コスト :秋の木の葉作品41-9
メルツ : ギター独奏のためのコンチェルティーノ
今週の土曜日(9月15日)に行われる水戸ギター・アンサンブル演奏会の紹介の続きです。ふと気が付いたのですが、今年の私のコンサートは、6月15日に県立図書館、7月15日に水戸市民音楽会、そして9月15日に第15回水戸ギター・アンサンブル演奏会と、 ・・・・・・あまり深い意味はありませんが。
今年シニア・ギター・コンクールで優勝した熊坂さんの演奏
さて上記の曲目は、今年の5月、石岡市のギター文化館で行われたシニア・ギター・コンクール、シニアの部で1位になった熊坂勝行さんが演奏します。ご存知かも知れませんが、熊坂さんは、”上質の音楽を少人数で楽しむAcoustic Life”を主宰しています(本人は管理人と言っていますが)。
そのアコラ(Acoustic Lifeの通称)では、これまでグロンドーナ、北口功、宮下祥子各氏をはじめとするさまざまなギタリストのコンサートを行い、また定期的に愛好者のコンサートなども行っています。私も何度か演奏させていただきました。
熊坂さん自身は高校生の頃からギターを始めたそうですが、その後はしばらく中断していて、10年ほど前から再開し、北口功さん、宮下祥子さんなどに師事しています。最近では私のレッスンも時折受けてもらっています。
「秋の木の葉第9番」は村治佳織さんが高校生の時に録音
演奏曲目のうち、コストの「秋の木の葉」は「12のワルツ作品41」の副題で、そのうちの第9番は、10数年ほど前に村治佳織さんがデビュー・CDに録音し(当時高校1年生だったかな?)、それ以来よく演奏されるようになりました。曲名どおりとても和む曲で、今回は中間部を省略して演奏します。
ヴィルトーゾ的な曲
メルツの「コンチェルティ-ノ」は1856年にマカロフ主宰でブリュッセルで行われたギターの作曲コンクールで1位になった作品です。メルツはこの時すでに他界しており、この作品がメルツの最後の作品となりました。曲はたいへんヴィルトーゾ的、つまり高度な演奏技術が必要な曲で、腕自慢のギタリストを対象とした曲といるでしょう。因みにこのコンクールで2位になったのは、コストの「セレナーデ」です。
この「コンチェルテーノ」は、本来は10弦ギターのために書かれていて、本来オクターブ下で鳴り響かなければならない低音が所々あります(今回は通常の6弦ギターで演奏)。曲は中断なく演奏されますが、3つの部分に分かれ、最初の部分のみイ短調で、後続の二つの部分はイ長調となっています。
カルリ : 対話的二重奏曲作品34-2
演奏は当アンサンブルの女性メンバー、中川真理子さんと、佐藤智美さんです。中川さんにはもう16~7年くらい私のレッスンを受けてもらっているでしょうか、当演奏会ではほぼ毎回二重奏などを行っています。佐藤さんは当アンサンブルでも数少ない若いメンバーの一人ですが、いつのまにかギターを始めてから10年くらいになります。
カルリというと練習曲で有名だが
曲の方は19世紀のパリで活躍したフェルナンド・カルリの作品です。カルリというと私たちクラシック・ギターをやるものにとっては、練習曲などでとてもなじみのある作曲家で、おそらくクラシック・ギター愛好者の中で、カルリの曲を弾いたことがないという人はいないのではないかと思います。
それほど多くのギタリストに親しまれている作曲ですが、ギターのリサイタルでカルリの曲が演奏されることは極めて稀なことです。演奏会用の作品がなくはないのでしょうが、やはりカルリというと初、中級者用の練習曲といったイメージがぬぐえないのでしょう。
ブリームとウィリアムスのLPで知られるようになった
確かにカルリの独奏曲はあまり演奏されることはないのですが、二重奏曲となるとステージでも比較的よく演奏されます。この「作品34-2」は1970年代に当時人気絶頂だった2人のギタリスト、ジュリアン・ブリームとジョン・ウィリアムスが録音し、以来一般にもよく演奏されるようになりました。「ラルゴ」と「ロンド」の二つの楽章からなります。
