中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

アグスティン・バリオス


ブログ 019

 この3枚組のバリオスの自演のCDのうち、1枚目の20曲は比較的録音状態の良いものが収められています。2枚目は自演で、録音状態のあまりよくないもの、3枚目は編曲、および他の作曲家の曲となっています。したがって、この1枚目のCDが最も重要なものと言えるでしょう。この1枚目のCDに収められている曲を一応書き出しておきます。


1.タンゴ第2番      
2.ドン・ペレス・フレイレ 
3.ペピータ     
  以上1910~1913年録音
   
4.アイレ・デ・サンバ 
   1924年録音

5.パラグアイ舞曲《第1番)
6.クエカ         
7.ロマンサ《第1番》    
8.マシーシ         
9.アコンキーハ
10.マドリガル《ガボット》
11.Contemplacion~深想
12.ぺリオン
13.Confesion~告白のロマンサ
14.森に夢見る
15.ワルツ第3番
16.大聖堂
  以上1928年録音

17.Oracion~祈り
18.ワルツ第4番
19.南アメリカのハーモニー
20.わが母へ
  以上1929年録音


幸いにも

 この中でも1928~9年録音の、5曲目のパラグアイ舞曲以降のものは1~4曲目や、2枚目のCDなどと比べれば、録音状態はよくなっています。といっても一般的に言えば決してよいものではありませんが、それ以外のものを聴くと、これらのものは結構良く聴こえるから不思議です。この比較的録音状態のよいものの中に「大聖堂」、「ワルツ第3番」、「同第4番」、「森に夢見る」などの人気曲が含まれるのは幸いなことです。



昔のギタリストは意外と速弾き?

 演奏については、この時代の録音はギターに限らず速めのテンポをとる場合が多く、このバリオスの演奏も全体に速めのテンポとなっています。これは収録可能な時間が短いSP盤ということで、自然にそうなるのでしょう。

 もっともセゴビアにせよ、この時代の第一線級のギタリストは意外と速弾きだったようです。タレガも速弾きだったという話もあります。ありえそうなことだと思います。

 SP録音のことについてはあまり詳しくはありませんが、1910~1913年の録音はいわゆる「アコースティック録音」。1924年以降のもは「電気録音」ということなのかも知れません。その違いがはやり音質の違いになっているようです。



当然一発録り!

 当時の録音では、当然のことながら編集など出来ませんから、いわゆる「一発録り」ということになります。また費用の関係からしてそう何回もやり直しは出来なかったものと思われます。したがって細かいミスなどはあまりかまっていられなかったでしょうし、もしかしたらコンサート以上に緊張もしたかもしれませんね。



大聖堂

 全部の曲についてコメントは出来ませんから、これらの曲のうち、最も人気の高く、この前私も弾いた「大聖堂」について内容をコメントしておきます。

 何度か言いましたとおり、この「大聖堂」は比較的状態は良いほうですが、あくまでこのCDの他の曲と比べてと言う意味で、最近の録音と比べたら比較の使用がありません。ただSP盤独特の「サー」というノイズはCD化の際に若干減らしてあるようです。



現在の第2、3楽章

 今現在ではこの「大聖堂」は3楽章の形になっていますが、その第1楽章にあたる「プレリュード」はバリオスの晩年に付け加えられたということで、おそらくバリオス自身はこの現在の第2、第3楽章の2楽章の形でしか演奏していなかったのではないかと思います。


意外とイン・テンポ

 バリオスもリョベットやセゴヴィアと同じく、曲によってはテンポや音価を自由に変えて演奏するスタイルですが、しかしこの第2楽章(現在の)に関しては、はかなりイン・テンポを保っています。付点音符がやや三連符気味ですが、途中でテンポを変えることもなく、また音価をデフォルメすることもしていません。敬虔な気持ちを表すためなのでしょう。この時代の巨匠たちも、必要があればイン・テンポで弾くのでしょう。

 全音出版のベニーテス編の譜面と比較すると、和音のオクターブ関係など部分的には多少異なりますが、大きく違うというほどでもありません。なお冒頭の「レ、ファ#」の二つの8分音符は弾いていません。


小さいことは気にしない

 第3楽章はやはり全音版とそれほど違いはありませんが、リピートを省略するなど、少し短くなっています。収容時間を考慮してでしょうか。この楽章はややゆっくり目に始まりますが、終わりに向かってだんだん速くなって行きます。多少の音抜けや弦の”ひっかけ”があるのは、やはり1発録りの関係でしょうか(録音の関係であまり目立ちませんが)。もっともそういったことはこの時代、あまり問題にしなかったのでしょう。


後は想像力で・・・・

 もちろん私たちとってバリオスがどんな演奏をしたかということについては、粗悪な音質ながらも、この録音を聴くしかないのですが、いろいろ状況を考えると、実際の演奏とはかなり違っている可能性もあります。現在のデジタル録音でも”生”と”録音”では印象がだいぶ違ってしまう訳ですから。大事なのはこれらの残された録音を元に、各人が想像力を働かせることなのでしょう。
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