまうのは確かなのでしょう。またそうした残虐さや、恐怖を描いた映画のもう一つのテーマは若者達の極限状態の中での友情ということになるのかも知れません。日本の映画などで戦争がテーマになる場合は戦争を絶対的な「悪」として描くことが多く、この映画もそれに近いとは思いますが、ニュアンスはやはり多少違うでしょう。



 テーマ曲となった「カヴァティーナ」はもともとはこの映画とは関係ない曲だったようで、この映画の音楽を担当することになったギタリストのジョン・ウィリアムスが、彼の友人でもあったスタンリー・マイヤーズの作曲のこの曲がこの映画に合うと考え、この曲を使用したということのようです。普通私たちはこの曲をギター独奏で弾きますが、この映画ではメロディーと伴奏のアルペジオを別録りし、さらに弦などを加えた、いわゆる「オーヴァー・ダビング」の形になっています。そうした関係もあって、ちょっと聴くと簡単そうでも、独奏で弾くと結構難しい曲になるわけです。また多彩にコードが変化し、それがこの曲の持ち味にも、また難しさの原因にもなっています。



 この曲はこの映画の冒頭とエンディングで流れ、その他に映画の後半に3回くらい出てきます。他に別な楽器などで断片的にも現われます。メイン・テーマですからそれなりの回数登場するのは当然ですが、3時間の映画とするとそれほど頻繁に現われるといった感じでもありません。またこの曲は、過酷な戦争のイメージとは全く似合わないたいへん美しい曲で、なぜこの曲がこの映画のテーマ曲なかと不思議な気もしますが、もしかしたらこの若者達の心の優しさを描いていて、この映画の核心とも無関係ではないのかも知れません。



 長くなりましたが、やはり映画は見てみないとわかりませんね(誰かのセリフみたいですが)。

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