中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

Q : ヴィラ=ロボスの練習曲第1番を練習しようと思っているのですが、最後のところのハーモニックスの弾き方がイマイチわかりません。楽譜どおりの音で弾くと、何だか変に聴こえます。CDではもっとすっきり聴こえているように思います。音符の下に書いてある「C]、「B」などのアルファベットも意味不明です。どう弾くのでしょうか。


                                     30代 男性


A : 




ヴィラ=ロボスのハーモニック表記はちょっと変っている

 確かにヴィラ=ロボスのハーモニックスの表記はちょっと変ですね。時にはプロのギタリストも悩ます、たいへん困ったものです。でも最近の譜面では丁寧な注釈も付いて、以前の譜面からするとかなりわかりやすくなりました。



初版では誤植もある

 「『C』、『B』と書いてある」と言っていることからすると、質問者は初版のエシック社の譜面を用いていると思われます。エシック社の譜面は表記がわかりにくいだけでなく、誤植もありいっそう混乱しやすくなっています。

 このアルファベットは弦を表していて、①弦=E  ②弦=B  ③弦=G  ④弦=D  ⑤弦=A  ⑥=E  となります。 しかし下の譜面で、ハーモニックスを表す、最初の白い菱形の音符のところに「C」と書いてあります。もちろんギターにCの弦などはありませんから、これは「G」の誤りで、③弦と言うことになります。二つ目の菱形の音符は「A」、つまり⑤弦で、以下は間違いがありません。  


譜例1
ブログ 119
初版のエシック社の譜面。音符の下のアルファベットは使用すべき弦が音名で示されているのだが、最初の「C」は誤りで、正しくは譜例2のように「G]、「A」となる。 



左手で触れるポジションを実際に弾いたときの音で書いてある
 
 ヴィラ=ロボスのハーモニックス表記は独特で、ハーモニックの際に左手で触れるべきポジションを、”実際に弾い場合の音”で書いています。言っている意味がわかるでしょうか?

 例えば①弦の5フレットのハーモニックスだったら、①弦の5フレットは普通に弾けば「ラ」だから「ラ(上第1線の」と表記されるわけです。しかし実際は「ラ」の音が出るのではなく、「ミ」(①弦の開放の2オクターブ上)が出ます。



小さい丸(○)は開放弦の意味もある

 ヴィラ=ロボスはハーモニックスの記号として、菱形の音符を用いますが、通常の丸い音符に小さい丸印を書く場合もあります。しかしこれは場合によって開放弦の意味でも使っています。

 つまり本来開放弦である音に丸印が付けば開放弦を意味し、本来開放弦でない音に付くとハーモニックスの意味となります。ともかくわかりにくいですね。



これはハーモニックスだが

ブログ 126


 上の譜面は「前奏曲第1番」の1部分ですが、最初の「ミ」、及び「ソ、シ、ミ」の和音に丸印が付いています。これらの音は開放弦では弾けませんから、すべてハーモニックスで弾くことになります。最初の「ミ」は⑥弦の12フレット、次の和音は①②③弦の12フレットのハーモニックスとなります。



こっちはハーモニックスではない!

ブログ 129


 上の譜面は「練習曲第1番」の中ほどのところで、「ミ」に小さい丸印が付いていますが、この音は開放弦で弾くことが出来るので、ハーモニックスではなく、通常の開放弦ということになります。  ・・・・・・納得していただけましたか?



AMSCO社の「ヴィラ=ロボス独奏曲全集」では注釈も付いている

 その後出版されたAMSCO社の「ヴィラ=ロボス独奏曲全集」では前述のアルファベットの誤植も訂正し、また後書きに注釈として私たちには馴染の深いタレガ式の表記も添えられています。



譜例2
 ブログ 120
AMSCO社の「ヴィラ=ロボス独奏曲全集」



最初からこっちでやれば?

 ドレミ出版の「ギター名曲170選」では、開放弦のフレット指定によるタレガ式の表記となっていて、たいへんわかりやすいです。これなら最初から迷うこともありませんでしたね。

 最も今どき初版のエシック社の譜面で練習する人なんてそうはいませんね、むしろこの170選で始める人のほうが圧倒的に多いでしょう。 ・・・・・・まあ、まあ、その辺は「大人の事情」ということで・・・・


譜例3
ブログ 121
ドレミ出版の「ギター名曲170選B」



でも、実際にどんな音がでているのかは、わかりにくい

 確かにこの譜面だと弾き方はよくわかりますが、実際にどんな音がでているのかはちょっとわかりにくいですね。そこで、最近の一般的な実音表記で書いてみます。


譜例4
ブログ 122


 これだと実際にどんな音がでているかよくわかると思います。因みに2小節目の「ミ、シ、ソ、ミ」の4つの音は”オクターバー”ということで、実際に出る音は表記の1オクターブ上となります。



結局すべてEmの音

 要するに、すべて「ミ、ソ、シ」の和音、つまりEmの和音で、その和音がだんだん高くなるというシンプルなものですね。もちろんCDで聴いてもそのように聴こえていると思います。

 そうわかると、この部分はあまり難しいところではありませんね、出しにくいハーモニックスではありません。ラレンタンドの指示もあってだんだんゆっくりとなりますから、演奏としても特に難しくはありません。



早々に一件落着?

 これで質問者も全く問題なくこの部分を弾くことが出来るでしょう。一件落着! では次のご質問。  

 ・・・・・いや、いや、そうは行きませんね。ヴィラ=ロボスのハーモニックスは他にもわかりにくいものがたくさんあるので、そのあたりに触れないでおいては、当ブログの数少ない読者も離れてしまうでしょう・・・・  ご安心下さい、次回以降もこの話の続きを行ないます。

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