中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

クラシック・ギター名曲ランキング

<第5位>  モーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲作品9 フェルナンド・ソル


 

まさにクラシック・ギターを代表する曲

 一般的な知名度などを顧慮した結果、この順位になってしまいましたが、クラシック・ギターをやるものにとってはまさにクラシック・ギターを代表する曲といえます。古今東西、老若男女、プロ、アマ、初心者、上級者を問わず、クラシック・ギター興味のある多くの人に親しまれ、この曲を弾かない・クラシック・ギタリスト、あるいは、この曲を聴かないギター愛好者は稀ではないかと思います。

 この曲は古典派時代を代表するフェルナンド・ソルの名作でもあり、そういった意味でもクラシック・ギターを代表する曲と言えるでしょう。

 

NHKテレビ・ギター教室のテーマ曲だと思っていた

 この曲を私が最初に聴いたのは、中学生の頃、NHKのテレビ番組「ギター教室」だったと思います。当時阿部保夫氏が講師を担当し、その番組のテーマ曲として演奏していました。もっともその当時の私はその曲を聞き覚えてはいたものの、正しい曲名などはわからず、ただNHKギター教室のテーマ曲としか思っていませんでした。


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1966年(昭和41年)のNHKギター教室のテキスト。この当時、講師の阿部保夫氏はこの「魔笛」の主題による変奏曲の主題部分を番組のテーマ曲として用いていた。このテキストは私の兄が買ったものと思われますが、ほとんど使用した跡などはなく比較的きれいです。


マテキ?

 大学のギター部に入って2、3日目頃、部室で一人の上級生がこの曲を弾きだし、「NHKのギター教室のテーマ曲だな」と思っていたら、知っている部分終わってもその先輩はさらに弾き続けて、なかなか終わらない。どうやらこの曲は相当長い曲らしいいということが初めてわかり、その先輩に曲名を訪ねると、「マテキ」という答えが返ってきました。なんか変な名前だと思いました。



「マテキ」が「魔笛」になるまでしばらくかかった

 私が「マテキ」=「魔笛」であることを理解するまでに、それからまだしばらくの日数が必要で、正式名称が「モーツァルトの『魔笛』の主題による変奏曲」ということ、モーツァルトに有名な「魔笛」というオペラから主題をとったこと、ソル(名前だけは知っていたかも)が古典は時代の作曲家だったこと、などといったことがわかるのも、もうちょっと先になってからです。



最初のLPも阿部保夫氏

 最初に買ったこの曲のLPも阿部保夫氏のものでした。その時点でもまだこの曲の正式な名称がわからず、とりあえず「マテキ」と言う曲が入っているのレコードを探してみたのですが、なかなか見つかりませんでした。

 そこで、その曲は置いておいて、とりあえず「アランブラの想い出」とか「アストゥリアス」など有名な曲がたくさん入っていそうな阿部保夫氏のLPを買いました。阿部氏はその当時私が知っている数少ないギタリストの一人でした。

 そのLPの中に当然のごとくこの曲も入っていましたが、そのLPには「モーツァルトの主題による変奏曲」と表記されていたので私にはわからなかったわけです。この時初めてこの曲の正式な名称や作曲者を知ることになりましたが、しかしその時点でもなぜその曲が「マテキ」と呼ばれているのかは、わかりませんでした。



癖のない演奏

 その阿部氏のLPは溝が擦り切れるくらい何度も聴いたものですが、今は手元になく聴き直すことは出来ません。記憶で語るしかありませんが、当時セゴヴィアをはじめ、多くのギタリストがオリジナルの音価を変更して演奏している中、阿部氏の演奏はオリジナルの音価を忠実に再現した癖のない端正なものだったと思います。



かつては序奏を省略していたが

 さて、この曲はホ短調の序奏とホ長調の主題と5つの変奏、コーダから出来ていて、楽譜通りに演奏するとだいたい7~10分くらいの曲です。かつては序奏を省いて演奏するのが普通でしたが、もちろん今では序奏を省くことはあまりありません。省くとしたら、コンクールや発表会など時間制限がある場合だけでしょう。



美しいが目立たない原曲のアリア

 テーマに用いられた曲は、第1幕でモノスタートス(英語的には「モンスター」かな)らが歌う「なんと素晴らしい鐘の音」という短いアリアで、確かに美しい曲ですがあっという間に終わってしまい、それほど目立たない曲です。CDの場合だと1枚目のトラック10、または15になっていることが多いと思いますが、最初から聴いているとほとんど気づかないような曲でしょう。



楽譜については以前の記事を参考に

 メロディは原曲通りではなく、ソル的に若干変更していますが、印象はそれほど変わらないでしょう。楽譜については以前とうブログでも書きましたが、現在いろいろな楽譜が出版されています。なるべくなら初版(1821年頃?)に基づいたものということになるのでしょうが、その初版も単純ミスと思われる部分や、あいまいな部分もたくさんあって、そのまま弾けばよいというものでもありません。その件については以前の記事などを参考にしていただければと思います。


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初版に近いと言われる現代ギター社版(中野編)。 しかし完全に初版と一致しているわけではなさそうだ。またその初版も明らかなミスや不明な点などいろいろある。「原典に忠実」といってもそれほど簡単でも単純でもない。





端正で好感度の高いセルシェルの録音

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 もちろんCDもたくさん発売されていて、いろいろなタイプの演奏がありますから、皆さんのお好きなギタリストの演奏を聴けばよいと思います。私の方で強いていくつか挙げるとすれば、まず1985年のイェラン・セルシェルの録音で、私が最初に出会ったこの曲の古典的な演奏と言えます。序奏がかなり速いのが特徴ですが、主題以下は非常に端正な演奏で、好感度の高い演奏です。





ピリオド楽器的なアプローチの福田


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 次に福田進一氏の1994年の録音で、ソルが用いた楽器と言われるラコートを使用し、文字通りピリオド楽器的な演奏です。全曲で7分台と速めのテンポで、福田氏らしくきびきびと演奏しています。現在廉価版が発売されていて入手しやすくなっています。




テンポの遅さをクリヤー出来れば

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 もうひとつ、1981年のジュリアン・ブリームの演奏で、全体でほぼ10分とかなり遅いテンポで弾いています。特にテーマが遅く、確かにモーツァルトの音楽でもソルの音楽でもないといった感じはありますが、聴き手がその点さえクリヤーできればたいへん素晴らしい演奏、とても楽しめる演奏です。まさにジュリアン・ブリームの音楽と言えるでしょう。また最近RCA録音全集として比較的安価で入手しやすくなっている点も嬉しいところ。
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