中村俊三 ブログ

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セゴヴィア初録音 ~1927年

 セゴヴィアがSP時代、つまり1927年~1939年の間に録音したものを、具体的にコメントしてゆきます。なお、復刻版のLPやCDでは録音年代順ではなく、作曲家や作品の年代などでまとめて曲が並べてありますが、LPジャケットに書かれたデータをもとに録音年代順に整理してみました。


1927年5月2日録音

 ガボット(無伴奏Vnパルティータ第3番~バッハ)
 クーラント(無伴奏チェロ組曲第3番~バッハ)
 モーツアルトの主題による変奏曲(ソル)

同 5月20日録音

 ファンダンギーリョ(トゥリーナ)
 アレグレット(ソナチネ第1楽章~モレーノ・トロバ)
 アランブラの想い出(タレガ)



なかなかよい音質

 LPジャケットのデータによれば、1927年5月に録音されたこの6曲がセゴヴィアの初めての録音となるようです。セゴヴィア34歳となるでしょうか。年代からすれば、アコーステッィック録音ではなく、「電気録音」と考えてよいでしょう。前に紹介したリョベットやバリオスの録音と年代的にはほとんど同じですが、それらに比べるとかなり良い音質です(SP録音という範囲内ですが)。元々の録音もよかったのかも知れませんが、盤の保存状態もよいようです。もしかしたら原版のようなものがあったのかも知れません。

 これらの録音は1940年代の録音(おそらく磁気テープによる録音)と比べても遜色ない感じで、曲によってはSP盤独特のノイズがありますが、かえって聞きやすい感じです。これらの録音よりも明らかに音質がよくなるのは、1950年代を待たなければなりません。


しかしピッチは半音ほど高い

 ただしリョベットやバリオスの場合と同じく、ほとんどの曲が、半音ほどピッチが高くなっています(少なくともブリラント・レーヴェルの10枚組では)。時代が古いほど高くなっているような気もします。これらのピッチを合わせることなど、現在の技術なら全く問題ないと思われますので、CD化の時にもう少し配慮して欲しいと思います。
 

意外?とイン・テンポ

 この6曲は、表裏1曲ずつ3枚のSP盤として発売されたのではないかと思いますが、どのような組み合わせだったのかはわかりません。バッハの「ガボット」の含まれる「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番」は「リュート組曲第4番」と同じ曲で、最近ではこの「ガボット」はそのリュート組曲の方の譜面で弾かれることが多いのですが、セゴヴィアが弾いているのは、自らヴァイオリンの譜面から編曲したものです。

 セゴヴィアの演奏と言うと常にテンポ・ルバートして演奏しているイメージがありますが、この「ガボット」は次の「クーラント」同様に、意外とイン・テンポに近くなっています。少なくともバリオスやリョベットに比べるとテンポの変化は少ないようです。


ファンにはたまらないものかも知れないが

 ただし特定の音、特にスラーの頭などに強いアクセント(アクセントと言うよりはスフォルツァンドに近い)があり、特に「クーラント」でそれがそれが目立ちます。これはセゴヴィアの演奏の大きな特徴とも言え、セゴヴィア・ファンを魅了した点でもあるのかも知れませんが、最近のギタリストの演奏に鳴れた耳には不自然に聴こえるのではと思います。



こちらはセゴヴィアらしい

 有名な「魔笛の主題による変奏曲」はSP盤に収める都合上、序奏を省略し、テーマや変奏の繰り返しも省いて、3分半ほどで演奏しています(楽譜どおりに演奏すると8~10分)。この「序奏省略」は1960年代くらいまで多くのギタリストが踏襲していました。

 こちらのほうは、ある意味「セゴヴィアらしい」といった感じで、ルバートというより、原曲の音価(音符の長さ)をあまり守らず弾いています。特に付点音符はほとんど守られていません。多くのファンに親しまれ、また多くのギタリストに影響を与えた演奏なのでしょうが、いろいろな点でソルの意図からは遠いように感じます。



最新作2曲

 ホアキン・トゥリーナの「ファンダンギーリョ」は3分55秒と、おそらくSP盤の収録可能の時間ぎれぎれなのではないかと思います。SP録音では収録時間が足りなそうな時、回転数を落として録音することもあったようですが、不思議とこの曲ではピッチがほとんで上がってなく、従って録音時の回転数は落としていないようです。

 この曲の作曲が1926年ということですから、作曲された次の年にセゴヴィアによって録音されたことになります。まさに「出来立てのホヤホヤ」というところでしょうか。

 この曲の演奏ではセゴヴィアは音色の変化を自在に使っていて、この録音からでもそれがたいへんよくわかります。「SP盤侮り難し」といったところでしょうか。セゴヴィアの演奏も、この曲の演奏の規範となる名演と言えるでしょう。

 次のモレーノ・トロバの「アレグレット」は「ソナチネ」の第1楽章で、セゴヴィアは「アレグレット」というより「アレグロ」といった感じの速めのテンポで演奏しています(このCDではピッチが上がっているので、実際はこれより少し遅め)。この曲も作曲されて間もない曲だと思いますが、たいへん活き活きと演奏されています。「ファンダンギーリョ」同様優れた演奏。



やや一本調子?

 「アランブラの想い出」はSP盤に収めるためにダ・カーポを省略(前後半2回ずつ)して録音しています。バッハの場合と同様に所々に強いアクセントが置かれていますが、この曲の場合は各フレーズの最初の低音が強く弾かれています。1950年代にも録音していますが、こちらは譜面どおりのリピートもダ・カーポもしています。歌わせ方などにはやはり後年のものが若干優れているように思います。それに比べるとこの1927年の録音はやや一本調子かな?



セゴヴィアのレパートリーの縮図

 この年(1927年)の録音はセゴヴィアにとって記念すべき初録音となり、セゴヴィア自身もおそらく選曲には熟慮したと思われます。セゴヴィアが終生演奏し続けたバッハの作品が2曲。クラシック・ギターを代表する二人のギタリスト、ソル、タレガの代表作を1曲ずつ。そして二人のスペイン人作曲家による新作を2曲とバランスよく収録しています。セゴヴィアの生涯のレパートリーの縮図とも言えます。
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