中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

   新進演奏家 006


ホアキン・ロドリーゴ : フェネラリーフェのほとり
アレキサンドル・タンスマン : スクリャービンの主題による変奏曲
ニコラス・モウ : ミュージック・オブ・メモリー
マヌエル・ポンセ : ソナタ・ロマンティカ「シューベルトを讃えて」


Macin Dylla 1976年ポーランド生まれ

 今回のCDはポーランド出身のギタリスト、マルツィン・ディラのもので、2007年にGFAで優勝しています。1976年生まれと言う事で、今年で35歳になり、若手というよりは中堅ギタリストといったところでしょうか。


フェネラリーフェのほとり

 曲目は上記のとおりですが、ロドリーゴの曲で、「フェネラリーフェ」はグラナダのアランブラ宮殿に隣接した庭園だそうで、曲のほうは旋法的(フリギア調)な「レント・エ・カンタービレ」と、フラメンコ的なホ短調の舞曲からなっています。


スクリャービンの主題による変奏曲 ~クリコヴァも弾いている

 タンスマンの「スクリャービンの主題による変奏曲」はイリーナ・クリコヴァも演奏していた曲。CDで聴き比べた感じでは、クリコヴァに比べるとこのディラの演奏は若干速め(全曲で約1分)で、、主旋律もそれ以外の音もよく通るクリヤーな音で演奏しています。強いて言えばクリコヴァの場合は歌うことに意識が強く働いて、ディラの場合は曲の構造がよくわかるように、といったところかも知れません。聴き馴染んでくると、この曲もなかなかよい曲に感じます。


ミュージック・オブ・メモリー ~メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲に因んだ曲

 ニコラス・モウ(Nicholas Maw)はイギリス生まれの作曲家で、この「ミュージック・オブ・メモリー」は1989年の作曲と記されています。4つの楽章からなる20分ほどの曲です。全体的には無調的ですが、第1楽章の途中で、」メンデルスゾーンの「弦楽四重奏曲第2番イ短調作品13」の第3楽章のインテルメッツォが、ほぼ原曲どおりに現れます。他の3つの楽章もこの「インテルメッツォ」をもとにして作曲されており、一種の変奏曲のようになっています。ロマン派の音楽と現代的な無調の音楽とが入り混じったような曲になっています。


ソナタ・ロマンティカ ~ポンセの大曲

最後はマヌエル・ポンセの「ソナタ・ロマンティカ」です。シューベルトへのオマージュとなっていますが、特にシューベルトの作品からの引用などはないようです(多分?)。4つの楽章からなり、第1楽章はショット社のセゴヴィア版では「アレグロ・モデラート」となっていますが、このCDではとなっていて、ポンセ自身の指定はこちらのようです。ディラの演奏は、まさに「Allegro non troppo,semplice」と言った感じのテンポで演奏していて、ロマン派の音楽の雰囲気が十分に醸し出されています。

 ギターという楽器はピアノなどと違い、同じ音でも弦やポジション、セーハなどの押さえ方などで音の出かたが変ってしまい、単純に同じ音量や音質で弾こうと思ってもなかなか出来ない楽器です。私などはいつもそのことで苦闘しているわけですが、このディラの演奏を聴いているとそうしたことが全く感じられず、当然のごとくそれぞれの音は必要な音量、音質で鳴っていて、あらためて技術の高さに驚かされます。


長調と短調の間をゆらゆらと揺れ動く

 第2楽章は「アンダンテ」=セゴヴィア版では「Andante espressivo」 でゆっくり歌う感じの曲ですが、長調と短調(曲全体はホ長調)が揺れ動くように交錯する感じです。それは他の楽章にも共通しますが、シューベルトの音楽からのインスピレーションなのでしょう。

 第3楽章は「モーメント・ミュージック:ヴィーヴォ」=セゴヴィア版では「Allegretto vivo」 となっていて、シューベルトの「楽興の時 作品94」に寄せた曲のようです。曲は2拍子の舞曲風に出来ていて、中間部はコラール風になっています。

 終楽章は4拍子で「アレグロ・ノン・トロッポ・エ・セリオーソ」=セゴヴィア版も同じ となっています。行進曲風に始まりますが、アルペジオのパターンが出てきたり、コラール風なったりして、難度の高い曲です。ディラは16分音符のパターンを音の響きを重ね、ピアノのペダルを使用したような感じを出しています。


指の都合など関係なく

 CD全体を聴き終えてみると、このギタリストの演奏技術が高いとか、音色が美しいなどというのは、あえて言うまでもありませんが、楽器や指の都合などに関係なく音楽的に必要な分だけ音が出ているといったように感じました。ギターではなくピアノを聴いているような感じといっても良いかもしれません。


大作曲家に因んだ、ギターのオリジナル作品

 またCD全体としてはメンデルスゾーン、シューベルト、スクリャービンといった直接ギターの作品は書いていない大作曲家に関係のある曲、しかしすべて編曲ではなくオリジナルのギター作品となっていて、そうしたコンセプトがこのCD製作の基本にあるようです。またロマン派の音楽と現代音楽の融合といったこともあるかも知れません。

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