中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

Q : 大学の時からクラシック・ギターをやっています。今は「大聖堂」、「ハンガリー幻想曲」、「タンゴ・アン・スカイ」などを弾いていますが、「練習曲をやらないと上手くならない」というのは本当でしょうか。
                
                       20代 男性


A : その3 


 ちっともかいつまんでない? 相変わらずだらだら、 話先に進んでいない?  ・・・・・・・反省、今回こそ単刀直入に・・・・・


カルカッシギター教則本から ~弾きやすいパターンで出来ている

 私たちがよく用いる19世紀前半の練習曲について具体的にコメントしておきましょう。まずは、お馴染みのカルカッシギター教本から。 

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 左手の方も一定のパターンになっていますが、特に右手が同形反復になっています。ギターを始めたばかりの場合、的確に弦を捉えるのは決して簡単なことではありません。そうした段階ではこのような練習曲は取り組みやすく、また自然と右手の感覚が身に付けられます。



カルリのワルツ ~反復練習の典型的な練習曲

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 上の曲よりも音の数は多いですが、それほど難しくなっていません。各部分にリピート記号が付き、さらにダ・カーポも付き、楽譜どおりに弾いただけでもそれなりの練習量になります。さらに変奏が3つ(画像の後にさらに2つ変奏がある)付いています。

 シンプルな音型の反復練習を目的とした曲で、ギター演奏の基本的な技術の習得に指導者にとっても、習う人にとってもたいへん便利な練習曲です。もちろん”質より量”にならないように、一音一音意識を集中して練習しなければなりません(まさに一音入魂!)。

 また、正しいテンポ、消音、レガート、スタッカートの使い分け、長調、短調の弾き分けなどにも気を配れたらさらによいでしょう。



アポヤンドによるメロディとリズムの練習?

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 上の画像は、当ブログでもよく登場するカルリの「アンダンテ イ短調」です。この譜面は、1960年代に出版されたと思われる、東京音楽書院の「学生のための古典ギター曲集7~スペインギター名曲集」です。今では絶版と思われますが、かつては楽器店などでよく見かけ、当時の愛好者はほとんど持っていた譜面だと思います。



どこをアポヤンドで弾くの? 

 ちょっと読みにくいかも知れませんが、タイトルには「アポヤンドによるメロディとリズムの練習」と書いてあります。若い愛好者の皆さんは 「え、この曲のどこをアポヤンドで弾くの?」 と思うでしょう。さらに 「どこがリズムの練習なの?」 とツッコムでしょね。

 「アポヤンドによるメロディ」と書いてある訳ですから、おそらく冒頭の「ラシドレ」や、1段目の終わりの「レドシラ」など単音のスケールをアポヤンド奏法で弾くという意味だと思われます。また3段目などの低音が付いたスケールについても同様なのでしょう。



私もびっくり

 さすがに重音(2音)のところはアポヤンド奏法では弾けないでしょうから、そこは必然的にアル・アイレ奏法となるでしょう。しかしそのように弾けば冒頭の部分と最後の部分がフレーズの中央部分に比べ、音量が大きくなりやすく、まさに逆転現象が起きてしまいます。また音質も変ってしまうでしょう。こうしたことは私だけでなく、多くのギタリストは”最もやってはいけないこと”と考えるでしょう。

 かつては「アポヤンド至上主義」みたいなものがあり、この本の最初のところにも「・・・・・この内、一番重要なことは、スケール(アポヤンドによる)でありましょう」と書いてあります。また他の曲のコメントにもアポヤンド奏法を強く勧めることが書いてあります。私もどちらかと言えば、そうした時代に育ったギタリストですが、その私もびっくりと言うところでしょうか。



面白いけど、これくらいにしましょう

 また、ほぼ全曲8分音符で書かれているこの曲のどこが「リズムの練習」なのかも不可解ですね。私たちにはむしろ”リズムなんてない曲”と思えるでしょう。多分、この曲を一定のテンポで弾くことをいっているのではないかと思われますが、やはり言葉の使い方としては不可解なものです。そう考えた場合、当時はこうした曲を一定のテンポで弾けない人が結構いたのでしょう。

 ・・・・・昔はこうしたこと、それほど不思議ではなかったかも知れませんね、面白いといえば面白いのですが、昔の譜面にツッコムのはこれくらいにしておきましょう・・・・・

 

悪名高き?

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 マティオ・カルカッシはカルリより20年ほど後にパリで活躍したギタリストですが、このカルカッシには中級から上級用といったところの「25の練習曲作品60」というものがあります。私がギタリストを目指していた頃(1970年代)には、プロになるためや、上級者をめざすなら必ずやらなければならない教材として、全国のギター教室で使われていました。

 この練習曲集は、すごく難しいと言うわけでもありませんが、25曲ともちゃんと弾くにはそれなりの練習量が必要です。ちょっと聴くとなかなか面白い曲もありますが、さすがに25曲練習するとなると、同じような曲も多くかなり忍耐力が必要となります。

 プロや上級者になるための第一の関門といったところですが、かつて、この練習曲集のために挫折をしたという愛好者も少なくはないでしょう。 ・・・・・・え、悪名高き「カルカッシ25の練習曲」、それはちょっと言いすぎかな・・・・



はっきりとした使用目的があれば有効

 最近ではかつてほどこの教材は用いられなくなったと思いますが、しかし何でも”使いよう”だと思います。はっきりとした使用目的があれば、たいへん有効な練習曲ではないかと思います。もちろん25曲すべてを練習する必要はなく、その人が必要とするものだけでよいと思います。

 例えば上の譜面の「第2番」ですが、この曲はアルペジョと同音反復の曲で、右手の練習には最適と思われます。pimaの各指を完全にコントロールするための練習として用いると、たいへんよい練習曲となると思います。


なぜこのような強弱記号が付くのか

 また強弱記号が細かく付けられており、リタルダンドのどの速度変化の記号も付けられています。そうしたものが正確にコントロールできているか、またなぜそのような記号が付くのかなど考えてみるのもたいへん重要と言えます。強弱についてはフレーズの関係以外に、和声の関係で付く強弱も多くなっています。

 強弱記号などは道路標識のように、ただ従えばよいと言うものではなく、なぜそのような記号が付けられているのかということを考えるべきでしょう。また同じ記号でもニュアンスなどは状況で異なってくるので、そうしたものも感じ取れるとよいでしょう。 ・・・・・道路標識だってただ従えばよいというものではない? 確かに。
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