クラシック音楽 = 楽譜を基にした音楽
最近のギターのレパートリーでは、クラシック音楽とポピュラー音楽の垣根がずいぶんと低くなってきました。
クラシック・ギターのレパートリーでもポピュラー系のリズムやコードを使った曲が多くなり、人気も高まっています。クラシック音楽、あるいはポピュラー音楽と言っても音楽には違いないので、それらにはっきりとした線を引くのは難しいことなのですが、その難しいことをあえて行うなら、「クラシック音楽」とは「楽譜を基にした音楽」と言えるかも知れません。
新しくても「古典音楽」?
クラシック音楽と言っても決して古い作品だけを対象にしているわけではなく、「新しく作曲されたクラシック音楽」というのもあります。現在でもクラシック音楽の作曲家という職業の人もいるわけです(ただし職業として成り立っている人はごく少数と言われています)。しかし何といってもクラシック音楽では、演奏されるほとんどの曲は過去の作曲家の作品で、同時代の作品、つまり現在生存している人の作品を演奏することは決して多くはありません。
現代音楽では客が入らない
過去において、すなわち19世紀初頭くらいまではクラシック音楽(このような呼び方はありませんでしたが)といえど、演奏される曲はほとんどが同時代の作品でしたが、19世紀の中頃からベートーヴェンや、ハイドン、モーツアルト、バッハなどの過去の大家の作品を盛んに演奏するようになり、20世紀になってそうしたことがいっそう顕著になりました。そして現在ではご承知のとおりクラシックのコンサートではほとんどの曲目が過去の作品となっていて、時折現代音楽のコンサートや現代音楽を含むコンサートなどがありますが、その頻度や人気の点では圧倒的に過去の大家の作品のほうが上回っています。
楽譜しかない
過去の作曲家の残した音楽作品は、当然ながら楽譜として残されているわけで、過去の音楽を再現するということは、すなわち残された楽譜を読んで、演奏するということになります。情報としては文章として書かれたものなどもあるとは思いますが、実際に演奏するとなれば、仮にそれが不完全なものであったとしても、その楽譜を基にして演奏する以外にありません。といったようにクラシック音楽とは「過去の作曲家が残した楽譜を、音に再現するもの」と言うことが出来ると思います。
習性
クラシックの音楽家にそうした考えが定着すると、仮に同時代の作品であったとしても、同様にその作曲家の書いた楽譜を基に演奏することになります。作曲家のほうも曲を作るということは、すなわち楽譜を書くということで、演奏者に直接会って情報を伝えることが出来たとしても、演奏に必要な情報はすべて楽譜に書き入れることになります。つまり仮にその両者が時代的に遠く離れていたとしても、また非常に緊密な関係だったとしても、クラシック音楽においては、作曲者と演奏者は常に楽譜を通じて情報のやりとりをするわけです。
同じ楽譜でも
楽器店の楽譜棚にはクラシック関係の譜面、すなわちベートーヴェンやモーツアルトのオーケストラ・スコアやピアノ譜などの他に、最新のヒット曲や、人気アーティストの譜面も置かれています。しかしこの両者は根本的なところで違いがあります。モーツアルトやベートヴェンの譜面は(若干修正されたりすることもありますが)紛れもなくその作曲家本人が書いたもの。一方、最新のヒット曲については、曲そのものは、そのアーティスト(作詞、作曲、演奏をすべて兼ねていることが多いですが)が作曲したとしても、その棚に置かれている「楽譜」そのものは作曲者自身が書いたものとは限らず、実際には別の人が、そのアーティストが演奏したCDなどからいわゆる「耳コピー」をして出版したものが多いようです。こうした譜面は一般に「コピー譜」と呼ばれています。
音楽は現場で起こる
ポピュラー音楽に於いても楽譜に書いて作曲したり、楽譜を見ながら演奏したりはするでしょうが、クラシック音楽の場合とは意味合いはかなり異なると思います。CDの製作現場や、コンサートのリハーサルの様子などについてはよくわかりませんが、少なくとも演奏される音楽のすべてが紙に書き表されているといったことはあまりないのではないかと思います。ポピュラー系のミュージシャンは、音楽の勉強にしても、楽譜を読むことからではなく、優れたアーティストなどの演奏をコピーすることから始まると言われ、演奏技術や理論も、多くの場合コピーすることから身に着けているのでしょう。
深い仲
楽譜が誕生した最も大きな理由としては、「記憶が失われないため」ということになると思いますが、ポピュラー音楽についてはレコードやCDなどに直接音で記録されるため、そういった点では楽譜が絶対必要ということにはなりません。クラシック音楽は楽譜と密接な関係にありますが、ポピュラー音楽の場合はレコードなどの録音媒体、あるいはラジオや、テレビといったマス・メディアと深い関係があると言えるでしょう。
おまけ ・・・・バリオス、リョベット、ヴィラ・ロボス、タレガ
・・・・・・若干脇道ですが、同じクラシック音楽でも、クラシック・ギターに関しては、音楽的情報として、楽譜以外に、作曲者自身が残したレコードなどもあります。特にバリオスなどは自身が優れたギタリストだったので、特に重要です。ただ、音質は同時代のセゴビアの録音などと比べるとかなり悪いもので、曲によってはノイズの彼方にかすかにギターの音が聴こえるといった感じのものもあります。また残された楽譜とレコードで違いのあるものも多く、そんな場合はかえって困ってしまいます(特に「ワルツ第3番」など)。最近の傾向としては演奏の方を重要視しているギタリストが多いようです。
ヴィラ・ロボスも「前奏曲第1番」を録音していますが、リピートの仕方などが現在の譜面と違っていて、演奏の方が長くなっています。そのせいかどうか、SP盤の制限時間に収まりきらず、途中で終わってしまっています。リョベットの録音もあり、入手可能だと思います(もちろんCDで)。音質はバリオスよりは聴きやすいです。また現代ギター誌の記事によればタレガの残した演奏もあるそうです。曲目は「マリーア」だったと思いますが、ある収集家が持っているもので、一般には手に入らないようです。これが出回るようになるとタレガのイメージも変わるかも知れません。
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