中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

 私の場合、基本的にあまり楽器にこだわる方でも、また詳しい方でもありませんが、たまには私の使っているいる楽器の話でもしましょう。といってもこのブログを始めた時、「だいたい13」ということでこれまで私が使った楽器についての話をしましたので、2度目ということになります。でも今回はこの「ヘルマン・ハウザーⅢ」にしぼって、一応”写真付き”でやや詳しくお話しましょう。



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    ヘルマン・ハウザーⅢ(ドイツ) 1983年 NO.88



ハウザーⅠ世はセゴヴィアが長年使用した楽器 

 ヘルマン・ハウザーについてはよくご存知の方も多いかも知れませんが、ハウザーⅠ世はアンドレ・セゴヴィアが長く使っていた楽器です。その楽器は現在限られた本数しか残っていなくて、かなり高価な楽器となっています。私の使っている、このハウザーⅢ世はその孫にあたりますが、現在はⅣ世(女性)が活動中とのこと。


迷走時代

 私がこの楽器を買ったのは1988年ですが、1980年代は私にとっては楽器の迷走時代で、ラミレス → ブッフシュタイナー → 10弦(今井博水、ラミレス) → ラミレス(6弦)と2~3年ごとに楽器が変わっていました。

 このハウザーを買う前にも、スペインの楽器(名前が出てこなくなってしまいましたが)を買うつもりで1ヶ月ほど弾いていました。しかしやはりフィットしなくて、そのことを楽器店の方に言うと、「では、ハウザーⅢなど、いかがでしょう」と言われ、予算的に難しいとは思いましたが、「一応、見るだけ」ということで2本ほど持ってきて貰いました。


第一印象はハウザーらしくないハウザー

 ハウザーはどちらかと言えば、やや地味な方(少なくとも当時はそう思っていました)なので、特に好きというわけでもなかったのですが、2本のハウザーのうち、こちらの方はそういったイメージとちょっと違う音。高音がよく鳴るのは、今まで弾いたハウザーとちょっと違う。特に②弦がよく出て、中音域はかなりクリヤー。低音の重厚さはあまりないが、軽くよく鳴る音 ・・・・・・・最初の印象はそんな感じでした。

 これまで見たハウザー(Ⅱ世、Ⅲ世を含め、それほど見たり、弾いたりしたことはないが)とちょっと違うイメージ、そのギャップに上手くはまってしまったのか、あまり迷うことなく購入を決めてしまいました(もちろんその後のことはあまり考えずに)。


当時はそれほど高くなかった

 ハウザーⅢ世といっても、当時はまだⅡ世からⅢ世に代わったばかりで、Ⅲ世の評価はあまり高くなく、またこの楽器はスプルースでなく、ローズウッド使用なので、価格も確か180万円位とされていたと思います(実際に買った価格はもう少し安い)。今はどれくらいするのでしょうか、詳しいことはわかりませんが(ほとんどの専門店で”ASK"となっているので)、400万円台の数字も目にします。少なくとも300万円以下で購入するのは難しいようです。


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ハカランダではなく、ローズウッド系の裏板だが、なかなか面白い木目。あまり見かけない



買った時は真っ白だったが

 1983年製作で1988年に買っていますから5年間ほど別のオーナーの手にあったものと思われますが、私が買った時はほとんど使用された後はなく、未使用品といった感じでした。色もかなり白かったのですが、ガラス戸のギター棚に入れておいたので、何年かすると色だけは”Ⅱ世”のようになりました。



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ちょっと見にくいが、製作が1983年で、シリアル・ナンバーが”88”。買った年が1988年で”縁起”がよさそう。そんなことも即断の後押しに。




解像度が高く、声部の聞き分けがしやすい

 この楽器の最大の特徴と言えば、まず何といっても、音がクリヤーで、解像度が高いと言った点です。特に中音部がクリヤーに出て、あまり音感の良くない私でも内声部が聴き取りやすくなっています。音量は”物凄く”ではないにしても、まあまあ”ある方”と言ってよいでしょう。

 合奏や二重奏などの時の単音も、クリヤーな音質なので遠くに行くほどよく聴こえる感じがします。低音は膨らむような感じとか、重量感はありませんが、明るく、クリヤーなので主旋律を弾く時などはよく音が通ります。


