中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

春の特番ではありません

 「春の祭典」などというと、どこかのテレビ局の特番みたいですが、もちろんここではロシアの作曲家イーゴリー・ストラヴィンスキーの作品のことです。

 この曲は、有史以前の春を祭る儀式をバレー音楽にしたものですが、人類の始原的な生命力が活き活きと描かれています。「火の鳥」、「ペトルーシカ」と並んでストラヴィンスキーの3大バレー曲とされていますが、やはりこの「春の祭典」は他の2曲を凌駕する傑作といえるでしょう。

 不協和音による不規則で強烈なリズムの刻み、咆哮する金管、地響きのように打ち鳴らされる打楽器と、比較になる曲がないくらいエネルギッシュで強烈な音楽で、まさに20世紀最大の傑作の一つといってよいでしょう。さすがのスタヴィンスキーもこの曲に匹敵するような作品は他に書いていません。そういった意味でも奇跡的な名曲ともいえます。



新石器時代? それとも旧石器時代?

 もちろん実際にこのような儀式や踊りがあったわけではありませんが、私たちの先祖たちはこのように強い生命力をもっていたのではないかと思わせる音楽です。この「有史以前」というのが旧石器時代か新石器時代かとか、ホモ・サピエンスかネアンデルタールかとか、そんな野暮なことは考えないでおきましょう。

 ただ、この音楽からは、この儀式を行なっている人々は肉食系の人種、あるいは狩猟民族であろうということは誰しも想像するところでしょう。私たちの先祖のような漁労、採取民族ではなさそうですね。


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ゲオルク・ショルティ ~マッチョなどと言われているが

 ゲオルク・ショルティ(シカゴ交響楽団1974年)は”体育会系”とか”筋肉質”とか言われて、マーラーやワーグナーなどに定評のある指揮者で、確かにマーラーなど、力強くオーケストラを鳴らしています。

 この春の祭典の演奏でも、特に速いテンポで演奏しているわけではないのですが(遅くもないが)、やや前ががりに力強く前進してゆく感じがします。特に2曲めの「春の兆しと乙女たちの踊り」ではリズムの刻みをやや強めに、かつアタックを強くして前進力を付けているように感じます。

 しっかりとオーケストラを鳴らしていますが、金管や打楽器よりも弦楽器のほうが表に出ているように聴こえるのは、やはりロマン派の音楽を得意としている関係でしょうか。

 

クラウディオ・アバド ~快適な春の祭典

 イタリア出身の指揮者クラウディオ・アバド(ロンドン交響楽団1975年)の演奏は、車の中で聴いたせいか、何となく楽しく、明るい感じがしました。この曲のもつ野生的な面や”おどろおどろしさ”的な部分はやや希薄に感じます。

 全体に軽快なテンポで曲を進めていますが、4曲目の「春のロンド」ではテンポを落とし、じっくりと歌う感じもあります。 聴きやすく、快適な春の祭典。正確の明るい春の祭典といったところでしょうか。



ピエール・ブーレーズ ~評論家などの評価の最も高い演奏

 ピエール・ブーレーズ(クリーブランド管弦楽団1991年)の演奏は知的で、音楽全体を見通した演奏ということで、音楽雑誌などでも特に評価の高いものです。確かにそのとおりで、非常にすっきりとした明快な演奏です。でも私には知的過ぎるのでしょうか、名演奏、あるいは模範的な演奏とは思いつつも、ほんのちょっと物足りなさも感じてしまいます。



リカルド・シャイイー ~同じクリーブランド管弦楽団

 そのブーレーズと同じCDに入っているシャイイー(1985年)は同じクリーブランド管弦楽団を指揮しているせいか、たいへんよく似た演奏。オーケストラの響きはもちろん、特にテンポの割り振りなどはかなり近いようです。強いて違いを言えば、各楽器のバランスを取るというより、主旋律的なパートをやや前面にだすような感じで、クレシェンド、デクレシェンドなどはややはっきりめ。ブーレーズに比べると多少ロマン派的というか、伝統的な解釈といった感じがします。




ブログ 091
発売当時(2000年)話題となったゲルギエフ盤

話題のゲルギエフ盤

 ロシアの指揮者、ワレリー・ゲルギエフ(マリンスキー歌劇場管弦楽団1999年)の演奏もたいへん話題となったもので、一般的な評価も高いものです。ゲルギエフの演奏は、最近よく聴かれる理知的で分析的な演奏とは一線を画したもので、たいへん肉厚で、重厚な響き。

 また各楽器も十分に鳴らし、冒頭のファゴットも美しくよく歌っている。本来低音楽器であるファゴットにかなり高い音域を要求し、やや引きつったような効果を出しているのですが、あまりにも美しく吹いているので、そうして効果も逆に出ないのではないかと思うくらいです。

 前にコメントしたドラティとかメータ(若い頃の)のようなバーバリズムを強調した演奏といえなくもないのですが、なんと言ってもオーケストラの響きの豊かさの方が目立ち、ふっくらとして、都会的で洗練されたバーバリズムといった感じです(かなり矛盾した言葉ですが)。


 
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