中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

カーテン・コール 

 14人もの新しいギタリストを紹介したので、皆さんも、最初のほうのギタリストはもう忘れてしまったのではないかと思いますので、ここでカーテン・コール的に14人のギタリストにもう一度登場してもらい、おさらいをしておきます。紹介した順番はだいたい新しい順だったのですが、若干順番も入れ替わってしまったので、今度はあらためて録音の古い順に登場してもらいます。



アナ・ヴィドヴィッチ (1999年録音 タレガ国際1位)   ~天才美少女系ヴィルトーゾ、今はどのように成熟?

新進演奏家 008

 録音年代は古く、唯一20世紀の録音ですが、10代での録音なので、ヴィドヴィッチ自身は他のギタリストとほぼ同世代のギタリストと言えます。このCDではいかにも少女らしいその外見に相反して、強靭とも言える音でどの曲もかなり速いテンポで弾き通しています。しかしこのCDは10年以上前の、しかも10代での録音なので、今現在の演奏とはある程度隔たりがあるでしょう。おそらく今現在ではその音楽もいっそう成熟したものになっていることと思います。



パブロ・サインス・ビジェガス (2004年録音 タレガ国際1位)  ~オール・スペインもの、モレーノ・トロバとセゴビアの曲を初演


新進演奏家 014

 1977年生まれということで、今現在では若手というより中堅ギタリストと言えます。スペイン人らしいギタリストと言えますが、感性だけで演奏するタイプではなく、他のギタリスト同様、客観的に音楽を捉えています。明るいブリリアントな音としっとりとした音の使い分けが印象的で、その作品の内容が過不足なく聴こえてきます。また何といってもトロバやセゴビアの秘曲ともいえる曲を初演しているのが特徴的です。単なる自己紹介的なアルバムを超えた内容のCDです。




ゴラン・クリヴォカピック (2005年録音 GFA1位)  ~編曲作品を中心としたアルバム、スカルラッティ、ボグダノビッチがすばらしい

新進演奏家 012


 このシリーズでは、ほとんどのギタリストがギターのオリジナル作品を中心に収録していましたが、このクリヴォカピックのみ編曲ものを中心に収録し、オリジナル曲としては同国(セルビア)出身のボグダノヴィッチの作品のみとなっています。ヴィドヴィッチほどではありませんが、他のギタリストに比べてテンポはやや速めです。やや軽めな音質はスカルラッティの演奏にはよく合っていて、バルエコやウィリアムスなどに比べても遜色ありません。ボグダノヴィッチの演奏は他の曲の演奏と雰囲気が違い、同国の作曲家への共感がそうさせているのでしょうか。




ジェローム・ドゥシャーム (2006年録音 GFA1位)  ~USAで生まれ、カナダで学んだギタリスト、優しい音が特色

新進演奏家 011


 このCD1曲目の「アパラチアの夏」は聴いていてとても和む曲ですが、このギタリストの音色は優しさを感じるもので、いわゆる”癒し系”のギタリストと言えるでしょうか。他にマネンやヒナステラのソナタなど、曲目はすべて20世紀の作品となっていますが、あまり刺激的な演奏ではなく、ギターらしい響きを大事にした演奏と言えます。ロドリーゴの「ファンダンゴ」もいわゆる「難曲」ではなく、あくまでメロディの美しい「スペイン風小品」として演奏している感じです。



ニルセ・ゴンザレス (2007年録音 タレガ国際1位)  ~ベネズエラ出身のギタリスト、ギターらしい音

新進演奏家 010

 14人中唯一の南米出身のギタリストで、たいへんギターらしい音色を持つことが最大の特徴と言えるギタリストです。あまり音量や音色の変化や細部のニュアンスなどにはこだわらない感じで、また音楽の様式や構造など音楽の「考える」部分をあまり表に出すほうではないようで、あくまでも「自然に」、「ギターらしく」といった感じです。しかしやはり21世紀のギタリストであり、当然のごとくその音楽の様式や作曲者の意図に沿った演奏をしています。特にポンセの曲がすばらしい。



トーマ・ヴィロトー (2007年録音 GFA1位)  ~フランス出身のギタリスト、雑味のない音楽

新進演奏家 009

 1曲目のリョベートの曲の演奏はまさにヴィルトーゾ的、何の苦労もなく難しい部分を弾いているように聴こえます。低高音よく鳴る楽器(スモールマン)を使用していることもあって、音楽はたいへんくっきりとしたものになっています。ギター的というよりピアノ的な感じがしますが、ハーモニックスの音はたいへん美しく響きます。ヒナステラの曲も、聴く人によって好みの違いはあるでしょうが、曲の内容はドゥシャームの演奏よりわかりやすく、またスリリング。6弦を「ラ」にチューニング(多分)して演奏するディアンスの「トリアエラ」はなかなか面白い曲。



ペトリック・チェク (2008年録音 M.ピッタルーガ国際1位)  コソボ出身の知性派ギタリスト、バッハが面白い

新進演奏家 007

 このシリーズのギタリストは皆それぞれ磨きぬかれた美しい音を持っているのですが、このペトリック・チェクは、やや「無造作」とも言える音色で演奏しています。ギターの音色的なことより音楽を構成することの方に意識が強く行っているのでしょう。バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」が面白く、低音をかなり加えた第1楽章の「グラーヴェ」は、まるで別の曲のように聴こえます。異色の個性派ギタリストとも言えるかも知れません。
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