中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

編曲

 今までどちらかと言えば、オリジナルのピアノ曲として話をしてきましたが、いかにこの曲がギター的だからといっても、ピアノ譜のままではギターで弾けません。当然ギター用に編曲された譜面を使わなければなりません、今回はその編曲についての話です。

誰の編曲?

 有名な「ギター曲」だけにいろいろな譜面が市販されていますが、そうした譜面の多くは編曲者名が書かれていなかったり、あるいはその曲集の編集者の名前になっていることが多いようです。しかしそれらの譜面をよく見ると、編曲者が違っていても内容的にはほとんど同じような譜面になっています(中間部などでは多少違いがあるものもありますが、主要部はほとんど同じです)。本当に複数の人がそれぞれ独自に編曲したのでは、こんなに近いものになるはずはありません。それらは一つの編曲譜を基にしていることが推測できます。



セゴビア編

 その「基になった」編曲が誰のもかということですが、一般的にはアンドレ・セゴビアと言われており、最近のCDなどには「セゴビア編」と記されているものが多くなっています。セゴビアがこの曲を録音したのが1951年で、最初にこの曲を編曲、演奏した可能性があります。それ以前にこの曲を弾いている人がいたかどうかは、はっきりわかりませんが、タルレガやリョベットが編曲したり、演奏したりしていないのは確かなようです。とすればこの種々のギター譜の「基になった」編曲がセゴビアのものである可能性は高いと思います。


なぜ今頃?

 ちょっと歯切れの悪い表現になってしまいましたが、確かに「セゴビア編曲のアストウリアス」の譜面はスペインの<union musical ediciones>という出版社から出ていて、GGショップなどで入手でき、私も取り寄せてみました。この譜面のコピー・ライトが1992年になっていますがこれはどうしてなのでしょうか、生前には出版されなかったのでしょうか。

 この譜面は、内容的には前述の国内で編曲者が明記されないまま出版されている多くの譜面とほぼ同じものですが、セゴビアの演奏とは若干異なる点もあります。特に37~39、42、44小節の和音が違っていますが、原曲ではここの低音は連続8度を避けるため、「ド#」、ギター譜にすれば「ラ#」になっていて、セゴビアの録音ではその意図を汲んで「ラ#」になっています。一方譜面のほうでは、より弾きやすい「ド」にしてあります。

 一方では、54、56小節の1拍目裏の低音は原曲どおりにすれば「ファ#」になるはずですが、セゴビアの演奏も譜面の方もどちらも「ソ」になっているなど、この両者は、先ほどの和音を別にすればほとんど同じといってよいでしょう。

別の人の可能性も

 またなぜこの譜面がセゴビア編だとしたら、いつ編曲され、またいつ出版されたのだろうか。私が知らないだけかも知れませんが、かつて「セゴビア編」としてこの曲の楽譜が販売されていた記憶はありません。というよりかつてこの曲はいろいろな曲集の中に、編曲者が明記されずに載っているのが当たり前のようになっていました(現在もそうかも知れませんが)。おそらくこれは日本だけのことではないと思います。いろいろ謎は深まります。

 また疑い過ぎかもしれませんが、この譜面がセゴビア以外のギタリストによる可能性も捨てきれないと思います。その根拠は先ほどの和音ですが、セゴビアはここを譜面のように弾くのは音楽的におかしいと感じたのではないかと思います。そこで弾きにくいにもかかわらず、音楽的になるようにあえて和音を変更したのではないかと思います。とすればこのような形でこの譜面をセゴビアが出版する可能性は低いかも知れません。この譜面がセゴビア演奏する以前に別のギタリストにより編曲されていて、それをセゴビアが若干変更して演奏したという可能性もあるかも知れません。


弾きやすく、よく出来ている

 今現在のほとんどのこの曲の編曲はこの「セゴビア編」の影響を受けているといってもよいでしょう。調の選択も、原曲はト短調で、ギター譜はホ短調ですが、他の調ではどうやっても弾けません。イ短調とか、あるいは変則調弦で原曲のト短調とか考えてみましたがまず無理なようです、少なくとも弾きやすくはなりません。主要部では伴奏部をアルペジオにしたり、同音の連打にしたりしていて、これは確かに他の可能性もあり、私もいろいろやってみましたが、やはりこの譜面にあるように弾くのが一番弾きやすいようです。中間部のほうは原曲と異なるところもあり、多少手直ししてもいいかなと思います。実際に多くのギタリストは何らかの変更をしています。全体的にみると、この編曲は原曲と多少異なる部分もありますが(編曲なのだから当たり前かも知れませんが)、「弾きやすさ」という点ではかなりよく出来ているといえると思います。
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