中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

 前回はちょっと抽象的な話になってしまいましたが、今回はもう少し具体的に話を進めたいと思います。楽譜といっても時代により、また作曲者やジャンルなどにより様々で、ほとんどメモ書き程度のものから、非常に詳しく、書かれているものまであります。今日の私たちが見ているようなト音記号とヘ音記号を中心とした楽譜はだいたいバロック時代くらいからのようですが、それでもバロック時代の作品を演奏するには私たちが普通持っている楽譜を読むための知識だけでは不十分で、当時の音楽一般や演奏法、特に装飾音などに関する知識が必要と言われています。しかしそのようなことについて私が詳しく話せる訳もなく、そうした事柄については現代ギター社から出ている「正しい楽譜の読み方 = 大島富士子著」や、最近出版されたもので「トン・コープマンのバロック音楽講義」などを読んでいただければと思います。どちらもそれほど厚いものではありません。
  

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 そうした難しい話は置いておいて、ここではギターの譜面に限定し、まず、私たちにとっては日常的で、身近な問題ではあるが、あまり語られない問題、ひょっとしたらギターを弾く人にとっては当たり前すぎて議論にならない問題ではあるが、しかし確認しておかなければならない問題などについての話から始めようと思います。
 

譜例 1

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弾き語りの譜面


 最初の譜面(譜例1)は尾崎豊の「I LOVE YOU」のギターの弾き語りの譜面です。ちょっと古い曲ですが、今でも人気のある曲ですね。市販されているこうした楽譜は、普通、五線譜の他にタブ譜が付き、さらにコード・ネームが付いています。というより、たいていの人はコード・ネーム、またはタブ譜を見てギターを弾き、五線譜の方が「オマケ」というところで、五線譜の付いてないものもあるでしょう。


譜例 2

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 ちょっと見にくいと思いますので五線譜の部分を書き直してみました(譜例2)。別になんていうことのない普通のアルペジオの譜面で、多少ギターが弾ければ特に問題なく弾けると思いますし、大部分の人はこの譜面に特に疑問は持たないのではないかと思います。しかし私たちはこれを意識的しろ、無意識にしろ、正確に譜面どおりに弾くことはありません。もしこのようにパソコンに楽譜を打ち込んで音を鳴らすと意外なことが起きます。お分かりとは思いますが、この楽譜では音が1個1個ばらばらに聴こえてきて、アルペジオには聴こえないのです。実はこの譜面は、本来は「譜例3」のように書かなければなりません。これが私たちがアルペジオを弾いている時の正しい楽譜なのです。



譜例 3

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いつもこんな書き方をされたらたまらない

 でもどうです、これ、くどいでしょう? いつもこんな書き方をしていたら書くほうも、弾くほうもたまりません。そこで普通「譜例2」のような省略した書き方をするわけです。このように書いてもアルペジオの場合、普通左手の方は押さえたまま弾きますから(ギターのレッスンの時にそう言われていると思います)、当然音は重なって聴こえるわけです。弾き語りの場合、ほとんどの人は

 ギター = 伴奏 = コード(和音) = アルペジオ = 押さえたまま弾く

といった考えがあるので、「譜例2」のような譜面を見ても、特に意識をせずとも同じコードが続くところでは、押さえたまま弾き、ちゃんと和音になるように弾いているのです。一つ一つの指を放し、音を切って弾くほうがかえって難しいでしょう。この譜面などの場合、五線譜のほうはあまり重要でないので、省略した書き方をしているということは確かに出来ますが、クラシックの曲と言えども同じような書き方はよくあります。



譜例 4

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クラシックの曲でもだいたい同じ

 もっとも、クラシックギターの場合では「譜例4」のように、低音だけ正しい音価、つまり正しい長さで書かれることが多いようです。もちろんこれでも正確ではないのですが、低音の長さを正しく書くことにより、「これはアルペジオだから押さえたまま弾き、すべての音を響かせる」とうことを暗示し、他の音も伸ばして弾くことを示しているわけです。つまり暗黙の了承というか、ギタリストの常識といったものを前提に楽譜が書かれていると言えるでしょう。



テンションを意識した?

 ・・・・ちょっと余談になりますが、この譜面(譜例2)、4小節目の3拍目の「ファ#」だけは2分音符、つまり2声部に分け、正しい長さで書かれています。他の音符が省略して書かれているのに、この音符だけ正しい長さで書かれているのはちょっと違和感もありますが、やはりこの部分はこの楽譜を書いた人(アレンジャー?)がなんらかの意識をしたところなのだろうと思います。この小節は3拍目からコードが「E7」に変わるので、確かに低音が必要なのですが、でも他の音符と同じように8分音符的な書き方もできたはずです。 私の勝手な想像になりますが、この「ファ#」というのは楽譜に書かれている「E7」のコードから外れた音で、この「ファ#」が入ることでコードが「E7」ではなく「E9」となります。このコードは「E7」よりもずっと不協和音度が高く、ポピュラー音楽では「テンション・コード」と言われています。オリジナルがどうだったのかはよくわかりませんが、少なくともこの譜面を書いた人はここが「テンション・コード」になっている、あるいはテンションをかけることを意識したのは確かなのではと思います。そんな気持ちの表れが、ぽつんと目立つ2分音符になっているのではと思います。 ・・・・・ちょっと考えすぎかな。


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