ソル : メヌエットホ長調作品11-10、 練習曲イ長調作品6-12、同6-6、モーツァルトの「魔笛」による主題と変奏
フェルナンド・ソル(19世紀のスペインのギタリスト兼作曲家)の作品4曲は私が演奏します。メヌエットは「12のメヌエット作品11」からのもので、この12曲中では一般に5番(二長調)、6番(イ長調)などがよく演奏されます。今回演奏する「第10番」の冒頭の部分には”etouffez”の指示があり、ソル自身は「通常よりは力を抜き加減に、しかしハーモニックを出す時ほどは軽くせず押さえる」と説明しています。
あまり軽くすると・・・・
意外とこれがどの程度力を入れて押さえればよいのか、結構難しいところです。あまり軽くするとただの雑音みたくなってしまいますし、かといって強く押さえ過ぎると”普通”の音になってしまうし・・・・ また「右手をつかわず、左手のみで演奏するように(=レガート奏法)」といった指定もあります。
落ち着いた曲と活発な曲
二つの練習曲は共にイ長調で、どちらも「12の練習曲作品6」に含まれます。またセゴヴィア編の「ソル20の練習曲集」にも含まれ、それぞれ第14番、第12番となっています。「作品6-12」のほうはアンダンテで内声部の動きが充実した、美しく、落ち着いた感じの曲です。それに比べて「作品6-6」のほうは動きの活発な曲となっています。どちらも3度の和音が多用されていて、多少の関係はあるのかも知れません。
モーツァルトとギターとの接点?
ところで、今回のプログラムはモーツァルトを中心にしたものなのですが、実際にはモーツァルトとギターとはほとんど接点がないようです。おそらくモーツァルトはギターを弾いたことはないでしょうし、知り合いのギタリストも多分いなかったのではないかと思います。要するにモーツァルトとギターに関する情報は全くありません。
強いていえば、モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」で、ケルビーノのアリア「恋とはどんなものかしら」はギター伴奏で歌うという設定になっていますが、実際にはギターではなく弦楽器のピッチカートなっています。
歴史にタラレバはないが
歴史に”たら”とか”れば”はありませんが、モーツァルトは結構お金に困っていた時期もあったようですから、その当時だれか若干の金額でソナタか協奏曲の2、3曲も注文したら、きっと二つ返事で引き受けたのではないかと思います。モーツァルトのことだったら、自分でギターなど弾いたことはなくともギターのための傑作を書いたのは間違いありません。
本当にそんなことがあったらギター界のもの凄い財産になっていたでしょうね。もっともフルート協奏曲の時のように他の曲からの編曲になっていたかも知れませんが、それでも大きな財産なのは違いありません。 ・・・・・残念
モーツアルト本人は全く知らぬことだが
これはモーツァルトのあずかり知らぬことではありますが、私たちギタリストがモーツァルトといえば、何と言ってもソル作曲の「モーツァルトの『魔笛』の主題による変奏曲」を思い浮かべます。この曲はクラシック・ギターの名曲中の名曲となっています。
アマチュアからプロにいたるまで多くのギター愛好者、ギタリストの愛奏されている曲といえます。序奏と主題、5つの変奏、コーダとなっていて、比較的シンプルな変奏ですが”きちっと”弾くのはなかなか難しい曲でもあります。有名な曲だけに聴き手のハードルも自然に上がってしまうといった点もあるでしょう。
モーツァルトと19世紀のギターを繋ぐ
因みに主題はモノスタートスと手下たちが歌う「なんと言うすばらしい鐘の音」という短いアリアから取られていますが、ソル自身よって多少手が加えられています。モーツアルトと19世紀のギターを繋ぐ曲として、今回プログラムに載せました。
お待ちしています
水戸ギター・アンサンブル演奏会、いよいよ明後日になりました。是非会場に足を運んでいただければと思います。
日時 : 9月15日(土曜日) 18:00~(開場17:30)
場所 : ひたちなか市文化会館小ホール
入場無料
メルツ : ギター独奏のためのコンチェルティーノ
