中村俊三 ブログ

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アンドレス・セゴヴィア/タンスマンとモンポウ  1965年8月録音

タンスマン : ポーランド組曲、マズルカ
モンポウ : コンポステラ組曲
バレーラ : 二つの細密画


ブログ 085


前作同様、自身に献呈された作品の発表

 このLPはポーランドの作曲家、アレクサンドル・タンスマンとスペインの作曲家、フェデリコ・モンポウのそれぞれの組曲を中心としたものですが、セゴヴィア自身に献呈された曲の発表といった点で、前回のLP(プラテーロと私Ⅱ)と同じ路線のものと考えられます。



通向けのLP

 今回のLPはタンスマンとモンポウの優れた作品ではありますが、どちらもやや地味で、マニアックな(最近では「コアな」と言うようですが)作品と言えます。私自身も若い頃からこのLPの存在は知っていましたが、曲目のハードルが高く、LP時代には購入しませんでした(お金の関係の方が大きかった?)。

 また当時は自分で買わなくても、話題のLPなら周囲に誰か買った人がいて、よくカセット・テープなどにダビングさせてもらっていました。しかしさすがにこのLPを買った人は周囲に誰もいなくて、LPとしては聴いた記憶がありません。それだけ”通”向けのLPだったのでしょう。


やはり優れたLP、あまり聴かなかったことを反省

 1990年頃にはそれぞれの曲の復刻CDを買い(CDでは別々に発売)、コンポステラ組曲のほうはそれなりに聴きましたが、タンスマンのほうはちゃんと聴いたかどうかちょっと怪しいところです。今回改めて「ポーランド組曲」を聴いてみると、やはりたいへん優れた作品で、さらにセゴヴィアの演奏もたいへんすばらしい。これまで真剣に聴かなかったことを反省しています。

 録音に関しても前作同様優れた録音で、セゴヴィアの音を美しく、またリアルに再現しています(気持ち残響がが加えられているかな)。


歌と舞曲が交互に並ぶ

 このタンスマンの「ポーランド組曲」は9曲からなるものですが、セゴヴィアは5曲目と6曲目の間に1963年にも録音した「マズルカ」を加え、10曲の組曲としています。前に述べたとおり、この「マズルカ」は1963年のものとは別に新たに録音されたもので、演奏も若干異なっています(リピート省略)。こちらの演奏のほうがやはりこなれた感じがします。

 この組曲は確かに華やかな曲はないのですが、ポーランドの民謡などを元に曲が作られているようで、たいへん美しい曲が多くなっています。3曲目の「クヤヴィアク」などはどこかで聴いたことのあるようなメロディで、なんとなく懐かしい感じです。

 この組曲は、第1、3、5、6、8曲(本来の曲順で)は歌で、第2、4、7、9曲のように軽快な舞曲となっています。この曲順だと5,6曲が続けてゆっくりした歌となるので、セゴヴィアは5,6曲の間に前述のとおり軽快な「マズルカ」を挿入し、歌と舞曲が交互に並ぶように演奏しています。


セゴヴィアの音楽の本当の完成期

 前作同様セゴヴィアの演奏は優れたもので、楽譜がないので作曲者の指示等はわかりませんが、曲の内容がよくわかる演奏になっています。舞曲に関しても、それぞれすっきりとしたリズムで演奏され、不必要なな強調やデフォルメ等は感じられません。歌わせ方などについては改めて言うまでもないでしょう。

 前作でも述べたとおり、セゴヴィアは多彩で質感のある音で、音楽に立体感を生み出しています。この年セゴヴィアは72歳になりますが、この時期はセゴヴィアの音楽の一つの到達点、あるいは完成期と言えるのかも知れません。


その作品のあるべき姿を世に送り出す

 これらの演奏を聴いていると、これまで持っていたセゴヴィアの印象とちょっと違ったものを感じます。セゴヴィアの演奏と言えば個性的で、ヴィルトーゾ的、特定の音にポルタメントとヴィヴラートをかけて聴衆を酔わせる、いわゆるセゴヴィア・トーン・・・・・・  そういった印象がありましたが、この時期のセゴヴィアにはそういった面をあまり感じることは出来ません。むしろその作品と正面から向かい合い、その作品のあるべき姿を模索し、そしてそれを世に送り出す・・・・ そんな姿を見ることが出来ます。



コンポステラ組曲は現在でもよく演奏される

 現在ではあまり演奏されない「ポーランド組曲」に対し、モンポウの「コンポステラ組曲」は現在でもたいへんよく演奏されます、私も演奏しました。モンポウの作品というのは、自ら「静かな音楽」と題した曲があるくらいゆっくりで静かな曲が多くなっています。この「コンポステラ組曲」も6曲からなりますが、終曲の「ムニェイラ」を除いてすべてゆっくりで、静かな曲になっています。その「ムニェイラ」もせいぜい軽快と言った感じで華やかというほどではありません。


情感を出しつつも構造をしっかりと

 これらの曲は自然短音階とか教会旋法などが用いられ、普通の長調、短調とは違った感じになっています。最初の「前奏曲」はカンパネラ奏法的に始まりますが、セゴヴィアはやや速めのテンポと明るい音で開始し、一段落ついたところで今度はトーンを落して暗く、しっとりとした音で演奏するなど、変化のある演奏を行い、決して地味な曲にも、平板な曲にも聴こえません。

 同じ音形の続き、ともすれば単調になりがちな3曲目の「子守歌」なども、色彩感や情感を出しつつも、しっかりとした遠近法が用いられ、曲の構造がよくわかるように演奏しています。


若い頃とは違った歌わせ方

 最後にバレーラというセゴヴィアの知人の作曲家の短い作品「二つの細密画」を演奏しています。あまり(ほとんど?)演奏されることのない曲ですが、じっくり歌わせる1曲目も、舞曲風の2曲目もすばらしい演奏と言えます。歌わせ方も若い頃とはだいぶ異なるようです。



改心して
   
 私個人的には、どうもタンスマンの曲は若干苦手で、これまでちゃんと取り組んだことがありません。タンスマン自身ではギターを全く弾かなかったせいか、譜面の”見た目”がどうもギターの譜面らしくなく、さらに弾き始めてみると見た目以上に弾きにくい。オマケに苦労の割にはコンサートでも一般受けしなそうだし・・・・ 

 といったわけでこれまでタンスマンの曲を回避してきたわけですが、これを機に改心し、タンスマンの曲、特にこの「ポーランド組曲」を真剣にやってみようかと言う気持ちも出てきました。昔よりは多少譜面が読めるようになったかも知れないし・・・・・


人気ラーメン店?

 しかし、私の中ではこの先、私が演奏すべき曲がいろいろ決まっていて、人気ラーメン店ではないですが、そうした曲目が私の頭の中で列をなしています。その列の中にこの曲を強引に割り込ませられるかどうかですが・・・・・ 

 その前に譜面がなかった、まず取り寄せないと・・・・・
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