中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

ヘンデル : メヌエット

 ヘンデルの3曲目はタレガ編のヘンデルの「メヌエット」です。原曲はオラトリオ「サムスン」からの曲だということですが、私は原曲を聴いたことがありません。タレガの編曲は生前(1907~1909年頃)に出版され、セゴヴィアは1952年に録音しています。軽快でなかなか魅力的な小品ですが、「アイレスフォードの8つの小品」のメヌエットよりもやや長めです。




バッハ : リュートのためのプレリュード、フーガ、アレグロ


ホントにリュートのための曲?

 今回のコンサートの最後の曲はバッハのリュートのための作品からです。バッハには「リュートのため」とした作品がいくつかありますが、これらには若干説明が必要で、単純に「リュートのための作品」と言えないところもあります。

 バッハの遺品の中にはリュートも含められ、バッハがリュートを所持していたのは確かです。また上記のとおり「リュートのため」と記された作品を編曲も含めれば組曲4つ以上書いており、リュートには深い関心があったのも確かです。


バッハはリュートが弾けた?

 バッハは作曲だけでなく鍵盤楽器や弦楽器などの名手としても知られていましたから、リュートもある程度弾けたことは想像出来ますが、一方で、自らの作品を弾けるほど技術があったどうかは否定的です。そうしたものを身に付けるのは、バッハといえどそれなりの時間が必要となるでしょうから、バッハにそういった時間があったとは考えにくいところです。


実際には鍵盤用の譜面になっている

 前述のとおりバッハの作品の中には「リュートのために」と書かれた作品がいくつか残されているのですが、バッハが実際に書いた譜面は、当時リューティストが普通使っていたリュート用のタブラチュアではなく、鍵盤用の2段譜となっています。

 これらの曲の一部はリュート用のタブラチュアとして書かれているものも残されていますが、これらは主に同時代のリュート奏者などが鍵盤譜から書き換えたものです。


当ブログでも時々話題となるラウテンヴェルク

 バッハはリュートに似た音が出せるチェンバロの「ラウテンヴェルク」を考案し楽器職人に作らせています(これも遺品として残されている)。現在ではこれらのバッハの作品は、この「ラウテンヴェルク」のための作品とされています。

 したがって、これらの作品はリュートのための作品というより、鍵盤楽器のための作品ということになるのでしょう。しかし”本物”の鍵盤用の曲とは違って、リュートで演奏を想定して書かれた印象は確実にあります。例えばこれらの曲には複数の声部が16分音符などで忙しく動き回るなどという部分は出てきません。上声部が細かい音形で書かれているところはバスなどは比較的おとなしく動いています。そうでなければ”リュートっぽいチェンバロ”で弾いてもリュートっぽく聴こえないでしょう。


一応リュートでも弾くことを想定した

 おそらくバッハとしては多目的に「出来ればリューティストによりリュートのタブラチュア譜面に書き換えてリュートで演奏してほしいが、それが出来なければリュートに似た音の出せるチェンバロの 『ラウテンヴェルク 』で弾けばよい」と考えていたのではないかと思います。

 実際にそのように他のリューティストがタブラチュアに書き換えて演奏したであろうと思われる曲もあるのですが、それらはバッハの「リュートのために」と書かれた曲の一部の曲で、フーガなどの難しい曲はほとんど手付かずの状態だったようです。バッハとしてはリュートの特性を考えてかなり”手加減”したつもりなのでしょうが、やはり難しすぎたようです。もっとも現在ではバッハのリュートのための作品はリューティストもギタリストも当たり前のように弾いています。


リュートも弾けることを自慢した?

 因みに、話によると、バッハは客人などがいる時に、カーテンごしにこのラウテンヴェルクで自らの作品を弾き、リュートを弾いているように見せかけたそうです(本当かどうかはわかりませんが)。もしかしたらリュートも弾けることを自慢したかったのかも知れませんね・・・・


このプレリュード、フーガ、アレグロは2段譜で書かれたバッハの実筆譜が残されている

 さてこの「リュートのためのプレリュード、フーガ、アレグロ」はバッハの実筆譜が、鍵盤用の2段譜の形で残されていて、そこに「リュートのために」と書かれています。ただし最後の部分はオルガン用のタブラチュアの形になっています。これは紙面が足りなくなったためのようです。


エコ? それともケチ?

 紙をもう一枚用意すれば済むことなのですが、バッハは5線紙をたいへん節約して使う傾向があり、紙を中途半端に使うことを嫌ったのでしょう。バッハは作曲の際、スペースが少しでも余ると、そこに別の曲を書いたりしています。

 エコと言えばエコなのでしょうが、バッハは自らの貴重な名作を、別の曲で余った紙のスペースのあちこちに書き、結果的に名曲の途中部分などが散逸してしまうこともあったようです。バッハの子だくさんとケチは有名ですが・・・・・


現代のリュート、ギター・ファンへのプレゼント

 確かにこの「プレリュード、フーガ、アレグロ」は鍵盤曲的で、ギターやリュートで弾くにはかなり難しいのですが、しかしそれなりの技術があれば不可能ではないでしょう。おそらくバッハの生存中リュート(本物の)で演奏されることはなかったようですが、現在の私たちギタリストへのバッハからの最高のプレゼントと考えましょう。
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