中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

プラテーロと私 Ⅱ  1964年録音

ポンセ : ソナタ・ロマンティカ(全4楽章)
テデスコ : 「プラテーロと私」より 
       井戸、 帰り道、 飛び出したカナリア、 春、 モゲールの空にいるプラテーロ


ブログ 084


「プラテーロと私」とポンセの「ソナタ・ロマンティカ」

 この「プラテーロと私Ⅱ」は1961年の「プラテーロと私Ⅰ」の続編で、テデスコの「プラテーロと私」から5曲とポンセの「ソナタ・ロマンチカ」が収録されています。「Ⅰ」の方では小品集との組み合わせだったのですが、こちらはポンセの大曲との組み合わせとなり、たいへん内容の充実したLPとなっています。


セゴヴィアはポンセの4つのソナタをすべて全曲録音

 LPのタイトルを「プラテーロと私」としながらもA面は「ソナタ・ロマンチカ」となっていて、このポンセの作品にも力点が置かれていることがうかがわれます。ポンセは4つのギターのためのソナタを残していますが、これはほぼ1920年代に作曲されているようです。

 セゴヴィアは収録時間の関係もあると思いますが、SP時代にはいずれも全曲録音はしていません(1949年に「南のソナチネ」は全曲録音しているが)。4つのソナタのうち最初に全曲録音したのは「ソナタ第3番」で1955年、次がこの1964年の「ソナタ・ロマンティカ」、そして1967年に「ソナタ・クラシカ」と「ソナタ・メヒカーナ」を録音し、最終的にポンセの作曲したギターのためのソナタをすべて全曲を録音したことになります。

 特に1964~1967年にかけて3つのソナタを録音しましたが、まさに”満を持して”の録音、セゴヴィアは40年間機が熟するのを待っていたのでしょう。



今さら言うまでもない名演

 「ソナタ・ロマンティカ」は「シューベルトを讃えて」と副題されていますが、シューベルトの室内楽を思わせるような曲となっています。ナクソスの「ローリエイト・シリーズ」でも何人かの若手ギタリストが録音していますが、最近でもよく演奏される曲となっています。

 そこで、改めてローリエイト・シリーズの若手ギタリストの録音も聴いてみたのですが、前に聴いた時にはとてもすばらしい演奏と感じたのですが、今回セゴヴィアの演奏と聴き比べてみると、音楽の立体感、色彩感、存在感といった点ではまだちょっと違うのかなといった感じがしました。



今日のデジタル録音と比較しても優れた録音

 また録音についても、1964年のアナログ・ステレオ録音と、21世紀のデジタル録音では、録音機材の性能では比較にならないはずですが、しかしストレートに音が耳に入ってい来るのは、なぜかセゴヴィアの方。ローリエイト・シリーズの音は、確かにとてもきれいな音なのですが、残響などがまとわり付いてなかなか音の芯までたどり着けない感じです。

 とはいってもセゴヴィアの録音は1960年代のアナログ方式ですから、現在のもののように原音に忠実に録れているわけではないでしょう。しかし当時の最高の技術と最大の労力を駆使して、セゴヴィアの音を可能な限り忠実に音盤に記録しようという意図が感じ取れます。まさに”何も引かない、何も足さない”といったところでしょうか。録音スタッフの意気込みが感じられます。

 この時期(1964年)の他のクラシック音楽、あるいはクラシック・ギターの録音と比較しても、この時代のセゴヴィアの録音はたいへん優れた録音ではないかと思います。1950年代のモノラル録音もたいへん優れたものでしたが、この60年代のステレオ録音もたいへん優れたもので、セゴヴィアの魅力を余さず記録しています。

 

かつてのような恣意的な解釈とは程遠い真摯な姿勢

 「プラテーロと私」の方も言うまでもなく名演中の名演ですが、ここで聴かれるセゴヴィアの演奏には、かつてのように自らのヴィルトーゾぶりを世間に示すため恣意的にその音楽を変質させてしまう姿勢は見られず、その作品と真剣に向かい合い、その作品の内容を忠実に音にすることに強い意識が働いているように感じます。

 これらの作品を楽譜を見ながら聴くと、セゴヴィアは楽譜の隅々まで目を通し、音符だけではなく、表情記号や、作曲家の書き込み等もしっかりと読み込んでいることがわかります。しかし決してそれらに盲目的に従っているわけではなく、あくまで自分の中で消化した上での演奏となっています。

 この時期のセゴヴィアは、まさにヴィルトーゾてきであった1950年代とはまた違った意味での絶頂期であり、この時期のこれらセゴヴィアのためにかかれた作品の数々の録音は、今後何世代ものギタリストやギター愛好家たちに聴かれてゆくことでしょう。

 このLPの最後に収められた「モゲールの空にいるプラテーロ」は極め付きの名演と、言い添えておきましょう。
スポンサーサイト
コメント
コメントする
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する