中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

セゴヴィアの1950年代の録音の続き

しばらく間が空いてしまいましたが、セゴヴィアの1950年代の録音、メジャーレーヴェル、米デッカに専属契約になってから2枚目のLPの紹介です。


アンドレス・セゴヴィア・コンサート 1952年4月録音

ルイス・ミラン : ファンタジア第16番
ロベルト・ド・ヴィゼー : 組曲ニ短調
  プレリュード、アルマンド、ブーレ、サラバンド、ガヴォット、ジーグ
フェルナンド・ソル : モーツァルトの主題による変奏曲
G.F.ヘンデル : アレグロ・グラチオーソ、 ガヴォット
J.S.バッハ : ブーレ(無伴奏Vnパルティータ第1番)、クーランテ(無伴奏VC組曲第3番)
マウロ・ジュリアーニ : アレグロ・スピリッツ(ソナタハ長調作品15第1楽章)
マヌエル・ファリャ : ドビュッシー賛
エイトール・ヴィラ・ロボス : 練習曲第7番


    ブログ 067

このLPもオリジナル・ジャケット入りのCDとして復刻され、かつてのLPと同様の形で聴くことが出来る。


バロック音楽が主で、「魔笛」も入っている

 前回のLPと同じ時期に録音されたLPですが、バロック時代の作品が大半を占め、それにソル、ジュリアーニの古典派、ファリャ、ヴィラ・ロボスの近代作品が収録されています。またセゴヴィアはこの頃から16世紀のスペインのビゥエラ奏者のミラン、ナルバエス、ムダラなどの作品を積極的に録音しており、このLPではミランのファンタジアを冒頭に収めています。


ド・ヴィゼーの「組曲二短調」は”ほぼ”全曲演奏

 ヴィゼーの「二短調組曲」については以前にも録音していましたが(自作と組み合わせて)、今回は”ほぼ”全曲録音といった形で、オリジナルの全9曲中、クーラントとメヌエットⅠ、Ⅱを除いた6曲を演奏しています。なお「メヌエットⅠ」は「エントラーダ」として、「メヌエットⅡ」は「メヌエット」として過去(1939年、1944年)に録音しています。「クーラント」のみ録音されていません。


「ブーレ」と「ガボット」が同じように聴こえる

 セゴヴィアが実際にどのような譜面を用いていたのかはわかりませんが、「ブーレ」は前にも触れたとおり、コスト編をもとにしているようで、本来8分音符2個の音を4分音符2個に変更しています。当時(17~18世紀)の習慣からすれば、これでは「ブーレ」ではなく、「ガヴォット」になってしまいます。この組曲には本来の「ガヴォット」も存在し、確かに、この演奏で聴くと「ブーレ」と「ガヴォット」とが似たような曲に聴こえます(ブーレのほうがやや速いが)。


セゴヴィア編と言える「魔笛」

 ソルの「モーツァルトの『魔笛』の主題による変奏曲」については、今回はリピートは原曲どおりに行っていますが、序奏は省略されています。確かにこの時代(1950年代)ではこの「序奏なし」の形が一般的で、他のギタリストもそのように演奏していました。序奏付けて演奏するのが普通になったのは(本来は当然のことだが)、意外と最近、つまり1970年代以降ということになります。

 音価の変更(特に付点音符)をはじめ、オリジナルの譜面からするとかなり変更が加えられ、まさに「セゴヴィア編」と言えるものですが、それらの変更には共感し難いところもあります。


ヘンデルとバッハ

 ヘンデルの2曲はハープシコード曲集「エイルズホードの8つの小品」をセゴヴィア自身がギターに編曲したもので、ショット社から楽譜も出版されています。「アレグレット・グラチオーソ」はイ短調(セゴヴィアの編曲では)のメヌエット、「ガヴォット」はハ長調に編曲されたもので、それぞれ親しみやすい曲です。

 バッハの「クーラント」は3度目の録音ですが、後に「チェロ組曲第3番」を全曲録音しているので、この曲は生涯に少なくとも4回録音していることになります(ライブ録音を除いて)。やはりセゴヴィアの愛奏曲といえるでしょう。演奏のほうは年齢を重ねるごとにマイルドになってくる感じで、この演奏では最初の録音(1927年)のような強烈なアクセントは影を潜めています。


意外と端正なジュリアーニ

 ジュリアーニの「ソナタハ長調作品15」の第1楽章「アレグロ・スピリット」は「魔笛」の演奏に比べると、あまり極端な音価のデフォルメはなく、比較的イン・テンポに近い演奏です(気持ち前のめり気味だが)。題名どおりの「活きの良さ」もよく出ています。


「ドビュッシー賛歌」を初演したのはセゴヴィア

 マヌエル・ファリャの唯一のギター独奏曲「ドビュッシー賛歌」は、リョベットに献呈されましたが、初演はセゴヴィアが行ったそうです(1922年、マドリッド)。この録音が初録音かどうかはわかりませんが、それに近いものでしょう。


スケール好きのギタリストの格好のレパートリー

 ヴィラ・ロボスの「12の練習曲」は1929年に作曲されましたが、出版は1953年で、このLPの録音時にはまだ出版されていません。セゴヴィアは1949年に「第1番」と「第8番」を録音し、このLPで「第7番」を録音しています。第1、8番は後に再録もしていますが、セゴヴィアが録音したのは全12曲中、この第1、7、8番の3曲のみで、リサイタルなどでもこれ以外の曲は演奏していないようです。因みにこの「12の練習曲」全曲の初録音は1971年頃のトリビオ・サントスによるものだと思います。

 速いスケール(音階)で始まるこの「第7番」は12曲の中でも人気曲で、スケールの得意なギタリストの格好のレパートリーとなっています。もちろんセゴヴィアも気持ちのよいスケールを聴かせてくれます。
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