中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

ヴィドヴィッチを聴くのは1999年のデビューCD以来

 当ブログのローリエイト・シリーズでも紹介したクロアチアの女性ギタリスト、アナ・ヴィドヴィッチのリサイタルを、つくば市ふれあいプラザホールで聴きました。ヴィドヴィッチの演奏は、1999年のナクソスのデビュー盤(ローリエイト・シリーズ)を聴いただけで、特に最近の演奏は聴いていません。もちろん演奏を生で聴くのも初めてです。

新進演奏家 008
1999年録音のナクソス盤


 そのCDでは少女らしからぬ強靭な音

 そのナクソス盤の印象では、どの曲もかなり速めのテンポで演奏し、またいかにも少女らしい写真からは想像つかない強靭な音の持ち主といったものでした。しかし一方でどのような音楽を目指しているかなどは今一わかりにくかったように思いました。ただその時点ではヴィドヴィッチはまだ10代。それから13年経た今現在ではどんなギタリストになっているのでしょうか。



本当にここでいいのかな?

 リサイタルの会場となっている「つくば市ふれあいプラザホール」をネットで検索してみると、思っていた場所とはずいぶんと違うところが表示されました。本当にいいんだろうかと思いながらも、カーナビだよりに出発しました。そのホールは、つくば市といっても中心街からはかなり離れた、旧茎崎町の運動公園の中にありました。

 ロビーにはまだ開場時間前にもかかわらず結構長い列、顔見知りも多数。300席くらいのキャパシティと思われる
この会場も、結果的にほぼ満席となりました。やはり今話題の人気ギタリストです。


プログラム

M.C.テデスコ : ソナタ「ボッケリーニ賛歌」(全4楽章)
武満徹編曲 : 「12の歌」よりシークレット・ラブ、 オーヴァー・ザ・レインボー、 イェスタディ
F.タレガ : アランブラの想い出
I.アルベニス : グラナダ、 アストゥリアス
 
A.ピアソラ : 「タンゴ組曲」より第1、第2楽章 ~角圭司との二重奏
J.S.バッハ : リュートのためのプレリュード、フーガ、アレグロBWV998
A.バリオス : 大聖堂
W.ウォルトン : 5つのバガテル


 アンコール曲 
ファリャ : スペイン舞曲第1番 ~角圭司との二重奏
マイヤーズ :カヴァティーナ



あどけない少女から典型的なヨーロッパ美女へ

 ヴィドヴィッチというと、どうしてもデビューCDのあどけない少女姿をイメージしてしまいますが、今は現在は30代、当然大人の女性になっています。ステージの登場したヴィドヴィッチは長身で典型的なヨーロッパ美女といった感じです。モデルか女優と言われてもおかしくないでしょう。


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なんと、ソナタ「ボッケリーニ賛歌」からスタート

 かすかな音で調律を確かめた後で弾き出したのは、テデスコの「ソナタ・ボッケリーニ賛歌」。この曲はギターではかなり難しい曲で、普通ならもっと後のほうで弾きたくなる曲だと思いますが、ヴィドヴィッチは何と、この難曲からリサイタルをスタートさせました。

 冒頭の2個の16分音符を少し長めにとって第1楽章が始まりました。楽器は杉材のものを使用していますが、購入したCDには、オーストラリアの製作家、J.K.Redgate の楽器使用と書いてありました。 明るく、高反発の音で、離れた客席にもよく通る音です。


中身(演奏)も以前のものとは全く様変わり

 テンポは速めではあるのですが、その速さはほとんど感じさせず、以前のCDのようなひたすら疾走する感じは全くありません。聴いている限りでは音量や音色の変化など、表現の豊かさのほうが際立って感じられます。テンポの変化は漠然と聴いた感じではイン・テンポに聴こえますが、微妙にコントロールされています。

 音色もCDでは硬質に感じたのですが、ここで聴く限りでは、弾力性と柔軟性のあるものに変っています。譜面にして1ページも曲が進まないうちに、以前のCD印象とはまるで違う演奏であると感じました。

 第三楽章の「メヌエット」では主旋律を歌わせる一方で、低音部は正確にスタッカートしており、気持ちよく聴けます。アティキュレーションもかなりしっかりしています。

 第4楽章の「ヴィーヴォ・エネルジコ」もなどギタリストによっては、ひたすら自分の指の運動能力の高さを誇示することに専念したりするのですが、全くそのようなことからは遠い演奏でした。速いテンポにも関らず旋律を表情豊かに歌わせているので(若干粘りを感じるくらい)、テンポ自体もとても自然なものに感じられます。



トレモロはpmim? それにしても全くノイズ・レス

 「アランブラの想い出」は角君が書いた解説に「独自の運指でトレモロを弾いている」と書いてあります。ヴィドヴィッチがアランブラを弾き始めると、それは”もの凄く”揃った(変な表現ですが)、美しい音でした。もちろんそれなりのスピードで弾いているのですが、その一音一音を100パーセント、いや120パーセントコントロールしているように聴こえます。

 トレモロの数(3個)は変らないようなので、指順が違うのだろうけど、imaとかではなさそうだ。はっきりとはわからないがimのみの2本指のようです。最前列で聴いていた(見ていた)Kさんによれば、pmimの順ではないか、と言っていました。

 確かに指が速く動く人なら十分に考えられる方法です。下手に薬指を使うより、imのみのほうがコントロールしやすい。とは言っても私などがやったら相当遅くなってしまいます。

 それにしてもノイズが全くない。振動している弦に爪が触れれば当然ノイズが発生します。それを避けるには一度皮膚の部分で弦に触れ、その後爪で弾けばよいのですが、トレモロを弾くスピードではなかなかそれが出来ない。もっとも、最近の若いギタリストは、たいていノイズなしでトレモロを美しく弾く。



以前のCDからは想像出来ない妖艶な魅力

 角君との二重奏のピアソラの「タンゴ組曲」の第2楽章では、旋律を妖艶とも言えるほど表情豊かに歌い上げていました。このようなこと以前のCDからは全く想像できないことです。


バッハでは以前の強靭な音

 バッハの作品はとても力強い音で演奏し、以前のCDの音を思い出させます。ヴィドヴィッチの中ではバッハは堅固で強い音楽なのでしょうか。しかし次のバリオスの「プレリュード」ではまた一転してとても繊細で美しい音で旋律を奏でます。

 ウォルトンの「5つのバガテル」はデビューCDにも入っていましたが、その印象とはまるで異なり、立体感と柔軟性のある演奏になっていました。


最後は謎解きをするように

 アンコールの最後の曲として演奏したマイヤーズの「カヴァティーナ」では、謎解きをするかのように、ヴィドヴィッチは、自らのパレットの中身を、私たち聴衆に広げて見せてくれました。そのパレットの中には私たちが思っている以上のたくさんの絵の具が入っていました。




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