今週の土曜日(9月15日)に行われる水戸ギター・アンサンブル演奏会の紹介の続きです。ふと気が付いたのですが、今年の私のコンサートは、6月15日に県立図書館、7月15日に水戸市民音楽会、そして9月15日に第15回水戸ギター・アンサンブル演奏会と、 ・・・・・・あまり深い意味はありませんが。
今年シニア・ギター・コンクールで優勝した熊坂さんの演奏
さて上記の曲目は、今年の5月、石岡市のギター文化館で行われたシニア・ギター・コンクール、シニアの部で1位になった熊坂勝行さんが演奏します。ご存知かも知れませんが、熊坂さんは、”上質の音楽を少人数で楽しむAcoustic Life”を主宰しています(本人は管理人と言っていますが)。
そのアコラ(Acoustic Lifeの通称)では、これまでグロンドーナ、北口功、宮下祥子各氏をはじめとするさまざまなギタリストのコンサートを行い、また定期的に愛好者のコンサートなども行っています。私も何度か演奏させていただきました。
熊坂さん自身は高校生の頃からギターを始めたそうですが、その後はしばらく中断していて、10年ほど前から再開し、北口功さん、宮下祥子さんなどに師事しています。最近では私のレッスンも時折受けてもらっています。
「秋の木の葉第9番」は村治佳織さんが高校生の時に録音
演奏曲目のうち、コストの「秋の木の葉」は「12のワルツ作品41」の副題で、そのうちの第9番は、10数年ほど前に村治佳織さんがデビュー・CDに録音し(当時高校1年生だったかな?)、それ以来よく演奏されるようになりました。曲名どおりとても和む曲で、今回は中間部を省略して演奏します。
ヴィルトーゾ的な曲
メルツの「コンチェルティ-ノ」は1856年にマカロフ主宰でブリュッセルで行われたギターの作曲コンクールで1位になった作品です。メルツはこの時すでに他界しており、この作品がメルツの最後の作品となりました。曲はたいへんヴィルトーゾ的、つまり高度な演奏技術が必要な曲で、腕自慢のギタリストを対象とした曲といるでしょう。因みにこのコンクールで2位になったのは、コストの「セレナーデ」です。
この「コンチェルテーノ」は、本来は10弦ギターのために書かれていて、本来オクターブ下で鳴り響かなければならない低音が所々あります(今回は通常の6弦ギターで演奏)。曲は中断なく演奏されますが、3つの部分に分かれ、最初の部分のみイ短調で、後続の二つの部分はイ長調となっています。
カルリ : 対話的二重奏曲作品34-2
演奏は当アンサンブルの女性メンバー、中川真理子さんと、佐藤智美さんです。中川さんにはもう16~7年くらい私のレッスンを受けてもらっているでしょうか、当演奏会ではほぼ毎回二重奏などを行っています。佐藤さんは当アンサンブルでも数少ない若いメンバーの一人ですが、いつのまにかギターを始めてから10年くらいになります。
カルリというと練習曲で有名だが
曲の方は19世紀のパリで活躍したフェルナンド・カルリの作品です。カルリというと私たちクラシック・ギターをやるものにとっては、練習曲などでとてもなじみのある作曲家で、おそらくクラシック・ギター愛好者の中で、カルリの曲を弾いたことがないという人はいないのではないかと思います。
それほど多くのギタリストに親しまれている作曲ですが、ギターのリサイタルでカルリの曲が演奏されることは極めて稀なことです。演奏会用の作品がなくはないのでしょうが、やはりカルリというと初、中級者用の練習曲といったイメージがぬぐえないのでしょう。
ブリームとウィリアムスのLPで知られるようになった
確かにカルリの独奏曲はあまり演奏されることはないのですが、二重奏曲となるとステージでも比較的よく演奏されます。この「作品34-2」は1970年代に当時人気絶頂だった2人のギタリスト、ジュリアン・ブリームとジョン・ウィリアムスが録音し、以来一般にもよく演奏されるようになりました。「ラルゴ」と「ロンド」の二つの楽章からなります。
ソル : メヌエットホ長調作品11-10、 練習曲イ長調作品6-12、同6-6、モーツァルトの「魔笛」による主題と変奏
