中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

Q : 大学の時からクラシック・ギターをやっています。今は「大聖堂」、「ハンガリー幻想曲」、「タンゴ・アン・スカイ」などを弾いていますが、「練習曲をやらないと上手くならない」というのは本当でしょうか。
                
                       20代 男性




A : その4



ソルの「練習曲作品31-4 ロ短調」

 え? 特に言うことない? ご理解いただけたようで。 いやそう意味ではない? 


 質問者の先生もソルの練習曲を薦めていましたが、今回はソルの練習曲についてお話しましょう。現在、教育的な作品としてソルの練習曲集を重要視するギタリストはたいへん多いと思います。



ブログ 109


 上の譜面はソルの「練習曲作品31-4 ロ短調」です、レヴェルからすれば中級といったところでしょうか。でもあまり弾きやすい曲ではありません。


演奏と作曲は表裏一体

 ソルの練習曲への考え方としては、ギターの演奏技術の習得と共に、作曲を学ぶためのものといいたところがあります。当時の習慣、あるいはソルの考え方としては演奏と作曲は表裏一体のものとしています。ギタリストはただ黙って他の人が書いた譜面を、書かれたとおりに弾くだけということは考えられなかったようです。


和声法への強いこだわり

 そうした面が上の練習曲にも表れているわけですが、ソルは特に和声法にこだわったギタリストといえ、弾きやすや、表面的な演奏効果よりも和声法など、音楽の構築性を重視した作曲家ともいえます。

 ソルを「ギターのベトーヴェン」と例えられることもありますが、そういった点では、時代は少し違いますがバッハの方に近いかも知れません。ベートーヴェンはどちらかと言えば表現手段よりも表現すべき内容のほうにこだわった感があります。


掛留音

 この短い練習曲の中にも和声法にこだわったところはたくさんありますが、それが典型的にでているのが、第2小節目でしょう(ちょっと譜面が見にくいかも知れませんが)。2小節目の最初(1拍目)にファ#、シ、ド#の和音が出てきますが、この中で「シ」は和音から外れた音で、前の小節からそのまま残ってしまったような音になっています。

 この和音から外れた「シ」を掛留音と言い、次に半音下って「ラ#」に進まなければなりません。この「ラ#」を解決音と言います。



緊張感のある響き → 落ち着いた響き

 演奏の際には、1拍目は不協和音なので緊張感のある音で、2拍目では掛留音が半音下って「ラ#」に解決し、協和音(ロ短調の属和音)となるので落ち着いた響きで弾かなければなりません。また1拍目で弾いた④弦の「ファ#」は2拍目でもしっかりと響いていて、ちゃんと和音を成立させなければなりません。

 同様なことが4段目の2小節目にもあらわれますが、ここでは掛留音が上声部と中声部に出てきます。


ソルの練習曲を演奏するには、和声法の習得が必要

 ソルの練習曲に取り組むためには、まず何といっても古典的な和声法が理解できなければなりません。確かに和声法を正しく理解するのはたいへん難しいことですが、基本的なことがある程度理解できれば、後はこうした曲を真剣に学ぶことにより、いっそう理解が深まるのではと思います。

 つまりソルの練習曲を学ぶということは、和声法などの音楽理論も学ぶということになるのでしょう。ソルの練習曲が正しく演奏出来るということは、そうしたものが身に付いていることを示します。そうしたことが多くのギタリストに高く評価されている理由なのでしょう。

  

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


答えは「イエス」だが

 遅ればせながら最初の質問にお答えしましょう、質問者の怒りも頂点になっている頃でしょうし、 ・・・・いや、もうとっくにあきらめた? 

 「練習曲を練習する必要があるか」ということですが、単刀直入に「イエス」とお答えするべきでしょう。ただし練習曲を独学で学ぶのは限界があり、やはり適切な指導者につくことが前提でしょう。どういった練習曲を学ぶかということも指導者の指示に従って、あるいは相談の上となるでしょう。



同時にレヴェルに合った様々な曲を練習する必要がある

 また、この質問者が中級程度の曲をあまり練習せずに、限定された難易度の高い曲のみを練習していたとすれば、練習曲以外にも、あまり難易度の高くない曲をなるべくたくさん練習すべきと思います。この場合、練習曲などのレッスンを受けているのであれば、独学でもよいかも知れません。



レヴェルの高い曲を練習すればレヴェルが上がるわけではない

 実際にこの質問者の演奏を聴いてみないとよくわからないところはありますが、話からすれば、質問者のかつての先生は何か不足しているものを感じたのは確かでしょう。そうしたことが「練習曲をやらないと・・・・」といった言葉になったと思われます。決して、レヴェルの高い曲を練習したから、自分のレヴェルが上がるというものではないでしょう。
  


 
スポンサーサイト
コメント
コメントする
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する