ノイズが出やすく、指向性が強い 

 欠点としては、弾き方にもよりますが、柔らかい音はかなり技術がないとなかなか出せません。音色の変化も若干難しいところもあります。またノイズも出やすく、爪の状態が多少でも悪いと気になって弾けません。

 またかなり指向性が強いようで、表面版が向いている方向には音がよく聴こえるのですが、それ以外の方向にはあまり音が行かないようです。二重奏の時など、どうしても客席に向かって斜めになってしまうので、席によってバランスが狂って聴こえてしまうようです。


相当頑固だが

 そんな気難しく、頑固なところもある楽器ですが、こちらがそれなりの姿勢で臨むと必要な音を、必要な分だけ出してくれる楽器でもあります。また”がんばれば”音色やニュアンスの変化も出せます。弾きこなすのはなかなか難しいではありますが、努力すれば演奏者の要求には応えてくれます。

  
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ドイツ、ライシェル社の糸巻き。 何の変哲もない糸巻きだが、23年間酷使したにもかかわらず、全く磨耗も狂いも生ぜず、今だに回した分だけきっちりと音程が変わる。年数が経てば経つほどその価値がわかる、まさにドイツらしい糸巻き。



創も小学生の頃使っていた

 創が小学生の頃、学生ギター・コンクールに出るために、このハウザーを使っていましたが、どうしても音が硬質になってしまい、当時はまだ良い音がでませんでした。それでも他の楽器より明るく、クリヤーな音が出て、音の”伸び”もよいので、この楽器を使わせていました(その結果小3~中2まで6連続2位)。



その音の美しさを聴くと

 その後創はポール・ジェイコブソン、ホセ・ロマニロスを使いましたが、パリ留学から一時帰国していた時、このハウザーⅢでちょっと弾いていました。その頃の創はリタイヤ直前で、もうあまりギターを弾かなくなっていた頃でしたが、その音は、これまで聴いたことのないようなとても美しい音でした。

 あらためて私と創の天性の違いを感じたと共に、この楽器のすばらしさも実感しました。「そろそろ創もやめ時だな」ということは当時の私も感じていたにせよ、こうした音を聴くそんな言葉はどこかに吹き飛んでしまいました。



多少は丸くなったかも

 この楽器も製作してから28年、私が使い始めてから23年経っています。楽器には経年変化というのがあって、年数が経つと、その音も変わってきます。しかしこれは比較するのが難しい(というか不可能!)ので、どう変ったかということはなかなか難しいことです。もしかしたら楽器の音そのものが変るのではなく、弾く人の印象が変るだけかも知れません。

 基本的にこの楽器の性格などは、最初からそれほどは変っていないのではないかと思いますが、ジェイコブソンとの比較で言えば、かつてより音量の差(ジェイコブソンのほうが音量はある)はなくなってきている感じがします。また音の拡がりも、買った当初よりはある感じがします。多少は丸くなったかも知れません。
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コメント
ハウザー、その他
初めまして。ギター大好きな「万年初心者」です。素人に過ぎない私ですから、プロの方のブログ、掲示板に場違いなことを書いてはいけないと思いつつ、興味深い内容だったので、敢えてコメントをさせていだく次第です。

もう30年近く前だったと思いますが、某専門店で世界の名器をいろいろ試奏させてもらったことがあります。その時のハウザーの印象ですが、特別な長所はないものの、総てに渡って不可のない楽器だと思いました。糸巻きに至るまで、総てがそつなくまとめられているとの印象を持ちました。

勿論、全くの素人故、勝手な印象を持ったにすぎなかったのでしょう。恐いもの知らずだったからこそ、そう思ったにすぎません。ハウザーは、例えば音出しは基礎がなければとても難しいと言われています。だから、私ごときにハウザーの本来の音を出せるはずもありません。

ちゃんと音の出せる奏者には、素晴らしい楽器なのでしょうね。故、渡辺範彦氏は、馴染みの河野ではないこの楽器を、「こんなの弾けませんよ」と言いながら、見事にその音を出し切って周囲の人達を感動させたと聞いています。

私は10弦を用いていますが、故今井博水氏の10弦ギターは、某楽器店で弾かせて貰ったことがあります。透明なきれいな音だったという印象が残っています。若くして亡くなったことが惜しまれます。
2011/11/12(土) 00:22:49 | URL | Paczki #-[ 編集]
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