中村俊三 ブログ

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アルベニスの音楽

 アルベニスの曲をある程度知っている人でしたら、たぶん次のようなイメージがあると思います。

      アルベニス=スペインを代表する音楽家
      スペインの音楽=フラメンコ
  よって、アルベニスの音楽=フラメンコ的

 確かにアルベニスの曲は「グラナダ」とか「セビーリャ」とかスペインの地名が付いた曲が多いですし、この「アストゥリアス」にしても確かにフラメンコぽいところがあります。しかし作曲技法だけをみると特にスペイン的とは言えないことが多く、どちらかといえば当事ヨーロッパ全体として一般的だった後期ロマン派の作曲技法を用いています。

フリギア調

 フラメンコの音楽の基本は「フリギア調」といって、自然音階(シャープなどの付かないもの)のうち、「ミ」を主音としたものつまり、「ミ」から始まり、「ミ」で終わるような音階を使います。


  <参考>

ハ長調の音階    「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」

ドリア調の音階   「レ」、「ミ」、「ファ」、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」、「レ」
 
フリギア調の音階  「ミ」、「ファ」、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」、「レ」、「ミ」

      *ドリア調、フリギア調などの音階を「教会旋法」という


 ホ短調に似ていますが、「ファ」にシャープが付かないのが特徴です。近くにギターがあれば弾いてみてください、普通の短調よりさらに暗い感じがすると思います。フラメンコはこの音階を基本にしているので、何か不思議な響きというか、暗さのようなものを持っています。

 音大などで学ぶ、いわゆる「和声法」は長調、短調の音階を用いた時のみ有効で、これを「機能和声」と呼んだりもしますが、他の音階、例えばこの「フリギア調」とか「ドリア調」などの「教会旋法」、あるいは「5音音階」とか、ジャズで使われる「ブルー・ノート・スケール」などの音階では厳密に言えば、この和声法は適用されません。つまり法律などでも、国が違えば変わってくるみたいなものです。

古典的和声法の拡大

 同じスペインの音楽家でもマヌエル・ファリャとかホアキン・トゥリーナなどはこの「フリギア調」を使うことが多く、和音も古典的、あるいはロマン派的なものではなく、いわゆる「印象派的」なのもになっています。そういえば有名なビゼーのカルメンの「アラゴネーズ」の主旋律も「フリギア調」で出来ています。

 それに比べ、アルベニスの音楽はスペイン的要素を取り入れながらも、基本的には古典的作曲法を忠実に守っています。確かに「アストゥリアス」にはフラメンコ的な感じがあり、おそらく冒頭の部分も当時行われていたフラメンコの演奏から引用した可能性もあります。しかし作曲技法的には古典的和声法を遵守していて、その古典的和声法を最大限拡張することで(それをロマン派的和声法といったりもしますが)、スペイン的な響きを実現しているようです。

 アルベニスの曲でも1880年代に作曲された「セビーリャ」や「グラナダ」はリズムなどではスペイン的であっても、響きの点では後期ロマン派の感じがしますが、1890年代に作曲された「アストゥリアス」は確かにフラメンコ的というか印象派的な響きがします。これは前述のとおり、印象派的技法を用いているのではなく、古典的和声法の拡大によるものです。もっとも、それはもう「印象派の音楽」のほとんど一歩手前かも知れませんが。

タルレガとの共通点

 というようにアルベニスの音楽は「スペイン的」な香りを持ちながらも基本的には「ロマン派的」な音楽といえます。 同時代のスペインのギタリストであるタルレガも作曲に関しては、忠実にロマン派の技法を守っており、作曲法などでも共通点があるようです。また前にお話したとおり、演奏スタイルの点でも共通したもがあるようです。

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