中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

映画「禁じられた遊び」より

ギターで弾く映画音楽の元祖 ~これも戦争の映画

 若干古くなったとは言え、今現在でもやはりギターで弾く映画音楽の代表的な曲といえるでしょう。この映画は1952年公開ということで、ほぼ私と同じ歳ということになります(どちらも歳をとりましたね・・・・・)。私と同年代の方でしたら、一度くらいはこの映画を見たことがあると思いますが、この映画も戦争を題材にした映画です。 

 ・・・戦争を題材にした映画は本当に多いですね、意識して並べたわけではないのですが、気が付いてみると今回のコンサートの最初の3曲は、すべて戦争を描いた映画の主題曲となってしまいました。私たちは半年ほど前に自然災害の恐ろしさを身をもって経験したわけですが、やはりそれ以上に人間自身による惨禍のほうが何十倍も、何百倍、あるいは何千倍も大きいのでしょう・・・・


禁じられた遊び=お墓ごっこ

 第二次大戦の初期(1940年)のフランス、ドイツ軍の侵攻によって両親をなくした小さい女の子(ポレット)が農家に引き取られ、その家の男の子(ミシェール)と仲良くなり、亡くなった両親や動物たちのためにお墓から十字架や墓標などを盗み出してしまう・・・・ といった内容の映画です。


予算の都合で?

 私自身では子供の頃、この映画を(テレビで)何度か見ましたが、なんといってもモノ・カラー。草木などが緑なのか、茶色なのかさっぱりわからず、季節などが全くわからなかった記憶があります。この映画に添えられている音楽がナルシソ・イエペスのギター1本ということは有名ですが、予算がなくてギター1本にしてしまったとか、当初アンドレ・セゴビアに依頼するつもりだったのだが、ギャラが折り合わず、結局当時無名のギタリストだったイエペスに決まった、などいった話も聞かれます。


結果的には大成功

 そのあたりの真偽については私にはわかりませんが、結果的にはこのギター1本の音楽の効果は極めて高いものだったのではないかと思います。このギターによってこの映画に色彩が付けられているような感じがします。他の方法の音楽だったら、この映画がこれほど成功したかどうかは疑問なのではと思います。

 その成功は監督(ルネ・クレマン)の意図したとおりだったのか、結果オーライだったのかはわかりませんが、この映画の成功は、戦後のクラシック・ギター界にも大きな影響を与えたのも確かでしょう。この映画の中でイエペスが弾いている曲は、以下の6曲です。


この映画の中でイエペスが弾いた曲

作者者不詳 : 愛のロマンス (メイン・テーマ)

ロベルト・ド・ヴィゼー(17世紀のギタリスト): サラバンド、ブーレ (ニ短調組曲より)

ジャン・フィリップ・ラモー(18世紀初期のフランス宮廷作曲家) : メヌエット

ナポレオン・コスト(19世紀、フランスのギタリスト) : 練習曲イ長調 作品38-6

カタルーニャ民謡~ミゲル・リョベート編 : アメリアの遺言


謎の多い「愛のロマンス」

 誰もが知っている(たぶん)メイン・テーマの「愛のロマンス」ですが、その”出どころ”については、まだまだ不明な点が多く、かつては「スペイン民謡」とされることが多かったのですが、それらしい民謡は見当たらなかったようです。その後スペインのギタリスト、アントニオ・ルビラという人の作品の中から、この「愛のロマンス」とほぼ同じものが見つかったそうで、このルビラの作ということが有力となりました。



私が作曲した・・・・

 演奏者のイエペスは晩年に「自分の作曲」と主張したそうですが、イエペスの幼少時にはこの曲が存在したのは確かで、また1930年代には別のギタリストにより、別の映画の主題曲として演奏されたのも確実で、少なくともイエペスの作曲はあり得ないようです。また最近になって、この曲のもととなったと思われるスペイン民謡が見つかったという話も聞きます。やはりスペイン民謡だったのでしょうか。


