中村俊三 ブログ

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ブラジル風バッハ

 今回からは「ショールス集」と並ぶヴィラ・ロボスの代表作「ブラジル風バッハ集」の紹介です。この作品集は漠然と聴いた感じからするとあまりバッハ風には聴こえません。具体的にバッハの作品からの引用といったものはなさそうです。しかしそれぞれ曲は「プレリュード」とか「フーガ」とか「トッカータ」と言ったような曲名になっていて、バロック時代の組曲のようになっています。

 作曲年代は1930~1941年で、ちょうどショールス集が作曲し終わってから書かれていて、ショールス集の続編のようになっています。全部で9曲あり、編成が様々なのはショールス集と同じですが、曲の長さは8分~27分で、ショールス集よりばらつきは少なくなっています。またそれぞれが2~4曲の楽章を持ち、統一感もあります。ヴィラ・ロボスの円熟期に書かれた作品と言ってよいでしょう。



ブラジル風バッハ第1番

 この「第1番」は、「第5番」同様に8本のチェロのために書かれています(「第5番」の場合はソプラノが加わる)。「序曲」、「プレリュード」、「フーガ」の3曲からなりますが、なぜか「序曲」と「プレリュード」という似たような曲が両方入っています。

 「序曲」はリズムの刻みで始まりますが、ショールス集の場合と同様、シンコペーションを含む、ラテン系のリズムになっています。低音域から始まるメロディは若干悲壮感を漂わせるロマンティックなものです。確かにラテン系のリズムとロマンティックなメロディの組み合わせといった感じです。

 「プレリュード」はちょっとバロック時代の合奏協奏曲風の感じで始まります。チェロをかなり高い音域まで使っているので、聴いているだけでは普通の弦楽合奏の曲のようです。チェロでこれだけ高い音域で合奏するのは決して簡単ではないと思いますが、この演奏ではもちろん音程の不安定さなどは感じられません。演奏は「サンパウロ交響楽団」ということですが、かなり技術は高いのでしょう。

 「フーガ」の主題は、シンコペーションを使ったブラジル的なものです。同じフーガといってもバッハのフーガとはかなり違う感じはしますが、フーガとしての基本的な作曲法は同じなのでしょう。確かに「ブラジル風バッハ」といった感じです。
 


ブラジル風バッハ第2番

 「第2番」はオーケストラのための曲で、「プレリュード」、「アリア」、「ダンサ」、「トッカータ」の4曲からなります。

 「プレリュード」はロマンテッィクな感じの曲ですが、冒頭でメロディがサキソフォーンによって歌われるので、近代的な曲にも聴こえます。そのメロディはチェロへと受け継がれてゆきます。

 「アリア」も前の曲を受け継いだ雰囲気で始まりますが、メロディはまずチェロによって歌われます。フォーレとかサンサーンスとかいった感じでしょうか。しばらくするとブラジル風のリズムが現れ、サキソフォーンも登場します。全体に美しくメロディを歌わせる曲といった感じです(これまで聴いてきた曲の大半がそうですが)。

 ここまではあまりブラジル風というよりヨーロッパ風だったのですが、この「ダンサ」は文字通りブラジル的な踊りの曲になっています。ダンスの前後に歌われるのはトロンボーンでしょうか、軽快な曲です。

 「トッカータ」は「カイピラの小さな汽車」といった表題が付けられていますが、確かに汽車の走る様子などを音にした感じの曲で、汽車の音と一緒に流れてくるメロディも親しみやすいものです。この「第2番」はこの「ブラジル風バッハ集」の中でもよく演奏される曲だということだそうです。

 この4つの楽章を通じて、音楽がヨーロッパから南米へと移って行く感じなのでしょう。確かにヴィラ・ロボス的な部分がよく現れている曲だと思います。 



ブラジル風バッハ第3番

 「第3番」はピアノとオーケストラのための曲で、「プレリュード」、「ファンタジア」、「アリア」、「トッカータ」の4曲からなります。

 「プレリュード」はロマンティックですが、ちょっとジャズぽくも聴こえます、ラフマニノフ風といったところでしょうか。ゆったりとした弦の旋律にピアノが下行音形を繰り返します。以下オーケストラが旋律を奏で、ピアノが装飾的に加わるといった感じで曲が進みます。

 「ファンタジア」は、前の楽章より若干活発で、劇的な感じになっています(ロマン派風なのは同じ)。中間部では静かな歌となり、最後にまた活発な音楽となりますが、ポールモーリアなどの演奏で有名な「シバの女王」を思わせるようなパッセージが現れます。

 「アリア」は曲名どおり静かな歌ですが、ピアノが一定のリズムを刻みながら演奏されるところなどはちょっとピアソラぽくもあります。後半では付点音符(二重付点?)を多用した部分もあらわれ、なかなか聴き応えのある曲です。

 「トッカータ」は”Picapau”と題されています。この言葉どこかで聴いたことがあると思ったら、「ショールス第3番」にも付いていました。”きつつき”の意味だそうです。この楽章は前の3つの楽章から一転して、ロマン派風の音楽ではなく、不協和音的で複雑な響き、エネルギッシュなリズムとテンポ、といった感じで、近代的、あるいはストラヴィンスキー的な華麗な音楽になっています。「ショールス第3番」ほど直接”きつつき”を思わせる感じではありませんが、なかなか面白い曲です。
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