中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

(前回の続き)


記憶が飛ぶのが一番怖い 

 前回書いたとおり、学生時代までは多少はアガるといっても、ステージでも普段の練習とはそれほど変らず、場合によっては練習の時よりもよく弾ける時もありました。しかしこの仕事に就いてからはステージ上ではだいぶ緊張するようになり、普段弾けている曲が弾けなくなるなど、”本格的”にアガルようになりました。

 特にステージに立った時、普段の練習では何の問題もなく暗譜出来ていた曲の記憶が曖昧になり、完全に記憶が飛ばないにしても、その不安からミスをしたり、テンポが不安定になったりするようになりました。幸いにもステージ上で完全に記憶が飛んでしまったことはありませんが、よくそんな夢を見たりします。

 やはり一番怖いのが記憶が飛んでしまうことですが、しかしそれは対策を立てることも可能だと思い、ステージで演奏する場合は、まず暗譜を完璧にするように務めました。



考えなくても弾ける=考えると弾けない

 皆さんももそうだと思いますが、ある程度の期間練習している曲でしたら、普通楽譜を見ずに弾くことが出来ます。さらに練習を続けるとあまり考えなくても指のほうが勝手に動いてくれて、別のことを考えながらでも引けるようになります。

 それくらい練習した曲だったらステージで多少緊張しても忘れたりすることはないと思われがちですが、そうした曲のほうがかえってステージでド忘れしやすいということは経験者ならわかると思います。「考えなくても」弾ける曲は、逆に「考えると」弾けなくなるということです。


譜忘れ対策を徹底した

 その頃から「ただ弾く」だけの記憶法では不完全だということがわかるようになり、暗譜のための対策を立てるようになりました。そのことに関してはこの「ギター上達法」の「暗譜」ところでも詳しくお話しました。そこで書いたことは基本的に私のこうした経験をもとにしたものです。  

 具体的には、時間と労力は必要だが最も確実な方法として、演奏予定の曲を五線紙に書く方法です。次にギターを持たずに頭の中だけで弾く方法、この時は音も運指もどちらも思い浮かべます。もう少し手短な方法としては部分的に弾いたり、また曲を逆にたどったりしする方法です。


その頃から5線紙に書くようになった

 そうしたことの効果が最も発揮されたのが、1983年(私が32歳の時)の時のリサイタルで、この時バッハのリュート組曲第2番BWV997をプログラムに入れました。当時の私としてはかなりの大曲であるのは間違いありませんが、特に「完璧な暗譜」といった点では難しい曲です。練習などで何となく楽譜を見ずに弾けたとしても、緊張した状況で、記憶に全く混乱を起こさないで演奏するのはなかなか困難です。


暗譜対策を完璧にした結果

 しかし逆に言えば記憶さえ完璧なら、それなりの演奏が出来るのではと、暗譜についてはかなりの時間を費やしました。その頃は私としては最も練習していた頃で、平均1日5~6時間は練習していましたが、それに加えて毎日2時間くらい暗譜のために五線紙に音符を書いていました。それを演奏会の半年くらい前からずっとやっていたわけですが、演奏会の直前にはどの部分の音でもすぐに言える(書ける)ようになっていました。

 おかげでリサイタル当日のステージでは記憶の不安は全くなく、かなり落ち着いた精神状態で演奏することが出来ました。後からテープを聴きなおしてみても、少なくとも不安定に聴こえるところはなく、練習の成果を十分に出すことができました。


クラベトリース 002

1983年のリサイタル。バッハのリュート組曲第2番などを演奏した。
少なくとも記憶の混乱は全くなかった。楽器はH.ブッフシュタイナー




寝れず、食べられず

 もちろんそのことと演奏内容の良し悪しとは関係ありませんが、長い時間かけて準備したものが、ステージでの緊張感のために台無しにしてしまうことは避けられました。ただしこの頃からだと思いますが、演奏会の1~2ヶ月くらい前から緊張感を感じ始め、前の晩などは寝付かないとか、当日は飲食が出来なくなるなどの症状(?)が出はじめました。

 そういった意味では年齢や経験と共に、ステージでのプレッシャーは、むしろいっそうかかるようになってきました。以前のようにあまり弾けていない曲や、練習の不十分な曲を人前で演奏するなどといったことは出来なくなってきました。ただし結果的に”弾けない曲”になってしまうことは、残念ながらしばしばあります。



 
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