中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

シャコンヌの概要

 ご存知の方もいるとは思いますが、この曲についての概要を書いておきます。1685年に生まれたバッハは、1717年〜1723年にかけて中部ドイツにあるケーテンの宮廷で仕事をしていました。バッハはその生涯の多くは宗教音楽に携わることが多かったのですが、ここでの仕事はその宗教音楽からは離れ、器楽関係が主で、この期間にバッハの数々の器楽の名曲が作曲されました。
 シャコンヌも含まれる「通奏低音を伴わないヴァイオリンのための6つの独奏曲」もここで作曲され、バッハ自身の手で清書された楽譜には1720年と記されています。これは「ソナタ」と題されたものと「パルティータ」と題されたものが交互に、「ソナタ第1番ト短調」、「パルティータ第1番ロ短調」、「ソナタ第2番イ短調」、「パルティータ第2番ニ短調」、「ソナタ第3番ハ長調」、「パルティータ第3番ホ長調」の順に並んでいます。現在では「3つの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」と「3つの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ」と呼ばれています。あえて「無伴奏」としているのはヴァイオリンの場合は「伴奏」が付くのが普通だからです(バロック時代では通奏低音)。


他に例がない「無伴奏」

 無伴奏のヴァイオリン曲を作曲したのは別にバッハが最初ではなく、またバッハ以後も作曲されていますが、その無伴奏のバイオリンの作品にこれほどまでに高度な和声法や対位法を用いたのは、他に例がないと思います。本来旋律楽器であるヴァイオリンの「それなりに」和声を付けたのではなく、たいへん高度な、「最先端」の和声の曲に仕上げています。しかもたいへん少ない音でそれを実現して、それは全く他に例がないと思います。


無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調

 このシャコンヌは「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調」に含まれます。「パルティータ」は、普通「組曲」と訳され、アルマンドやクーラントなどの古典舞曲で構成されます。この「パルティータ第2番」はアルマンド、クーラント、サラバンド、ジグといった標準的な舞曲の後に、異例の長さのこの「シャコンヌ」が続きます。シャコンヌとは「スペイン起源の3拍子の舞曲」ということですが、この時代にはその低音を主題とした変奏曲として作曲されるようになりました。このシャコンヌも8小節のテーマ(4小節とも考えられますが)に30の変奏が続き、最後にまたテーマが現れます。小節数からすれば、8×32=256と数字的に割りのいいものになっています。またシャコンヌ自体が変奏曲であるばかりではなく、よくみると先行の4つの舞曲もシャコンヌと密接な関係があるようです。シャコンヌの低音は、レ--ド#--レ--シ♭ となっていますが、他の舞曲も冒頭の低音はすべて、レ--ド#--レとなっていて、このパルティータ全体が一つの変奏曲のようにもなっているようです。


シャコンヌのイメージ

 シャコンヌというと、なんと言ってもこのバッハのシャコンヌが有名なので、「高度な内容の重厚な音楽」といったイメージになると思いますが、本来シャコンヌというのはそうではないようです。低音が決まっているということは和声進行が決まっているということで、同じ和声進行の上に作曲するわけですから、音楽的にはむしろ単純になるわけです。後は如何に装飾をほどこすかということになり、それらは作曲家だけでなく、さらに演奏家が付け加える場合も多かったようです(当時は作曲家=演奏家の場合が多かったようですが)。つまりもともとはシャコンヌとは「決まった低音の上に演奏者などが自由に装飾を加える曲」ということで、どちらかといえば、気楽な曲だったのではないかと思います。もちろんそのイメージを一変させたのはバッハその人です。


意外と少ないシャコンヌ

 シャコンヌというと、フーガと並び、バロック時代の典型的な曲というイメージがありますが、一般に知られている「シャコンヌ」は意外と少ないようです。ギター関係でもバッハの曲以外の曲ではヴァイスの曲(明日=17日にギター文化館でこの曲も弾きますが)が知られているくらいでしょう、私もそれ以外はあまり知りません。バッハもシャコンヌは「この」1曲しか書いていません。この曲の出来に満足したことも考えられますが、変奏曲という形では得意の和声法を自由に駆使しにくいからかも知れません。いやそんなことはあり得ないでしょうか、なんといっても変奏曲史上最大の傑作「ゴールドベルク変奏曲」があるわけですから。




 *明日(9月17日)のギター文化館のミニ・コンサートに出演します。詳細は以前書きましたのでそちらをご覧下さい。pm.2:00〜はタルレガの小品など、4:00〜はこのシャコンヌ(バッハとヴァイス)などを弾きます。

 
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