中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

昨日=9月4日(日)、ギター文化館で大萩康司ギター・リサイタルを聴きました。


   <第1部  独奏>

J.S.バッハ : サラバンド(リュート組曲第1番)
バリオス : 最後のトレモロ
アーレン~武満編 : オーヴァー・ザ・レインボー
マッカートニー~武満編 : イェスタディ
レオ・ブローウェル : ソナタ
レイ・ゲーラ : 12月の太陽


   <第2部  二重奏 2ndギター:松尾俊介>

アンドリュー・ヨーク : イヴニング・ダンス
イサーク・アルベニス : イヴォカシオン(組曲イベリアより)、入り江のざわめき、椰子の木陰
アストル・ピアソラ : タンゴ組曲


<アンコール曲> セルジオ・アサド : ファーウェル~映画「夏の庭」より



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 ギター文化館で毎年行なわれる大萩君のリサイタルで、当ブログでも何度かレポートしました。相変わらずの人気で、会場はいつものとおり満席状態です。今回は松尾秀介君との二重奏もあります。


バッハのサラバンド

 最初の曲はバッハの「リュート組曲第1番ホ短調」の中から「サラバンド」でしたが、ふんだんに装飾を加えた演奏です。大萩君の演奏は、相変わらず音も美しいが、それ以上に「響き」が美しい。バロック時代の装飾は基本的に音楽に変化を与えるたりとか、”間延び”を防ぐために行なうものですが、大萩君の装飾は、持ち前の響きの美しさをさらに増すためのもののように感じます。なぜ組曲の中からこの曲だけを、しかも今日のコンサートの1曲目に選んだのかがわかる気がしました。

 そういえば大萩君の最初のCDアルバムにフランスのバロック時代のリュート奏者の「ル・コック」の組曲を入れていて、それがとても印象的、というより衝撃的だったのですが、このバッハの「サラバンド」の演奏もその延長上なのでしょう。もちろんその時よりも演奏はいっそう美しくなっています。 



武満編12の歌

 武満編の「12の歌」から2曲演奏されましたが、これらの曲は本来タイトルどおり、基本的には「歌わせる」ための曲なのですが、技術的にはかなり難しい編曲で、かなりの実力がないとそれがなかなか出来ません。大萩君の演奏は当然のごとくメロディを美しく歌わせながら、なおかつ武満が織り交ぜた即興的な部分でも聴衆を十分に楽しませてくれます。この両方とも出来る人は少ないのでしょう。



ブローウェルのソナタ

 ブローウェルの「ソナタ」は「ファンダンゴとボレロ」、「スクリャービンのサラバンド」、「パスキーニのトッカータ」の3つの楽章からなっています。第1楽章の終わり頃では、突然ベートーヴェンの「田園」の一節が現れます。「バロック時代のスペインの作曲家アントニオ・ソレルとベートーヴェンの音楽の融合」といった意味のようです(なぜ「田園」なのかはわかりません ~以前に誰かに説明してもらったような?)。

 3つの楽章ともそれぞれ過去の作曲家からインスピレーションを得ているようですが、聴いた感じでは間違いなくブローウェルの音楽といった感じです。聴き手にとってはやや難しい曲の部類ですが、大萩君の演奏では響きや音色の美しさ、変化などで、とても楽しめる曲になってます。


二重奏 ~松尾俊介君

 第2部では同時期にパリ:コンセルバトワールで学んだという松尾俊介君との二重奏が行なわれました。私が松尾君の演奏を生で聴くのは1999年の東京国際ギター・コンクール以来だと思います(この時3位受賞)。あれからすでに12年経つということになります。松尾君には息子がパリにいる頃、いろいろお世話になりました。大萩君に劣らず礼儀正しい好青年です。

 二人は10数年来の親交ということもあって、当然のことながら息の合った演奏。それでもお互いの個性はちゃんと聞き取れます。松尾君の音は清潔感、清涼感のある美しい音です(ホセ・ロマニロス使用?)。


ヨーク、アルベニス

 ヨークの「イヴニング・ダンス」は始めて聴く曲ですが、やや古風な感じのする曲です。アルベニスの3曲は、表記などはありませんが、ミゲル・リョベートの編曲と思われます。アルベニスの最高傑作と言われる組曲「イベリア」は技術的に難しいこともあってギターではあまり演奏されませんが、この「イヴォカシオン」はなかなかギター二重奏にも合うと思います。二人の演奏では和音の変化も感じさせながら、メロディをしっとりと歌わせています。

 ギター独奏でよく演奏される「入り江のざわめき」は、あらたにパッセージなどが付け加えられ、いっそうフラメンコ風の華やかな曲になっています。「椰子の木陰で」はハバネラ風のメロディの美しい曲です。



ギター二重奏の名曲「タンゴ組曲」

 アストル・ピアソラが残した唯一のギター二重奏曲(オリジナルとしては)の「タンゴ組曲」は、現在ではギター二重奏の名曲として定着しています。とても人気のある曲ですが、誰でも弾ける訳ではないところが欠点。パーカッション奏法から始まりますが、このギターのボディを叩く音がなぜか(?)美しい。CDで聴いてもすばらしい
曲ですが、生で聴くとずっとスリリング(このDuoに関してはさらに”美しい”が加わる)。



毎年暑い時期になってしまいますが

 大萩君の、このギター文化館でのリサイタルは種々の理由から毎年暑い時期になってしまい、本人もちょっとたいへんそうですが、やはり大萩君演奏はCDではなかなかその本領がわからないところもあり、こうしたリサイタルはとても貴重なものと言えます。また大萩君、および大萩、松尾のDuoの演奏にはこのホールの音がよく合うようで、とても楽しめたコンサートでした。

 
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