正式な楽譜は出版されていない

 そうした”出どころこ”のはっきりしない曲にもかかわらず、この映画の人気と共に、日本を含めた世界中で楽譜が出版されたわけですが、これは原典を基にしたものでも、またイエペス自身が」出版したわけでもなく、それらのほとんど、あるいは全部がイエペスの演奏から楽譜を起こしたもの、つまり”耳コピー”だったと思われます。

 私自身も子供の頃からこの曲のいろいろな楽譜を目にしてきましたが、それらの中には明らかにおかしいものが少なからずありました。さすがにメロディの違うものはありませんでしたが、和音などは、長調の部分が突然短調で終わってしまうものとか、小節の途中で和音が変ってしまうもの、どう聴いても低音がおかしいものなど様々な譜面が市場に出ていました。


現在出ている譜面はイエペスの演奏のコピー

 それらの譜面の基になったのはイエペスの演奏以外に考えられないので、それぞれ不完全な耳コピーによるものなのでしょうか。しかし現在ではそうした不完全な楽譜はかなり淘汰され、現在出されている譜面はイエペスの演奏にかなり忠実なものになっています。 ・・・・ただしイエペスは後半の5、6小節の2拍目に属和音の第7音、つまり④弦の「ラ」を入れているのですが、なぜかどの市販の譜面も入れていない? ・・・・それ以外は現在出版されている譜面のほとんどはイエペスの演奏の忠実なコピーになっています。


著作権を主張する権利は多少あるかも

 このようにこの曲はイエペスの作曲ではないにしても、現在「愛のロマンス」として広まっている曲(曲名などもあまりはっきりしていない)は、イエペスの演奏に基づくものと言ってもよく、細かな点でルビラの曲や、他のギタリストが演奏したと言う曲とどの程度同じで、また異なるかはわかりませんが、少なくとも「イエペス編」または「イエペス採譜」と言うことは出来るかも知れません。


子供の頃聴いたドーナツ盤

 またまた話が長くなってしまいましたが、今回私が演奏するのは、この「愛のロマンス」に、この映画で使われた「ヴィゼー:サラバンド」、「ラモー:メヌエット」、「コスト:エチュード」が挿入されたものです。

 子供の頃、「ドーナツ盤」と呼ばれていた17センチ、45回転の、このバージョンのレコードが家にあり、他にギターのレコードがほとんどなかったこともあり、とてもよく聴いていました。当時ギター演奏の基本が全く出来ていない(全くギターを習っていなかった)にもかかわらず、楽譜を買ってきて無理やり弾いていたのは前にお話したとおりです。


幻のバージョン

 このバージョン、イエペスの演奏に間違いないとは思うのですが、後にLPになったり、CDになったりすることもなく、”まぼろしのバージョン”となってしまいました。純粋に「愛のロマンス」のみのバージョンはその後何度か録音され、現在でもCDとして何種類か市場に出されています。どこかに音源は残っているのではと思いますが、CD化される日は来るのでしょうか。

 このバージョンの楽譜の方も出されているとはいっても、もちろんイエペス自身が出したものではなく、前述のとおり”耳コピー”的なもので、子供の頃聴いた限りでも、それぞれ細かい点ではイエペスの演奏と異なっている印象です。やはり和音などの間違いと思われるものもたくさんあります。またイントロを付け加えた譜面もありますが、こちらのほうの出どころはわかりません。少なくともイエペスは弾いていないと思うのですが。


和音を間違えていないと思うけど・・・・・

 今回私が演奏するのは、ヴィゼーなどの原曲、および子供の頃聴いたイエペスのレコードの記憶を基に私がアレンジしたものです。これもイエペスの演奏のコピーの一つと考えていただいてよいでしょう。 ・・・・一応和音などの間違いはないと思うのですが、とりあえず楽譜を載せておきましょう・・・・


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