フェルナンド・ソル(19世紀のスペインのギタリスト兼作曲家)の作品4曲は私が演奏します。メヌエットは「12のメヌエット作品11」からのもので、この12曲中では一般に5番(二長調)、6番(イ長調)などがよく演奏されます。今回演奏する「第10番」の冒頭の部分には”etouffez”の指示があり、ソル自身は「通常よりは力を抜き加減に、しかしハーモニックを出す時ほどは軽くせず押さえる」と説明しています。
あまり軽くすると・・・・
意外とこれがどの程度力を入れて押さえればよいのか、結構難しいところです。あまり軽くするとただの雑音みたくなってしまいますし、かといって強く押さえ過ぎると”普通”の音になってしまうし・・・・ また「右手をつかわず、左手のみで演奏するように(=レガート奏法)」といった指定もあります。
落ち着いた曲と活発な曲
二つの練習曲は共にイ長調で、どちらも「12の練習曲作品6」に含まれます。またセゴヴィア編の「ソル20の練習曲集」にも含まれ、それぞれ第14番、第12番となっています。「作品6-12」のほうはアンダンテで内声部の動きが充実した、美しく、落ち着いた感じの曲です。それに比べて「作品6-6」のほうは動きの活発な曲となっています。どちらも3度の和音が多用されていて、多少の関係はあるのかも知れません。
モーツァルトとギターとの接点?
ところで、今回のプログラムはモーツァルトを中心にしたものなのですが、実際にはモーツァルトとギターとはほとんど接点がないようです。おそらくモーツァルトはギターを弾いたことはないでしょうし、知り合いのギタリストも多分いなかったのではないかと思います。要するにモーツァルトとギターに関する情報は全くありません。
強いていえば、モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」で、ケルビーノのアリア「恋とはどんなものかしら」はギター伴奏で歌うという設定になっていますが、実際にはギターではなく弦楽器のピッチカートなっています。
歴史にタラレバはないが
歴史に”たら”とか”れば”はありませんが、モーツァルトは結構お金に困っていた時期もあったようですから、その当時だれか若干の金額でソナタか協奏曲の2、3曲も注文したら、きっと二つ返事で引き受けたのではないかと思います。モーツァルトのことだったら、自分でギターなど弾いたことはなくともギターのための傑作を書いたのは間違いありません。
本当にそんなことがあったらギター界のもの凄い財産になっていたでしょうね。もっともフルート協奏曲の時のように他の曲からの編曲になっていたかも知れませんが、それでも大きな財産なのは違いありません。 ・・・・・残念
モーツアルト本人は全く知らぬことだが
これはモーツァルトのあずかり知らぬことではありますが、私たちギタリストがモーツァルトといえば、何と言ってもソル作曲の「モーツァルトの『魔笛』の主題による変奏曲」を思い浮かべます。この曲はクラシック・ギターの名曲中の名曲となっています。
アマチュアからプロにいたるまで多くのギター愛好者、ギタリストの愛奏されている曲といえます。序奏と主題、5つの変奏、コーダとなっていて、比較的シンプルな変奏ですが”きちっと”弾くのはなかなか難しい曲でもあります。有名な曲だけに聴き手のハードルも自然に上がってしまうといった点もあるでしょう。
モーツァルトと19世紀のギターを繋ぐ
因みに主題はモノスタートスと手下たちが歌う「なんと言うすばらしい鐘の音」という短いアリアから取られていますが、ソル自身よって多少手が加えられています。モーツアルトと19世紀のギターを繋ぐ曲として、今回プログラムに載せました。
お待ちしています
水戸ギター・アンサンブル演奏会、いよいよ明後日になりました。是非会場に足を運んでいただければと思います。
日時 : 9月15日(土曜日) 18:00~(開場17:30)
場所 : ひたちなか市文化会館小ホール
入場無料
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