中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

アンドレス・セゴヴィアの夕べ  1954年録音

G.フレスコヴァルディ : アリアと変奏、 コレンタ
M.カステルヌオーヴォ・テデスコ : 悪魔の奇想曲
M.ポンセ : 6つの前奏曲
J.F.ラモー : メヌエット
A.タンスマン : カヴァティーナ組曲
 1.プレリュード、2.サラバンド、3.スケルツィーノ、4.舟歌、5.ダンサ・ポンポーザ
F.モレーノ・トロバ : ノクトゥルーノ
 


ブログ 069


1954年に3枚のLP、音質はより向上

 3枚のLPを録音した1952年から2年して、セゴヴィアは1954年に同じデッカ・レーヴェルで「アンドレス・セゴヴィアの夕べ」、「アンドレス・セゴヴィア・プレイズ」、「アンドレス・セゴヴィア・シャコンヌ」の3枚のLPを録音します。

 この2年間に、まだモノラル録音ではあるものの、音質はかなり良くなってきます。前回までの録音にあったやや不快な音もなく、かなり美しい音で、より忠実にセゴヴィアの音を再現出来ているように思います。1950年代というと、録音技術的にはまだまだ発展途上で、場合によっては劣悪な音質の録音もあるのは確かですが、これらの録音は、その時代を考慮するとかなり良いものではないかと思います。


伝説のセゴヴィア・トーン ~ハウザー1世も絶好調

 セゴヴィアは1960年頃までハウザー1世を使っているわけですが、やはりセゴヴィアの音にはこのハウザー1世がもっとよく合っているのではと思います。そのハウザー1世から繰り出す多彩な音色、さらにポルタメント、ヴィヴラートといったものもたいへん美しく再現出来ています。愛好者の間では、いつしかこうしたものを総じて「セゴヴィア・トーン」と称することになったのでしょう。


活動の絶頂期といってもよいのでは

 1960年からは楽器がホセ・ラミレスに換わり、録音方式もステレオ録音となります。音質もよりいっそうよくなってくるわけですが、でもやはりセゴヴィアの演奏はこの1950年代半ばのものが最も魅力的といってよいのではと思います。この時代はセゴヴィアの録音の絶頂期でもあり、やはり演奏家としての活動の絶頂期でもあるように思います。この時期セゴヴィアは60代。


それぞれのLPにコンセプトが感じられるようになった

 LP全体の印象としてもこの年の3枚は前々年の3枚比べて、やはり充実度は高いものと思います。LP「アンドレス・セゴヴィアの夕べ」と後述の「プレイズ」はほぼ同時期に録音されたものですが、この「夕べ」のほうは、比較的まとまった作品が収められており、「プレイズ」のほうは従来のような小品集となっています。

 もう一枚の「アンドレス・セゴヴィア・シャコンヌ」はA面がバッハで、B面が他の作曲家の作品となっていて、それなりのまとまりを示しています。セゴヴィアのLPはここにきて、それぞれにコンセプトが感じられるようになってきます。おそらくLP全体の構成を考えた上で、録音に入っているのではと思われます。


フレスコバルディの「アリアと変奏」 ~かつて弾ける人も、弾けない人もみんな弾いていた

 このLPの最初の曲はバロック時代のイタリアの作曲家、ジローラモ・フレスコバルディの鍵盤曲からの編曲で「アリアと変奏『ラ・フレスコバルダ』」です。セゴヴィアの演奏した曲の中でもたいへん人気の高い曲で、かつて大学のギター部の仲間たちがよく弾いていました。それほど易しい曲ではありませんが、弾ける人も、弾けない人もみんな弾いていました。・・・・そういうのを「弾いた」と言うの?


