中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。


どの譜面を使えば? いろいろなギター譜の比較

 この曲にはいろいろなギターへの編曲譜が出ていますが、大雑把に言えば、もとは同じと言うことを前回言いました。しかし細かい点ではそれぞれ異なるので、今回は実際にどの譜面を使ったらよいかと言うことについてお話いたします。



セゴビア編

 まずいろいろな編曲譜のもとになったと思われる「セゴビア編」としてははスペインのユニオン・ミュージカル・エディションから出ていてGGショップなどで入手出来、価格は1500円前後です。この譜面はセゴビアの死後、1992年に出版されていますが、出版された経緯などは特に書かれていません。内容はこれまで国内で出版されていた多くの譜面と同じです(全音出版の阿部保夫編など)。またタブ譜付きのような形で出版されているものもほとんどこの譜面です。それらの譜面があればこの譜面は特に取り寄せたりする必要はないのですが、あるとすれば原編曲者のアンドレ・セゴビアに敬意を表してということでしょうか(それが間違いないと仮定してですが)。

 この譜面は弾きやすいというのが最大の長所ですが、原曲と異なるところもあります。特に54、56小節の1拍目裏の低音が「ソ」になっていますが、原曲に忠実に編曲すれば「ファ#」になるはずです。単純ミスというよりは伴奏の音に合わせて修正したのでしょうが、やはりアルベニスの意図にそうものではないと思います。中間部はかなり弾きやすく編曲されているのはたいへんよいと思いますが、一部分、あまり意味のあることと思えないところでの表記の変更などもあり、なるべく原曲どおりにと考えると、多少問題点もあります。また表情、強弱記号についても「スペイン組曲」のほうからとっているのも気になります。私個人的にはこの譜面を使う場合は原曲と照らし合わせながら、多少修正して使う必要があるかなと思います。



修正版

 その上記の譜面の修正版といえるものも出版されています。代表的なのが「ドレミ楽譜出版の名曲170選C」の小胎編で、これは既存の編曲譜をそのまま載せてあるのではなく、もう一度原曲から見直してあります。この曲集は他の編曲ものも同様に原曲から新に編曲し直してあり、また音などの間違いも少ないのも特徴です。54、56小節の音も「ファ#」にしてあり、中間部も出来る限り原曲に忠実にしてあります。ただ原曲どおりオクターブ・ユニゾンになっているところもあり、少し難しいかも知れません。無理な場合は単音で弾いてもよいでしょう。この譜面は入手しやすいこともあって、お薦めの譜面だと思います。ただ強弱記号などは「スペイン組曲」のほうからとっています。


 世界中には他にもいろいろな「修正版」が出ているのではないかと思いますが、私の手元にあるものでは、ドイツのギタリストのトーマス・ミュラー・ぺリュングの譜面(現代ギター社)があります。37小節の和音は6弦の「ミ」を低音にしているという、ちょっと変わったものですが、42小節は「ド」にしてあって、特に連続8度を避けてはいないようです。主要部の終わりは普通8部音符のピチカートになっていますが、ここでは原曲どおり16分音符なっています。中間部はかなり原曲に近くしてありますが、弾きやすくはないようです。強弱記号などは「スペイン組曲」からとっています。
 
 セゴビアが実際に弾いているような37小節の和音の低音を「ラ#」にしてあるものは以外とないようです。やはりかなり弾きにくくなるせいでしょうか。




私の編曲

 私の編曲は2種類あります。一つは教材用で、原曲を重んじながらも、なるべく弾きやすく、また他の譜面とのギャップもなるべく少なくしてあります。表情、強弱記号などはアルベニスの意図をより忠実に反映していると考えられる「スペインの歌」のほうに基づいています。これは以外とないようです。前にお話したとおり、楽譜の出版された経緯などを考えれば当然「スペインの歌」のほうを重視しなければならないと思うのですが。あるいは「アストゥリアス」または「レーエンダ」を名乗る以上は「スペイン組曲」に重きを置かなければならないというのでしょうか。

 もう一つは私がコンサートなどで演奏するためのもので、これは私自身の技術に合わせながらも、なるべく原曲に近くしてあります。ただ演奏するごとに毎回編曲が変わってくるので、まだまだ流動的ですが、今現在の弾き方ということで、一応楽譜にしてあります。主要部の終わりのところは16分音符にして、中間部もいっそう原曲に近くしてあります。またコーダでは最後がffになるような形にしてあります。
 37小節目などの和音の低音は「ラ#」にしたいのですが、どうしても止まり気味になってしまうので、今のところは他の譜面と同様に「ド」で弾いていますが、いずれは変えるかも知れません。



最後に

 計6回にわたって「アストゥリアス」について書いてきて、相当細かい話にまで入り込んでしまいました。途中で読む気にならなくなってしまった人も多いと思いますが、この曲を現在弾いていたり、これから弾こうと思っている人にとっては多少は役に立つ話ではないかと勝手に思っています。最後までお付き合いしていただいた方々、ありがとうございました(何人いるかわかりませんが)。

スポンサーサイト
コメント
コメントする
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する