中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

   新進演奏家 004


シューベルト(メルツ編) : 涙の賛美
メルツ : カプリッチョ、タランテラ(吟遊詩人の調べより)
      エリジー、 ハンガリー幻想曲
バッハ : 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番
コシュキン : ギターのためのソナタ


Gabriel Blanco フランス生まれ、2008年GFA優勝

 今回は2009年の1月に録音されたガブリエル・ビアンコのCDです。ビアンコは上記のとおり2008年にGFA(Guitar Foundaition of America)で優勝しています。15歳でコンサート活動を開始し、20歳でパリ・コンセルバトワールを卒業と書いてあります。生年などは書いていないので年齢などはわかりませんが、写真などからすれば20代でしょうか。

 メルツの作品で始まりますが、ビアンコの使用している楽器(グレッグ・スモールマン)は低高音ともよく響く美しい音です。確かにクリヤーによく鳴りますが、よく鳴る分だけ柔軟性、あるいは微妙なニュアンスが感じ取りにくい部分もあるかも知れません。



ルバートは音楽的要求に従って

 「エレジー」はアルペジオを奏しながら細かい音符で書かれたメロディを歌わせるという、かなり難しい曲です。そのメロディ音価を正しく弾き分けると言うことだけでも難しいのですが、メロディの音をアルペジオの中からひき立たせ、さらに歌わせるなどというこは思っている以上に難しいことです。このような曲を、指の都合とは無関係に、ただ音楽の要求する音質や音量で弾くということは、本当に高い技術を持ったギタリストしか出来ないことでしょう。

 この「エレジー」は、曲の性格上、テンポ・ルバートを多用しながら演奏していますが、細かい音符については逆に正確な音価を守って演奏しているようです。当然のことかも知れませんが、ルバートは音楽の要求に従って行っているということなのでしょう。

 「ハンガリー幻想曲」のチャルダッシュの部分は普通イン・テンポで演奏されるところですが、ここも柔軟なテンポで演奏しています。



無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番

 バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番」は「アダージョ」、「フーガ」、「ラルゴ」、「アレグロ・アッサイ」の4つの楽章からなります。バッハの組曲などの中でも、最近のギタリストにはこれらの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」は人気が高いようです。

 この曲は原曲はハ長調で、ここでもそのハ長調で演奏しています。バッハのヴァイオリンの曲をギターで弾く場合は、一般に移調したり、低音などを付け加えたりしますが、この曲の場合は原曲にすでに和音がかなり付けられており、また調的にもギターで弾きやすいものになっているので、多くのギタリストは特に編曲などはせず、ヴァイオリンの譜面をそのまま演奏しています。このビアンコの演奏もそのように演奏しているようです。



広いエリアで勝負する

 最初の「アダージョ」は全曲ほとんど付点音符の反復によるもので、「アダージョ」の指定のわりには、やや速めのテンポで弾くギタリストが多い中、ビアンコは指示通りとも言える、遅めのテンポで演奏しています。部分、部分には特に表情などは付けていませんが、和声的な流れに従いピアニッシモからフォルテまでクレシェンドするなど、大きな流れで音楽を表現しています。

 サッカーに例えれば、華麗な足技とかショート・パスを繋ぐサッカーではなく、ロング・パスによるサイド・チェンジでピッチを広く利用するサッカーといったところでしょうか・・・・  楽譜にないことはあまりしていないのですが、最後の属和音をトリルで装飾しているのはなかなか効果的、フーガへの期待感が強まります。



長大なフーガ

 フーガは354小節にわたる長大なもので、おそらくギターで演奏するバッハのフーガの中では最も長い曲だと思います。4つの対位法的な部分と3つの挿入句からなりますが、それぞれが充実したものです。3つ目の対位法的な部分では主題が反転されます。各声部の流れがクリヤーに聴こえるなどということは、このシリーズのギタリストたちには当たり前のことかも。



本当はギターの曲では?

 前述のとおりヴァイオリンの譜面をそのままギターで弾いている感じなのですが、その楽譜を見ながら聴いていると、この曲元々ギターのために書かれた曲なのではと思うほど自然です。これを基本的には単旋律の楽器であるヴァイオリンに弾かせるほうがずっと無理があるのではと感じます。特にこのフーガなど、鍵盤楽器では音が少な過ぎ、ヴァイオリンでは音が多すぎ、結局ギターしかないのでは。当時ならリュートということになるのでしょうが、でもやはりギターかな・・・・



全曲を通じて適正なテンポ

 「ラルゴ」はいわゆる「癒し系」の曲というところですが、テレビCMでも聴こえてくる曲です。こちらも各声部をクリヤーに美しく弾いていますが、欲をいえばもう少し柔軟性とか、”色気”があっても・・・・

 終曲の「アレグロ・アッサイ」は、指周りに自信のあるギタリストだったら、当然のごとくかなりのテンポで弾くところなのでしょうが、ここでは適正なテンポが守られていて、音楽を損なわれることはありません。適正なテンポというのは、このソナタ全体に言えることです。



アッシャー・ワルツで知られた

 最後はニキタ・コシュキンの「ギターのためのソナタ」ですが、コシュキンは「アッシャー・ワルツ」とか「王子のおもちゃ」などで知られるロシアの作曲家です。この曲は「ソナタ」となっているだけに「アッシャー・ワルツ」などよりはシリアスな曲ですが、現代音楽としては聴きやすい曲でしょう。

 第1楽章は「ファーファ#-ソ#ーソーシ♭」といった5つの音を主要なモチーフにしているようですが、後半には「シ」が連打され、この「シ」がこの楽章の中で重要な音になっているのでしょう。

 第2楽章は「アダージョ・モルトー」となっていますが、短い音符で書かれているのか、あまり遅い楽章と言った感じではなく、一定のスピードで進んでゆく感じです。この楽章の後半では、「シ」の変わりに「ラ」が連打されます。

 第3楽章は無窮動で舞曲的(2拍子?)ですが、中間部にはハーモニックスで美しく奏でる部分があります。後半では第1楽章のモチーフも再現されますが、連打する音も再び「シ」に戻っています。最後もそのモチーフで閉めています。

 楽器に関しては、前述のとおりメルツの曲では若干柔軟性を欠く向きも感じられましたが、この曲では輪郭のはっきりしたこの楽器がよく合うようです。

 
 
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