中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

 今日(12月16日)東京上野の東京文化会館で第55回東京国際ギター・コンクール本選会を聴きました。その前に今日は衆議院選挙でしたね、もちろん出かける前に投票所には行って来ました。投票所はやや静かな感じでした。

 先ほど家に帰ってからテレビを見ると、ニュース等で予想されていたとおりの結果の、あるいはそれ以上の結果のようです。前回の選挙とは真逆の結果というところですが、このところ日本は地震ではないですが、左右に揺れすぎかなとちょっと心配です。まあ、日本の家屋は揺れには強いようですが・・・・・


今回の結果を聞かずに

 さて、コンクールのほうですが、私は昨年同様、結果を聞かずに帰ってしまったので、順位などはまだわかっていません。もちろんもうすでに結果は出ているので、検索などすればわかるとは思いますが、これも昨年同様に結果を知らずにレポートをしてしまいましょう。その方が先入観なしに書けるかも知れません。


1.Marko TOPCHII(Ukraine)
  プレリュード~プレストBWV996(バッハ)、 課題曲=無名碑に奉げる哀歌(小川崇)、 
  6つの変奏曲Op.49(ジュリアーニ)、 悪魔の奇想曲(テデスコ)、 ベニスの謝肉祭(タレガ)

2.小暮 浩史(日本)
  課題曲、 ファンタジア(ダウランド)、 涙の賛美、セレナーデ(シューベルト~メルツ編)、
  スペイン舞曲第1番「メヌエット」、同第12番「アラベスカ」(グラナドス)、 舞踏の旋回(リベラ)

3.Florian LAROUSSE(France)
  ソナタ二短調K.208、同二長調K209(スカルラッティ)、 ソナタOp.61(トゥリーナ)、 
  セビーリャ(アルベニス)、 課題曲
 
4.Tariq HARB(Canada)
  サラバンド、ジグBWV1007(バッハ)、 ソナタ・エロイカ(ジュリアーニ)、
  アッシャー・ワルツ(コシュキン)、 課題曲

5.Andrey PARFINOVICH(Russia)
  朱色の塔(アルベニス)、 課題曲、 ソナタト長調K377、 ソナタよりⅠ、Ⅱ、Ⅳ楽章(ホセ)

6.Sanel REDZI(Bosnia Herzegovia)
  課題曲、 カプリース第31番、 ソナタK377(スカルラッティ)、 思い出の音楽(モー)
 



 以上が本選に出場したギタリストと演奏曲目です。先週私のコンサートにゲスト出演してくれたクレムケは残念ながら予選通過できなかったようです。やはり今回はというか、今回もと言うべきか、たいへんレヴェルの高いコンクールです。クレムケは予選7位と言う事で、惜しいところでしたが、課題曲で先週のような大きなトラブルはなかったようですね。


Topchii ~音が遠いな

 さて最初のTopchii(どう読むのかよくわかりませんが)ですが、私もこの会場で久々にギターを聴いたせいか、音がかなり小さめ。私の席は前から10列前後のといったところで、距離にすれば8~10メートルくらいでしょうか。でもそれ以上に距離を感じます。

 最初のバッハは美しく、軽い音質で、なかなかレガートな演奏です。譜面上の短い音はあまり詰めないで弾いています。課題曲は初めて聴く曲ですが、Topchiiは視奏(譜面を使用)していました。題名のとおり瞑想的といった感じの曲です。ダイナミックスの変化もあって、なかなかよい演奏です。

 ジュリアーニはとても軽快な音でちょっと線は細いが、爽やかな感じと言ってもよいでしょう。「悪魔の奇想曲」もメロディをよく歌わせ、音量の変化にも富んでいます。「ベニスの謝肉祭」はやや速めの軽快な演奏でした。

 まだ最初の一人を聴いただけですが、最初からなかなかの実力者のようで、この人が1位でもおかしくないなと思わせる演奏でした。でもこのギタリストが1位だと何かちょっと物足りないなというのも確かで、私のメモには「軽快」と言う文字がいくつか並んでしまいました。



小暮浩史 ~ステージまでの距離が縮まった

 次は昨年3位になった小暮さんですが、課題曲が始まると、急にステージとの距離が縮まった感じです。前の演奏者のあの距離感はいったい何だったんだろうと思いました。またイマイチよくわからなかった課題曲も全く違った感じに聴こえてきます。

 西洋の伝統音楽というのは、中世以来、基本的に横の線によって成り立つのだろうと思いますが、日本の音楽は武満のようにその瞬間瞬間の響きを最も大事にする。この曲もはやりそうなんだろうなと思えます。そうした点を小暮さんはたいへんよく掘り下げているように感じました。また当然のことかも知れませんが、この曲も暗譜で弾き、前の演奏者に比べ、その作品に取り組む姿勢や、作者の意図を重んじるといった姿勢がまるで違うようにも思えました。

 ダウランドは対位法的な処理に気を配ると同時に、曲の終盤ではヴィルトーゾ的な感じも出していました。昨年とはだいぶ変った感じです。シューベルトは、まさにロマン派の音楽らしい表現で、巧みに歌わせたかと思うと、クライマックスをしっかり盛り上げ、時には非常に大胆にルバートをしていました。とても積極的な表現です。一つ間違えれば崩壊しかねないところまでやっていると思いますが、まさに「超攻撃的」表現といったところでしょうか。

