中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

グレー 004


バリオスの「ワルツ第3番」

 バリオスの「ワルツ第3番」の話は以前にも話しましたが、比較的重要なところと思いますので、改めて書いておきます。この「ワルツ第3番」は、A-B-A-C-A という形になっていますが、上の譜はその「B」の部分です。

 線で示した「シ」と「ソ」の重音には特に変化記号が付いていないので、譜面どおりだと、この「シ」は♭ということになります。しかし前にCD紹介のところで紹介したオランダのギタリスト、エンノ・フォルホーストはナチュラルで弾いていました。



一件落着?

 バリオスの自演のCDも聴きなおしてみましたが、ノイズの彼方から聞こえてくる音はどうやらナチュラルのようです。バリオスの自筆譜も見る機会があり、確かめてみると、確かにナチュラル記号は付いていないのですが、幸いに運指が付いていて、その運指からすると明らかにナチュラル、つまり「シ♭」だと弾くことが出来ない運指になっています。

 また和声的に考えても、次がハ長調の主和音、つまりC-メジャー・コードになっているので、ここはハ長調の属和音、つまりG7になっていなければなりません。したがって「シ」はナチュラルでなければならないということになります。

 以上のことからこの「シ」にはナチュラル記号が脱落していると結論してよさそうです。つまり完全な「クロ」ということになります。今のところCDなどではこのフォルホースト以外のギタリストはすべて「シ♭」で弾いていますが、今後はナチュラルで弾くギタリストも多くなってくると思います。私も今後この曲を弾く時には、ナチュラルで弾くことにします。




ジュリアーニの「大序曲」

 次の曲はジュリアーニの「大序曲」からですが、譜面はその展開部、つまり曲の中ほどのハ長調になった部分です。この譜面の初版や自筆譜などは見たことがないのですが、現在市販されているどの譜面も、またいろいろなギタリストの演奏も上の譜面のようになっていますから、おそらく初版もこのようになっていたのではないかと思います。

 問題の音は、線で示した「ソ」の音なのですが、私がこの曲を弾き始めた頃(20代)、ここは明らかな間違い(音符が5線上で1段ずれる、つまり3度間違えることはよくあるので)と思い、ずっと「シ」に直して弾いていました。というのも譜面どおりだと、とても変な音程の動き(4度-8度)になるからです。

 しかし一昨年、リサイタルのために練習している時、改めていろいろなギタリストの演奏を聴いてみたのですが、私の聴いた限りでは、すべてのギタリストは譜面どおり「ソ」で弾いていて、私のように「シ」で弾いている人はいません。



空気読みすぎ?

 どうしようかと悩んだのですが、私だけが正しいと言い切る自身もなく、また自分だけが突出したことをする勇気もなく、若干割り切れないものも感じつつ、結局は他のギタリストと同様に「ソ」で演奏しました。皆さんはどう考えますか。 ・・・・・正真正銘の「グレー」といったところか。
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