中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

秋風のコンチェルトは初恋の響き

 連日の猛暑もさすがにここに来て、勢いも衰え、涼しい風が吹く日も多くなりました。涼しくなったのは確かにいいのですが、夏の暑さが去るとなんとなく寂しさを感じるのはなぜでしょうか。過ぎ去る夏、訪れる秋、時間が過ぎ去るのがなんとなく寂しく感じるこの季節、この季節にはこの「ショパンのピアノ協奏曲第1番ホ短調」がよく似合います。ショパン20歳のワルシャワ時代の最後の歳の作品で、同じ年に書いた「第2番」とともに、当時恋していた女性への想いを音楽にした曲と言われ、まさにショパンの若き日の情熱に満ちた曲です。その女性が初恋の女性かどうかはわかりませんが、この曲の初々しさはそんな言葉もよく似合うでしょう。初演が1830年の10月11日となっていますから、作曲したのは確かに夏から秋にかけてなのでしょう、もっともワルシャワのしかも当時の夏は、こんな猛暑ではなっかたでしょうが。


古典の衣装をまとったロマン派の音楽

 オーケストラによる、堂々したテーマで始まるこの曲は、全体としてはソナタ形式という伝統的なスタイルを踏襲して作曲されています。ベートーベンが亡くなってからまだ3年しか経っていない時ですから当然かもしれません。冒頭の堂々とした部分の後には優しい、あるいは美しい歌が続きますが、これはロマン派的なもの、あるいはショパン的なものといえるでしょう。しかしピアノが登場してからがこの曲の真骨頂で、まさに音楽史上に輝くピアノ協奏曲の名曲であることが感じ取れます。20才で作曲されたこの曲はまだ後期のショパンの作品のような深遠さはないと言われたりもしますが、一方では晩年のショパンの音楽にはないものあると思います。


天才はどこからやってくる

 私にとって、ショパンという音楽家は最も「天才」を感じる音楽家です。もっとも私たちが知っている多くの作曲家はそのほとんどが天才と言えるでしょうが、ショパンの音楽からは、誰かから学んだり、努力したりとか、あるいは他の音楽家から影響うけたとかがあまり感じとれないのです。ショパンの場合、最初からショパンであったように感じさせられます。時代からすればベートーベンはじめハイドン、モーツアルト、バッハなどは必ず学んだはずですが、初期の作品と言えど、ショパンの音楽にはそれらの音楽家の影響は直接感じられません。7歳で作曲した二つのポロネーズ(第11番ト短調、第12番変ロ長調)もすでにショパンの音楽になっているように思います。

 「雨だれ」などで有名な「24の前奏曲」はバッハの平均率の影響から作曲したものですが、実際に聴いてみても直接的にはバッハの影響などはあまり感じられません、どう聴いてもやはりショパンにしか聴こえません。強いて言えばソナタ第1番や即興曲などは、ちょっぴりシューベルトを連想させます、ショパンの音楽が一番誰に似ているかと言うと、本当に無理やりですがシューベルトかも知れません。またベートーベンの「ハンマークラビア・ソナタ(第29番)」の第3楽章はたいへん美しい楽章ですが、部分的にはショパンぽく聴こえるところがあります(話が反対ですが)。

 ショパンと同世代のピアノの作曲家にリストやシューマンなどがいますが、ショパンの場合、その両者に見られるような文学的な標題の付いた作品はなく、「マズルカ」とか「夜想曲」とかいったようにその曲の形式名が付けられているだけで、ショパンの場合、音楽はあくまで音楽であるといった考えのようです。

 逆にショパン以後の作曲家で、ショパンの影響を受けた作曲家はたくさんいて、ギターの方でもタルレガ、バリオスなどが挙げられると思います。前に話したアルベニスもその一人かも知れません。まさにショパンを天才と言わずして、誰を天才呼ぶかということでしょうか。


(つづく)

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