中村俊三 ブログ

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クラシック・ギター名曲ランキング

<第6位>  アストゥリアス(イサーク・アルベニス)




本来ギター曲ではないが

 この曲をこのランキングに入れるのは厳密には問題あるかも知れませんが、違和感を感じる人はそれほど多くはないでしょう。本来ギター曲でないにも関わらずギターの名曲として知られているのは周知のとおりです。

 この曲はピアノで演奏されよりもギターで演奏される方がずっと多いのは間違いありません。つまりピアノで演奏すれば「珍しい曲」で、ギターで演奏すれば「ごく当たり前の曲」と言えます。こうした事実を考えれば、ごちゃごちゃ言わず「ギターの名曲中の名曲」でいいでしょう(誰もごちゃごちゃ言っていないか)。



聴きなれていない人にもウケる

 この曲はフラメンコ風の無窮動のパッセージが繰り返される情熱的な曲で、この曲が弾ける人にも弾けない人にも、たいへん人気の高い曲です。人気の高さだけで言えばもう少し上のランキングもある得るでしょう。

 また、この曲は初めて聞く人にでも印象度が高く、あまりギター曲を聴きなれていない人を対象としたコンサートでも反応がなかなかよいものです。そうしたことから、私自身でもいろいろな場でこの曲を演奏していて、演奏頻度からすると「禁じられた遊び」、「アランブラの想い出」に並ぶものです。



当ブログでは何度も書いているが


 この曲については当ブログでも何度かにわたって書いていますが、一応おさらいしておきましょう。「アストゥリアス」はスペインの作曲家、イサーク・アルベニスによって1895年頃、5曲からなるピアノのための組曲「スペインの歌」の第1曲「前奏曲」として作曲され、作曲家の死後「スペイン組曲作品47」に第5曲「レーエンダ‐アストゥリアス」として組み入れられました。



曲名と内容が合っていない?

 現在はこの曲を「アストゥリアス」、または「レーエンダ(伝説)」と呼ばれているわけですが、この曲名は作曲者が付けたものではなく、出版社によって付けられたものと言えます。曲は文字通りフラメンコ的な曲ですが、曲名になったアストゥリアス地方というのはスペイン北部にあり、フラメンコとは全くと言ってよいほど縁のない地方だそうです。

 したがってこの曲名はおかしい言う声もありますが、このアストゥリアス地方というのは山と海に囲まれた厳しい環境の土地らしく、この曲の情熱的であると同時に緊張感のある雰囲気に、合わなくもないかも知れません。少なくとも私にはそう感じられます。



気になったことありませんか?

 この曲はピアノよりもギターで演奏されることがずっと多い曲だとしても、やはり基本的にピアノ曲ですから、そのままギターで演奏することは出来ません。当然編曲しなければならないということです。皆さん、特に多少なりともこの曲を弾いたことのある方、誰がギターに編曲したかって気になったことありませんか?

 ともかく有名な曲だけに譜面は以前からたくさん出ています。ギターやっている人なら何らかの形でこの曲の楽譜を持っているのではと思います。その楽譜に編曲者の名前はどう書かれていますか? おそらく何も書かれていないか、もしくはその曲集などを編集した人の名前が書かれているのではと思います。



編曲者名が違っていても似たり寄ったり

 細かいところ、特に中間部などでは多少違っていたとしても、大筋ではどの譜面もほぼ同じといってもよいと思います。本当にそれぞれのギタリストが別々にアレンジしたとしたら、もっと個々の譜面によって異なるはずです。場合によっては調も異なるかも知れません(現実的にはホ短調以外はかなり難しいが)。 



1991年にセゴヴィア編として出版されたが

 結論としては、それぞれのギタリストがピアノ譜から独自にギターにアレンジしているのではなく、一つの共通した編曲譜から再編曲、あるいは多くな影響を受けているということでしょう。つまりオリジナルの編曲譜があるということです。

 1991年にUnion Musical Edicionesからセゴヴィア編曲のアストゥリアスが出版されました。これぞ、そのオリジナルの編曲譜かなと思ったのですが、この譜面見覚えがある、かつて(1970年頃)よく見かけた譜面です。細かいところまで全く同じもので、あえて買う必要もなかったかなと思いました。

 それにしても、もしこの編曲譜が本当にセゴヴィア自身のものであれば、なぜセゴヴィアは生前にこの譜面を出版しなかったのだろうか、これだけ人気曲なのだから。

 一般にセゴヴィア編とされている曲の中にリョベットやタレガなどの編曲を若干手直ししたものがたくさんあります。中にはかなり変更していて確かに実質「セゴヴィア編」と言ってよいようなものもかなりあります。


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1991年にUMEから出版されたセゴヴィア編(と言われる)のアストゥリアス。中身は昔よく見た譜面だ。



セゴヴィアはそういったことにはきちんとしていた

 しかしセゴヴィアはそうした、他のギタリストが編曲したものに若干自らの手を入れたものをものを、決して自らの編曲として、演奏したり、まして出版する(自らの編曲として)ようなことは全くしていません。セゴヴィアが自らの編曲として出版したものは、すべて原曲から直接編曲したものに限られます。

 つまりアストゥリアスを生前出版しなかったは、セゴヴィア自身の編曲ではなく、他のギタリストの編曲で、セゴヴィアがそれに若干変更を加えて(和声法的には適切な変更)演奏していたといことを示すものです。

 1991年に「セゴヴィア編」として出版されたものは、むしろその基になったオリジナルの編曲譜そのものと言えるかも知れません。前述のとおり、セゴヴィアの演奏と若干異なっています。おそらくセゴヴィアの遺族などがその譜面をセゴヴィア編として出版したのでしょう(そういえば「禁じられた遊び」も遺族によって「イエペス作曲」とされている)。



現代ギター誌に本当の編曲者が書かれていたが

 この曲の本当の編曲者は確か現代ギター誌に書かれていたと思います。スペインのギタリストだったと思いますが、、名前の方は忘れてしまいました。2~3年くらい前の記事だったと思いますので気になる方はバック・ナンバーを当たってみてください。セゴヴィア自身でもそのギタリストのアレンジを若干変更して用いたと書いてあったと思います。


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おなじみの譜面だが、3段目から伴奏としてに②弦解放弦の「シ」が2個ずつ付いている。原曲ではオクターブの音を2個同時に弾いているのだが、この編曲では「ヨコ」に「シ」を2個重ねている。こうすることにより盛り上がりを減ずることなく、演奏を容易にしている。「タテ」のものを「ヨコ」にしたわけだが、なかなかの発想だ



その功績は讃えられるべき

 確かに今現在、このアストゥリアスのいろいろな編曲譜が出版されていますが、そのほとんどの譜面が、このオリジナルの編曲譜を継承していると言ってもよいでしょう。特に主部ではそれが顕著に出ています。とすればこの最初の編曲者はギター界における功労者となるわけですが、現在ほとんどその名前は知られていません。もっとこのギタリストの功績は讃えられるべきでしょう。

 ・・・・かく言う私も名前を忘れてしまっている、ゴメンナサイ。 ・・・・・・ちゃんと調べておこう。
 



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