中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

ブログ 019

バリオス自演の2枚目と3枚目のCD

 このバリオス自演の3枚組のCDの2枚目には比較的あまり演奏されない曲が入っているのですが、残念ながら音質はかなり悪く、3曲目の「ホタ」などなかなか面白い曲なのですが、ノイズが凄いだけでなく、冒頭のところなど、盤が歪んでいるのか音程も変ってしまっています。それでも「Luz mala estilo」、「Mazurca isarita」、「アイレ・デ・サンバ」などは比較的聴ける状態です。


アラビア風奇想曲を2度録音

 3枚目のCDは編曲作品、他のギタリストなどの作品となっています。他のギタリストの作品としてはタレガの「アラビア風奇想曲」を2度にわたって録音していいて、このうち1928年のものは比較的よい状態になっています。SP録音の関係で最初の(ニ短調の)部分はリピートを省略し、全体をやや速めに演奏しています(3:26)。

 当時の巨匠たちの特徴と言えると思いますが、バリオスも速い部分はよりいっそう速く弾く傾向にあります。特に16分音符で書かれた半音階など、2倍位の速さで弾いています。こうしたことで”締まった”感じや、表現の強さが出るのでしょう。セゴヴィアなどにも同様のことがいえますが、バリオスのほうがそうした傾向は顕著です。



バッハのルール?

 バッハの「ルール」として演奏しているのはチェロ組曲第3番の「ブレー」ですが、タレガがなぜか「この「ルール」の曲名でアレンジしており、そのタレガ編のためにこの曲名になっています。「ルール」と「ブレー」では全く違う舞曲なので、なぜタレガがこの曲名にしたのかは、全くわかりません。


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タレガ編バッハの「ルール」。原曲は無伴奏チェロ組曲第3番の「ブレー」。Oberas Escogidas社の初版より。


 タレガ編では原曲のハ長調を9度上げて二長調とし、なお且つ音もかなり加えているので一般的に弾かれるイ長調版に比べると華やかですが、かなり難しくもなっています。バリオスの演奏は、タレガ編にかなり忠実に演奏となっていて、確かにイ長調版よりもスリリングに聴こえます。

 セゴヴィアも1952年にこのタレガ編「ルール」を録音していますが、後にチェロ組曲第3番全曲をデュアートのアレンジで録音しています。もちろんその中では「ブレー」となっています。

 シューマンの「トロイメライ」は5弦、6弦を「ソ」、「ド」としたハ長調で演奏していますが、セゴヴィアの編曲もこの形をとっています。ベートーヴェンの「ト長調のメヌエット」を2回にわたり録音しています。現在では通常のギターのコンサートなどではあまり演奏されない曲ですが、当時は人気があったのでしょう。
 


バリオスの作品の他のギタリストによる演奏

 今回は作曲家としてのバリオスではなく、ギタリストとしてのバリオスを聴いてゆこうということですが、参考として、最近のギタリストによって演奏されているバリオス作品集のCDについてもコメントしたいと思います。

 若干個人的なことになりますが、私がギターの事情などについて多少なりともわかるようになったのは1970年以降なので、1950~60年代のことについてはよくわからないのですが、その年代ではバリオスの作品はまだまだ珍しかったのではないかと思います。

 その時代(1950~60年代)、ギター界で注目の的だったのは何といってもアンドレ・セゴヴィア、そしてナルシソ・イエペス、ジュリアン・ブリーム。いずれもバリオスの作品は演奏していません(晩年にイエペスは大聖堂を録音している)。バリオスの作品がリサイタルのプログラムに載ったり、録音されたりということは非常に少なかったのではないかと思います。



ギターの魔王として恐れられ・・・・

 1969年に出版された音楽之友社の「ギター基礎講座」に小原安正氏がバリオスについて比較的詳しく書いています。その中で、「バリオスはギターの魔王と恐れられ・・・・ セゴヴィアでさえもバリオスを最大の敵とおそれ・・・・ 」と紹介されていたのが印象的でした。

 私がバリオスの名前を知ったのはこの本によってですが、実際にその曲を聴いたのは1972年頃、荘村清志さんのデビュー・アルバムによってです。このアルバムにはバロック作品やスペインのギター曲に混じってバリオスの「郷愁のショーロ」が入っていました。荘村さんリサイタルでも聴きましたが、当時この曲はギター部内でも人気曲となっていました。


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荘村清志さんの東芝EMIからのデビュー・アルバム(1972年)。バロックやスペインものの他、バリオスの「郷愁のショーロ」が収められている。


 この曲には6フレットから1フレットまで指を拡げるところがあり、バリオスという人はとても手の大きい人なんだなと思いました。手の小さい私にはもちろん全く届きませんが、当時は私の周囲にはここを押さえられる人はあまりいなかったように思います。しかし最近では日本人でも、特に問題なく押さえられる人もかなり多くなってきて、それほど特別な箇所ではなくなってきているようです。


ブログ 022

トリビオ・サントスの大聖堂が収められた1976年発売のLP。当時サントスは、このバリオスの他ヴィラ・ロボス、ラウロ、ペルナンブコ、サントルソラ、ブローウェルなど南米の作曲家の作品を多数録音していた。


 「大聖堂」を聴いたのは1976年頃発売されたトゥリビオ・サントスのLPによってですが、サントスも第1楽章の「プレリュード」なしで弾いています。当時はこれが普通だったようです。他に「前奏曲ト短調」も入っていました。当時トゥリビオ・サントスはヴィラ・ロボスの「12の練習曲」を全曲としての世界初録音とか、ラウロやぺルナブコ、サントルソラ、チャベスといった南米の作品を録音するなど、意欲的に南米の作品を紹介していました。私がブローウェルの作品を知ったのもこのサントスのLPからでした。


ブログ 023

ジョン・ウィリアムスの1977年発売のバリオス作品集。ウィリアムスは1994年にもバリオス作品集を録音している。このLPは今日のバリオス人気の火付け役と言える。


 しかし何といっても一般のギター愛好家たちにバリオスの作品が浸透するようになったのは、この1977年に発売されたジョン・ウィリアムスのバリオス作品集。初のバリオス作品集と言えますが、それが当時”飛ぶ鳥も落とす勢い”の超人気ギタリストのジョン・ウィリアムスの録音とあっては注目を浴びないはずはない。

 さらに時を同じくして全音出版からベニーテス編の楽譜も出され、あっと言う間にバリオス・ブーム到来。以後今日までバリオスの作品はギターのレパートリー上でたいへん重要な地位を占めることとなります。
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