中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

今日ひたちなか市アコラで北口功さんのリサイタルを聴きました。予定されたプログラムは以下のとおりです。


使用楽器 : マルセル・バルベロ・イーホ [Marcelo Barbero Hijo 1991]

  ・ソル/第七幻想曲

  ・シューベルト/セレナーデ(メルツ編曲)

  ・モンポウ/「コンポステラ組曲」よりプレリュード

  ・バッハ/「無伴奏ヴァイオリンパルティータ第1番」より
        テンポ・ディ・ボレアとドゥーブル


使用楽器 : 松村雅宣 [Masanobu Matsumura 2000]

  ・タレガ/涙  アデリータ

  ・アルベニス/アストゥリアス(北口編曲)

  ・ヴィラロボス/プレリュード第1番

        休憩

  ・ヴィラロボス/ショーロ第1番

  ・武満徹編曲/ロンドンデリーの歌

  ・バリオス/フリアフロリダ
          ディノーラ
          クリスマスの歌


使用楽器 : アルカンヘル・フェルナンデス [Arcangel Fernandez 2007]

  ・シューマン/トロイメライ(バリオス編曲)

  ・アルベニス/セビーリャ(リョベート編曲)
      


 上記のように3台の楽器を使用してのコンサートで、サロン・コンサートの域を超えたボリュームのプリグラムです。コンサートの前半で会場内で具合が悪くなった方がいて、一時騒然となりましたが、とりあえず大事はなかったようです。そうした関係で、バッハの「テンポ・デ・ボレア」の前にバッハの「ロンド風ガヴォット」が追加されました。


 冒頭からソルの大曲で、とても力強い演奏でした。間近で聴いたせいでしょうか、以前聴いた時よりもいっそうパワー・アップして聴こえました。メルツ編のシューベルトの「セレナーデ」は、リスト編を基にしたというかなり難しいアレンジですが、それを感じさせない演奏でした。バッハの「テンポ・デ・ボレア」と「ドゥーブル」はかなり速いテンポで、これも力強く演奏され、積極的を通り越して「超攻撃的」とでも呼びたくなるような演奏で、聴いていて興奮を覚えるものでした。


 「北口編」とされた「アストゥリアス」は既存のアレンジとは全く違うもので、強いて共通点といえばホ短調であることくらいかも知れません。アルベニスの原曲の譜面を基に、北口さん自身の考えに従って一から編曲したものと考えられます。主部の16部音符が連続するところは、原曲どおりスタカートで演奏しています。私も試みてみたのですが、これが意外と難しく、すべての音を同じように切るのは簡単ではなく、また左手を浮かしながら弾かないといけないので、どうしても細かいミスが出やすくなります。そういったわけで私の場合は断念し、従来どおりの弾き方にしてしまいました。北口さんはこれを何の問題もなくやっています。


 細部を挙げればきりがないのですが、北口さんのアレンジは従来のアレンジとは異なり、原曲にかなり近いものになっています。その中でも私が特に気になったのは、前に書いた本来低音が「ラ♯」(ギターのアレンジで)になるところです。普通のギターのアレンジではここは8フレット・セーハで、低音が「ド」になっているところです。ここを原曲に忠実に「ラ#」にするととても難しくなってしまい、普通「ド」で代用しています。確かに弾きやすく、またちょっと聴いた感じでは響きに違和感もないのですが(きれいに響きすぎ?)、こうするとロマン派の音楽ではあってはならない「連続8度」が生じてしまいます。前にも言いましたが、この曲は一見典型的なスペイン音楽のようですが、実際は完全に古典的な和声法(機能和声)に従って書かれています。そうしたわけで、本来はこのようなアレンジはよくないのですが、私の場合はやはり技術的な関係上やむを得ず従来の方法に従っています。


 北口さんの場合は低音を「ミ」にしているようですが、聴いた感じでは「ラ#」が目立つように演奏していました。たいへん巧妙な方法だと思いました。セゴビアは確かに「ラ#」にしていますが、そのかわりその部分でテンポを落としています。要する北口さんはテンポを落とさず、なおかつ連続8度をさけ、結果原曲に近い響きを出していました。


 ちょっと細部にこだわりすぎたかも知れません。北口さんのコンサートは私もこれまでも何度か聴いていて、その度にとても気持ちのこもったコンサートだと感じていましたが、今回は、さらに意志の強さみたいなものを感じました。その穏やかな語り口調とは裏腹に、とても力強く、情熱的でエネルギッシュなコンサートだったと思います。なんといっても一回一回のコンサートにかける意気込みを感じました。


 アンコール曲としてバリオスの「森に夢見る」が演奏されました。北口さんの得意なレパートリーの一つだと思います。
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