中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

バリオス ギター独奏曲全集(6枚組)  クリスティアーノ・ポルケドゥ

ブログ 029

 このアルバムはバリオスのギター独奏曲を6枚のCDに収めたもので、おそらく現時点での唯一の独奏曲全集だろうと思います。演奏は1975年、地中海のサルディニア島のヌオロに生まれたクリスティアーノ・ポルケドゥです。1975年生まれと言うことですから、今年37歳になるのでしょうか。因みにサルディニア島はナポレオンの出身地で有名なコルシカ島の南側にあり、イタリア領のやや大きめな島です。


ブログ 032



アルファベット順に曲が並んでいる

 このアルバムはアルファベット順に曲が並んでおり、”辞典”のようになっています。全集としての位置づけを考えてということだと思いますが、ギター愛好者が練習する際の参考にする時のことも配慮しているのでしょう。



独奏曲のみ110曲収録。世界初録音7曲 

 1枚のCDには10数曲から20曲程度収められていて、全部で110曲収録されています。おそらく現存するバリオスの独奏曲のすべてが収録されているのでしょう。確かに聴いたことも、見たこともない曲がかなり含まれています。これらのうち7曲は世界初録音ということです。

 この110曲というのはあくまでオリジナルの”ギター独奏曲”ということで、二重奏曲や編曲ものは含まれていません。バリオスの自演のCDからも推測出来るとおり、バリオスには編曲作品も多数あると思いますが、その中にはオリジナル作品に限りなく近いものもあると思われますので、そうしたものも、いずれは録音されたり、出版されたるするのではと思います。



意外とあるスペイン風の曲。タレガ以上にフラメンコ的

 これまであまり演奏されない曲で印象的なもとしては、「アンダルシアの歌 Aires andaluces」、「ホタ Jota」、「スペインの伝説 Leyenda de Espana」、「スペイン奇想曲 Capricho espanol」などのスペイン的な曲です。

 これまでバリオスの作品と言えば、南米風か、あるいはロマン派風の作品といったイメージがあるのですが、意外とこうしたスペイン的な曲が結構あるようです。特に「アンダルシアの歌」などはアルベニスやタレガ以上にフラメンコ的な曲です。なかなか面白く、一般の受けもよいのではと思いますが、バリオスというと南米音楽というイメージがあるので、こうした曲はあまり演奏されないのでしょうか。

 おそらく今後はこうした曲もコンサートのプログラムに載るようになるのではないかと思います。因みにここで演奏されている「スペインの伝説」はベニーテス版とはかなり違うようで、このCDのものほうが長く充実したものになっています。
 

タンゴもある。なぜかジョプリン風

 また「タンゴ第2番」や「ドン・ペレス・フレイレに捧ぐ」などのタンゴ風の曲もあります。「タンゴ第2番」はもちろんタンゴのリズムで出来ていますが、何となくスコット・ジョプリンのラグタイムに似ています。同様に「Abrila puerta mi china~邦訳不明」もタンゴ風でやはりジョプリンの曲に似ています。「La bananita~浴女?」もリズムは違いますがジョプリンの曲に似ています。おそらくジョプリン風のメロディや伴奏の付け方はこの時代の流行だったのでしょう。これらの曲はなかなか楽しい感じの曲です。



ヴァイオリン風もチェロ風もある

 その他では、「Divagacion en imitacion violin~ヴァイオリンを模した即興曲」はジプシー風のヴァイオリンを思わせる曲で印象的。「Romanza en imitacion viorincello~チェロを模したロマンサ」と言う曲もあります。「La samaritana~サマリタ人」、「Oracion~祈り」、「Oracion por todos~すべての祈り」などもしみじみとした美しい曲。「Serenata morisca~モーロ風セレナード」はスペイン的でもあり、ジプシー風でもある曲。



ガラニー族に因む2つの曲

 世界初録音の曲としては「Leyenda gurani~ガラニーの伝説」、「Diana guarani~ガラニーの太鼓」というブラジル、およびウルグアイの先住民であるガラニー族に因んだ曲があります。「Leyenda gurani」のほうは幻想的な曲。「Diana guarani」のほうは軍楽隊の音楽を模したような曲で、低音弦を交差させて小太鼓を模した奏法やタンボラートなど特殊奏法をふんだんに使ったエンターティーメント的な曲です。どちらも10分近く、バリオスの作品としては大曲に属しますが、これらの曲がなぜこれまで埋もれていたのでしょうか。「Bicho feo~醜い虫?」も短い曲ですが、なかなか面白い曲。



私たちバリオス観はまだ一面的

 バリオスの作品が頻繁にコサートのプログラムに載るようになってからすでに40年くらいにはなると思いますが、私たちがこれまで聴いてきた(あるいは弾いてきた)曲は、まだまだ一部の曲のみのようです。この全集を聴いてみるとバリオスの作品は私たちが、これまで思っていた以上にバラエティに富んでいるようです。今後はこうした、これまであまり演奏されなかった曲もどんどんプログラムに載るようになるのは間違いないでしょう。それに従い、私たちのバリオス像もだんだん変ってゆくでしょう。



音楽の内容を正しく届けてくれる ~愛好者必携 ブリラント盤 2859円

 このアルバムは、価格のほうも6枚組で2859円(HMV価格 ブリラント盤)と比較的買いやすいと思いますので、バリオスに興味のある方には必携ではないかと思います。最後になりましたが、ポルケドゥによるこのアルバムの演奏もたいへん優れたもので、バリオスの音楽の内容を正しく私たちに伝えてくれていると思います。これまで紹介したウィリアムス、ラッセル、フォルホルストなどに比べると若干音が軽い感じもしますが、それはむしろ前の3人のギタリストの音がとても重厚であることを示しているのでしょう。
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