中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

Q : 大学の時からクラシック・ギターをやっています。今は「大聖堂」、「ハンガリー幻想曲」、「タンゴ・アン・スカイ」などを弾いていますが、「練習曲をやらないと上手くならない」というのは本当でしょうか。
                
                       20代 男性


Q :  その2
 


 前回の記事では質問の内容と関係ない話になってしまい、申し訳ありません。反省して今回は必要なことのみをかいつまんでお話しましょう・・・・


主な練習曲は19世紀前半に作られた

 ギターの練習曲と言って思い浮かぶ作曲者と言えば、ソル、カルリ、カルカッシ、ジュリアーニ、アグアード、コスト、レゴンディ、ヴィラ・ロボス、ブローウェルといったところでしょうか。この中でヴィラ・ロボスとブローウェルを除くと19世紀前半から半ばといった時期に集中しています。


この頃からギターを”習う”人が増えた

 練習曲がたくさん作曲された時期は、この19世紀前半に集中しているわけですが、これはピアノなどの場合と同じだと思います。この時期にいろいろな楽器の練習曲が作曲され、出版されるようになったというのは、この時期にヨーロッパにおいて音楽が一般市民に浸透し、楽器などを習う、アマチュアの愛好家が急増したことにあるのでしょう。

 それまでは楽器を演奏するのはどちらかと言えばプロの音楽家で、一般の市民などが趣味として音楽を習うということは、あまりなかったようです。19世紀に入り、ギターもそれまでの複弦から単6弦となり、扱いやすくもなったこともあり、特にパリなどでギターを習う人が急増したようです。


この時代までは練習曲などなかった

 そこで、これまでアマチュアの愛好家のための作品や、ギターの初心者用の練習曲と言うのはほとんどなかったわけですから、この時代にそうした作品が数多く生み出されたのは必然ということになるのでしょう。この時代のパリではフェルナンド・カルリ、 フェルナンド・ソルなどが活躍し、演奏用の作品と共にアマチュアの愛好家のための練習曲集などを出版しています。そしてマティオ・カルカッシ、さらにナポレオン・コストが続くことになります。

 これらのギタリスト中、カルリとカルカッシはイタリア出身、ソルはスペイン出身と、当時のパリのギター界は外国人ギタリストに支えられていたようです。この時代の他の地域、ウィーンではマウロ・ジュリアーニ、スペインではデシオド・アグアードが練習曲集や教本を書いています。

 

200年経ってもその重要性は変らない

 その後200年近く経ち、世の中も、また音楽もだいぶ変った訳ですが、これらの練習曲の重要さは一向に変ることなく、現在でも多くのギター愛好者によって学び、演奏されている訳です。この時代以前にはギターのための練習曲など存在しなかったわけですから(練習曲的な作品はあったにせよ)、先人たちの偉業に敬服します。



ギターを始めたばかりの人でも弾きやすく出来ている

 現在でも多くの指導者がこのような練習曲を使用する目的の一つは、まず何といってもギタを始めたばかりの人に基本的な技術を指導するのに適していることににあります。この場合、易しくアレンジした一般の曲でもよいのですが、そうした曲は一見易しいようでも、初心者には意外と弾きにくいところもあります。こうした曲は、元々指の動きに合わせて曲が出来ているわけではありませんからある意味当然のことかも知れません。



カルリやカルカッシの練習曲は練習のポイントがわかりやすくなっている

 その点、カルリやカルカッシなど、初心者用に作られた練習曲は、基本的な指の動きに合わせて曲が出来ているので、見た目よりは弾きやすく、また基本的な指の動きの反復練習となっています。したがって、それらの曲を弾いているうちに、自然と基本的な弾き方が出来るようになります。


難しい曲だけを練習していたのでは必要不可欠な基礎が身に付けられない

 最初から練習曲以外の曲や、難しい曲に取り組んだ場合、こうした基本的な演奏法が十分に身に付けられない場合があるでしょう。特に独学でこれを行なった場合は、ギター演奏の基礎的な事柄を習得するのは困難で、さらにそれを続けた場合は上達を期待するのは難しいくなることもあります。



適切な指導者につく必要がある

 しかし、練習曲と言えど、あるいは練習曲であるからこそ、独学で練習するのは限界があり、やはり適切な指導者に付く必要があります。正しい演奏法や、練習のポイントなど何もわからず、一応弾くだけではこれらの練習曲もあまり役には立たないでしょう。それなら確かに好きな曲を弾いていた方がかえってよいかも知れません。
 

カルリやカルカッシだけをやっていればよいと言うわけではない

 また逆にギターを始めた当初はカルリやカルカッシの練習曲だけをやっていればよいのかと言うと、決してそうではありません。19世紀初頭というのは、音楽史的には「古典派時代」と言い、たいへん重要な時代ではありますが、私たちがクラシック・ギターを弾く時、この時代の作品のみを弾くわけではなく、その前のルネサンス、バロック時代の作品、そして19世紀後半から20世紀、そして21世紀の音楽といろいろな作品を演奏します。


カルリ、カルカッシは、やはり遠い時代の作品、同時に様々なジャンルの曲を弾く必要もある

 確かにカルリと同時代の愛好家であれば、これらの練習曲を学べばそれでよかったのですが、私たちからすれば、この時代の作品は遠い時代の作品で、クラシック・ギターのレパートリーの中のごく一部といえます。従ってカルリなどの練習曲を学ぶと同時に、他のジャンルの曲も出来る範囲で弾く必要があります。

 ギターを始めてそれほど経っていなければ、取り組める作品はある程度限られてくると思いますが、私の指導法の場合、生徒さんにとって身近な音楽、いわゆるポピュラー系の作品(日本や世界の名曲なども含め)を比較的やさしくアレンジしたものも教材として用いていいます。


初級の教材は離乳食のようなもの、消化がよく、栄養バランスが大事

 初級用の教材と言うのは、いわば離乳食のようなものです。第一に消化のよいものでなくてはなりません。消化の悪いものだと、栄養になるどころか、健康を害して発育不全に陥ってしまいます。また人間の体を作るために必要な栄養素をすべて含んだ、栄養バランスのよいものでなくてはなりません。
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