中村俊三 ブログ

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 ヴィラ・ロボスのCDの話ですが、今回は7枚組の「ショールス集、ブラジル風バッハ集、ギター独奏曲集」の紹介をします。

ヴィラ・ロボス

John Neshling & Roberto Minczuk 指揮  Sao Pauro Synphony Orchestra 他


 このアルバムに収められた作品は、数多いヴィラ・ロボスの作品中でも代表作と言えるものでしょう。12曲の「ショールス」。9曲の「ブラジル風バッハ」。ギター独奏曲集(5つのショーロ、前奏曲集、練習曲集)。他に「ショールスのためのイントロダクション」、「ヴァイオリンとチェロのための二つのショーロ」、「ショールス形式の五重奏曲」が7枚のCDに収められています。「シーョルス」は全部で14曲作曲されたそうですが、第13、14番は楽譜が紛失ということで、このアルバムでは1番から12番までとなっています。



ショールス第1番~第12番とイントロダクション

 12のショールス、およびそのイントロダクションの作曲時期は1920年~1929年で、パリ留学前から留学中にかけての時期です。第1番はご存知のとおり、ギター独奏曲ですが、同じ「ショールス」と言っても楽器編成も、長さもまちまちです。一応以下に作曲年と楽器編成を記しておきます(作曲年は資料によって若干異なります)。


イントロダクション(1929年) : ギターとオーケストラ

第1番(1920年)  ギター独奏曲

第2番(1924年)  フルートとクラリネット

第3番(1925年)  男声合唱と管楽器

第4番(1926年)  ホルン3、トロンボーン

第5番(1925年)  ピアノ独奏曲

第6番(1926年)  オーケストラ

第7番(1924年)  管楽器およびヴァイオリン、チェロ

第8番(1925年)  2台のピアノ、オーケストラ

第9番(1929年)  オーケストラ

第10番(1926年)  混声合唱とオーケストラ

第11番(1928年)  ピアノとオーケストラ

第12番(1929年)  オーケストラ


 曲の長さは本当にまちまちで、このアルバムによると、最も短いのはフルートとクラリネットによる「第2番」で2分42秒。最も長いのがピアノとオーケストラによる「第11番」で、なんと65分52秒もあり、平均的なピアノ協奏曲の2倍の長さがあります。

 と言ったように同じ「ショールス」の名が付いていても、それぞれの曲はかなり違うものになっています。因みに、「ショールス」とは、単数では「ショーロ」で、ブラジルの民俗的なバンド、およびそのバンドが演奏する曲のことを意味します。ここでは「ブラジルの民俗的な音楽」といった意味に使われているようです。



ショールスのためのイントロダクション

 「イントロダクション」は1929年、おそらくすべてのショールスが出来てから作曲されたと思いますが、ここでもギターが用いられており、第1番同様ヴィラ・ロボスのギターという楽器へのこだわりが感じ取れます。

 この「イントロダクション」を聴くと、ギター愛好者なら誰しもがあの「ギター協奏曲」を思い浮かべると思います。確かにギター協奏曲で出てきたようなパッセージが時々出てきます。ギター協奏曲のほうが後から作曲されていますから(1951年)、ギター協奏曲を作曲する時にこの「イントロダクション」を基に、あるいは参考にしたようです。

 ただ協奏曲のようにギターとオーケストラら丁々発止にやり合うわけではなく、ギターが演奏している時には、オーケストラは沈黙しているか、弱音で演奏している形になり、オーケストラがフォルテ演奏している時には、ギターは沈黙しています。

 私自身はこの曲をこのアルバムで知り、始めて聴きましたが、ヴィラ・ロボスにこんなギターとオーケストラのための曲があったとはちょっと驚きです、いや知らなかったことをはじるべきかも知れません。”秘曲”といえるでしょうか。

 音楽全体に見ると、作曲された年代からすると、特に前衛的ではなく、技法的にはロマン派の音楽の延長といった感じもありますが、ニュアンス的にはもちろんドイツ・ロマン派の音楽からは遠いところにあります。よく聴くと、後続のショールスに出てくるメロディの断片などが織り込まれているようです。このCDでの演奏時間は13分32秒となっています。



ショールス第1番

 この曲については、皆さんもよくご存知と思いますが、1920年に作曲され、ヴィラ・ロボスのギター曲としては比較的早い時期のものと言えます。ショーロには特に決まったリズムなどはないのですが、2拍子で、付点音符やシンコペーションを伴う場合が多いようです。ボサ・ノヴァの前身に当たるともいえるかも知れません。この曲もそういったリズムで出来ていますが、楽譜にはフェルマータやラレンタンドなどが目に付き、テンポの変化が要求されています。


 このアルバムで演奏しているのは、Fabio Zanon というギタリストですが、1996年にタレガ国際ギターコンクールと、GFA国際ギターコンクール(USA)に優勝していると記されています。Zanonの演奏は適度なテンポ、およびテンポの変化、また落ち着いたギターの音質で、ヴィラ・ロボスの譜面をよく読み込んでの演奏といった感じです。低高音のバランスもたいへんよく、しっくりと違和感のない演奏です。



ショールス第2番

 「ショールス第2番」は前述のとおりフルートとクラリネットのための3分にも満たない小品ですが、ピアソラのタンゴなどでもよく出てくるシンコペーション的なリズムが使われています。タンゴとショーロは近い関係にあるのでしょう。



ショールス第3番

 「ショールス第3番」は”Pica Pau”(「きつつき」という意味らしい)と題されたこれも3分余りの短い曲ですが、編成は男性合唱とクラリネット、アルト・サキソフォーン、トロンボーン、バスーン、3つのホルン、となっています。どういった内容が歌われているのかはわかりませんが、雰囲気としてはストラヴィンスキーの「狐」に似た感じがあります(名前が似ているだけ?)。
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