 グラナドスでは非常に重厚な音を引き出し、同じ楽器で弾いているとは思えないほどです。まさにピアノ的な音でした。最後のリベラの曲も初めて聴きますが、3曲からなるようで、それぞれの特徴が初めて聴いてもよくわかる演奏でした。

 この人は意外と(?)引き出しを多く持っているなと改めて思いましたまたたいへん知性的なギタリストでもあると思います。全曲弾き終わって拍手を受ける時には、顔に「やりきった感」が溢れていました。



Florian Larousse ~今回はかなり冷静だが

 3人目は前回記憶のトラブルなどで2位なったフローリアン・ラルースです。当ブログでも何度か登場しましたから、あえて紹介の必要はないと思いますが、GFAで優勝していても、この東京国際には結構こだわりがあるようです。

 今回の演奏ではもちろん前回のようなトラブルもなく、また変に気負うところもなく、ある意味たいへん落ち着いた演奏だったのですが、全曲聴き終えてみると妙に印象が薄い。いろいろあったけど昨年のほうがインパクトはつよかったな。

 今回の演奏はどこといって問題もなく、相変わらず音は美しいし、技術も完璧。はやり人並みはずれた感性がこのギタリストにはある、それは十分にわかるのだけれど・・・・・ 何か、世界の超一流3つ星レストランで前菜のみを食べて帰ってくるような(実際に食べたことはないが)、そんな物足りなさも感じてしまいます。

 この人にはもっと凄いところがたくさんあったはずだ、なんで今日はこんなに出し惜しみするのだろう。とはいってもはやり課題曲など美しい、またトゥリーナでは音の増減のしかたが巧み、というか音楽的・・・・



Harb ~確かにジュリアーニらしい演奏なのだが

 次はカナダのHarbと言うギタリストで、バッハのチェロ組曲第1番のサラバンド、ジグから演奏を始めました。装飾音などかなり多めにつけて、一見華やかな感じなのですが、でもどうも何か普通・・・・ 前の二人が個性的だったからでしょうか。

 ジュリアーニの「ソナタ・エロイカ」もとてもジュリアーニらしい演奏なのですが、それ以上というと、やはりジュリアーニだし、となってしまうのだろうか。アッシャー・ワルツもアンコール曲として聴くと結構面白いし、またウケル曲だと思いますが、やはりこの場で弾くべき曲なのかどうか・・・・



Parfinovich ~昨年4位

 5人目のParfinovichは昨年4位のギタリストです。いきなり「朱色の塔」から始めましたが、出だしのアルペジオなど出だしに関らずほとんど”もたつき”もなく弾き始めました。確かに指のよく裁ける人のようです。しかしそれに反してというか、メロディを歌わせている感じが伝わってこない。確かにメロディはアルペジオの音よりもはっきりと弾いているのですが、なぜかそれが歌には聴こえてこない。

 課題曲なども、確かに音量の変化など音楽を構成しようと言う意図は感じるのだけど、奥行きのようなものは感じられない。スカルラッティも一つ一つの音形がやや無機的かな・・・・・ 

 なんて思っていたら、ホセのソナタが始まるとちょっと様子が変った。やはりホセのソナタはすばらしい、この曲に関してはやはり深い響きがする。ホセのソナタがいいのか、演奏がいいのかわかりませんが、Parfinovichはホセのソナタを弾いたことで、かなり順位を上げたのではないかと思います。



Redzic ~かなりの実力者だと思うが

 6人目はボスニア・ヘルツェコヴィアのRedzicというギタリストです。この人も初めて聴きましたが、これがなかなかの実力者のようです。課題曲から始まりましたが、なかなか感性が豊かで、この曲から多彩なイメージを引き出しています。ただ低音がちょっとこもり気味に聴こえます。

 レニャーニとスカルラッティの比較的軽めの曲を弾いた後、かなり長めの(おそらく20分くらい)「思い出の音楽」を演奏しました。この曲名どこかで聴いたことがあると思ったら、ナクソスのローリエイト・シリーズでマルティン・ディラが弾いていた曲です。曲全体としては前衛的な曲と言えますが、それにメンデルスゾーンの曲のメロディが入ってきます。

 ロマン派と現代音楽の融合と言ったところかも知れませんが、どうも私には相性がよいようには思えません。私の音楽を聴く力に問題があるのでしょうけど、私にはどう聴いてよいのかわかりません、少なくとも今のところ・・・・



順位予想?

 といいたところで、最終的な順位は、皆さんすでにわかっているわけですから、本当は予想なんてしなくてよいのですが、でもやはりやっておきましょう。多分外れていると思いますが。


強い表現意欲、たいへん多い引き出し

 やはり1位に一番近いのは小暮さんだと思います。本当にいろいろな引き出しを持った、たいへんクレバーなギタリストだと思います。また音楽表現にかける意気込も、とても強く感じられました。また聴いてみたい演奏です。


今日はオードブルだけ?

 ラルースはこれまで何度も言ったとおりたいへん優れたギタリストであるのは間違いないのですが、オードブルだけで優勝を持ち帰ることが出来るのでしょうか。



モーの音楽、演奏をどう評価

 3番目の候補としては最後に演奏したRedzicがあげられますが、モーの音楽の演奏を審査委員はどう評価するのでしょうか。もちろん他の3人のギタリストの中から優勝者が出ることも十分に考えられます。
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