渡辺範彦さんの名演も忘れられない

 もっとも、1970年代のこの曲の人気には、故渡辺範彦さんの影響も大きかったのでしょう。当時美しい渡辺さん演奏でこの曲が好きになった人も多いでしょう。因みに渡辺範彦さんの演奏は今現在でもCDで聴くことが出来ます。


かつて話題になったことですが

 もう一つこの曲にまつわる話と言えば、この曲は一見、短調の曲のように見えますが、もともとは教会旋法の「ドリア調」で書かれています。それによってこの曲の本来のメロディには、長調や短調に慣れた耳からすると、ちょっと違和感を感じるところもあります。
 
 そうしたものをセゴヴィアは一般的な短調に直して演奏しているのですが、結果的にはこの音楽の本質的な部分を変えてしまったことになり、現在のクラシック音楽界の常識からすれば、ありえないことといえるでしょう。


本物のほうがかえって変?

 しかしそんなことを気にせず聴けば、このセゴヴィアの編曲はごく自然で、たいへん美しいメロディに聴こえるのも確かです。カール・シャイトの原曲により忠実な編曲もありますが、聴いた感じではこの”本物”のほうがかえって変に感じるかも知れません。


第4変奏の「コレンタ」は別の曲扱いだが、もちろん同一曲

 この「アリアと変奏」はアリアと4つの変奏からなりますが、そのテーマからして、セゴヴィアはたいへん美しい音で演奏していて、この曲が人気曲となったのがたいへんよく理解できます。

 セゴヴィアは第2変奏と第3変奏の順を入れ替えて演奏し、また第4変奏の「コレンタ」を別の曲扱いで録音していますが、もちろん一つの変奏で、まとめて1曲です。「コレンタ」はテンポを速めて弾く部分なのでしょう。


パガニーニへのオマージュ

 次の曲はテデスコの「悪魔の奇想曲」です。この曲はパガニーニへのオマージュで、10分近く要し、ギター曲としては比較的長い曲となっています。曲の最後のほうに有名な「カンパネラ」が登場しますが、題名のとおり高度な技術を要する曲です。


3人の作曲家の作品でA面を構成

 次はポンセの「24の前奏曲集」から6曲収録して、フェレスコバルディ、パガニーニ(ポンセ)、ポンセの3人の作曲家の作品でA面が構成されています。この前奏曲集は、1曲1曲がかなり短いもので、練習曲的といえるでしょう。


ラモーのメヌエットは二長調(映画で有名な)

 次のラモーの「メヌエット」は1944年に録音したイ長調のものではなく、イエペスが映画「禁じられた遊び」の中で演奏している二長調のほうです。このメヌエットはオペラ「ラ・プラテー」の中のバレー曲が原曲で、因みにイ長調のほうは鍵盤曲からの編曲です。


アレンジはセゴヴィア以外?

 イ長調のほうはセゴヴィアが譜面を出版していますから、セゴヴィア自身の編曲に間違いないと思いますが、この二長調の方は他のギタリストの編曲かも知れません。イエペスの映画への録音は1951年頃と思いますので、録音はそちらの方が先ということになります。


小謡組曲

 次にタンスマンの「カヴァテイーナ」組曲を、「ダンサ・ポンポーザ」も含めた全5曲の形で録音しています。この組曲はもともとは4曲で、最後がじっくりと歌う「舟歌」となっていましたが、セゴヴィアの希望により終曲として「ダンサ・ポンポーザ」が付け加えられたと言われています。

 セゴヴィアとしてはコンサートで演奏するためには、静かな舟歌で終わるのは、ちょっと寂しい、出来れば華やかなフィナーレが欲しいといったところなのでしょう。タンスマンの追加作曲された曲も、曲名上は「華麗な舞曲」ですが、聴いた感じではそれほど派手というわけでもないようで、むしろがっちりと対位法的に書かれた曲と言った感じです。

 この「カヴァテーナ組曲」を和訳すれば「小謡組曲」といったところでしょから、本当は派手に終わらなくてもよいのでしょう。


やはり名演

 最後はトロバの「ノクトゥルーノ」となっていますが、この曲も「マドローニョス」と並ぶトロバの人気曲で、セゴヴィアとしては1928年以来の2度目の録音。また1973年にも録音しています。重たい音、軽い音、しっとりとした音、明るい音などを駆使し、切れのよいパッセージ、ヴィヴラート、消え入りそうなポルタメントも絶妙! やはり名演といえるでしょう。
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