中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

トッカータBWV911、パルティータ第2番BWV826、イギリス組曲第2番BWV807


    ブログ 013

1979年に録音したバッハ・アルバム。バッハのソロの録音(セッション録音)としては唯一のもの。



1曲目でも大丈夫

 アルゲリッチとバッハは一見あまり結びつかないようですが、でもアルゲリッチはバッハを弾くのが好きなようです。特に「パルティータ第2番」はよく演奏していて、前に紹介した本によれば、「この曲(パルティータ第2番)は弾きやすいわ、これならリサイタルの1曲目でも大丈夫」と言っているようです。

 最近はソロの演奏はほとんどしていないということは前にも言いましたが、比較的最近(2008年)でもこの曲は弾いています。アルゲリッチにしてみると、このパルティータ第2番は最もハードルの低いソロ曲なのでしょう。



この3曲しか弾いていない

 もっともアルゲリッチならバッハだろうとショパンだろうと、また1曲目だろうと10曲目だろうとどの曲でも「大丈夫」のはずです。またバッハの曲ならそれほど難しさに差はないと思いますが、他の曲はほとんど弾かず、弾くにはこの「パルティータ第2番」と、このCDにある他の2曲(トッカータ、イギリス組曲第2番)だけのようです。



耳が痛い?

 もちろんアルゲリッチの場合、その曲が難しいかどうかという問題ではなく、「完璧な演奏をする自信があるかどうか」ということが問題で、これまでステージで演奏したことのない曲は弾く自信がないということのようです。

 これは極度の”潔癖症”なのか、気が弱いだけなのかわかりませんが、ただ、実生活においてはアルゲリッチは潔癖症にも、気が弱い性格にも全く縁がないようです。・・・・どちらかと言えば「片付けられない女」?

 しかし実際に弾いてしまえば、どの曲でもアルゲリッチ以外の人は完璧な演奏と思うでしょう。もしかしたらアルゲリッチ自身もそう思うかも知れません。 

 ・・・・完璧な演奏には全く程遠いのに、平気でコンサートなど行なっている私としてはとても耳が痛い・・・・



フリードリッヒ・グルダにあこがれて

 アルゲリッチのバッハは、おそらく師のフリードリッヒ・グルダの影響があるものと思われます。グルダには尊敬とあこがれ、そして恋愛感情も混じったいろいろな気持ちを抱いていたようです。アルゲリッチはグルダの知的な演奏にあこがれ、自らも意外にも(?)知的な音楽、演奏を好んだようです。

 アルゲリッチはグルダのようなバッハを目指していたのかも知れません。グルダのバッハはこれまでのピアニズムや因習を捨て、新しい方向からバッハの音楽を表現したと言え、違った形ではありますが、グレン・グールドなどとも共通項があるように思います。



二次元世界には閉じ込められない

 しかしアルゲリッチには、どう転んでもグルダになることは出来ない。アルゲリッチのバッハは、グルダのような線的な2次元世界に閉じ込めることは不可能で、どうしても3次元、4次元の世界にまで浸透してしまう。

 アルゲリッチのバッハはグルダのように音楽の構成美を表現するだけには留まらず、その構成美に加え、色も、香りも、味も加わり、さらにパッションも付いてきます。

 このCDを聴くと、バッハの音楽が、ただ知的好奇心を満足させる音楽ではないことがよくわかります。またこのCDを聴いてしまうと、他のピアニストやチェンバリストの演奏がちょっともの足りなく聴こえてしまう。それにしてもなぜバッハの他の曲を弾かないのか、いや弾かなかったのか・・・・・
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